「専守防衛」見直し論 専門家、敵基地攻撃能力が「必須」=米VOA

2022/04/20
更新: 2022/04/20

ウクライナ情勢の緊迫化により、日本で「敵基地攻撃能力」に関する議論が高まっている。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)18日付によると、自民党内では、北朝鮮と中国の軍事的動向を考慮しなければならないだけでなく、現在「ミサイル技術が急速に発展し、変化しているため、迎撃が難しくなった」こともあり、国家安全保障戦略(NSS)など、戦略3文書改定に向けた政府への提言案に「敵基地攻撃能力」を盛り込むべきだとの声があがった。

また、攻撃対象は敵のミサイル発射拠点だけでなく、敵軍の指揮部も含むべきだとの意見もある。

元防衛庁情報本部長の太田文雄氏はVOAの取材の対し、日本の防衛にとって敵基地攻撃能力は1つの「選択肢」ではなく、必須のものであるとの認識を示した。

同氏によれば、日本の弾道ミサイル防衛システムのうち、イージスシステムは大気圏外を飛行するミサイルに、パトリオットシステムは近距離のミサイルにそれぞれ対応できる。しかし、中国と北朝鮮が急いで開発している大気圏内を飛行する極超音速ミサイルや不規則軌道のミサイルを迎撃できないという。

防衛省防衛政策局長を務めた徳地秀士氏は、日本は核兵器を保有する全体主義国家のロシア、中国、北朝鮮に囲まれていると指摘し、国家安保上、他の国と比べてより厳しい環境に置かれているため防衛対策をさらに強化する必要があると示した。

徳地氏は、飛来するミサイルを「たったの1発でも」迎撃できなければ、日本全土に大きな被害をもたらすため、全国規模で迎撃ネットワークを完全化しなければならないとの考えを示した。隣国が核搭載のミサイルを発射する可能性を考えれば、日本は抑止力を一層強化し、隣国の最新ミサイルに対抗する攻撃力を持つことが必要だと同氏は述べた。

台湾の国立政治大学の陳文甲教授は、中国の軍拡は近年、陸海空だけでなく、ミサイルやサイバーセキュリティなどの分野まで広がった上、北朝鮮の金正恩政権もこの10年間、ミサイル発射試験を繰り返していることを挙げ、日本は防衛政策の再調整が迫られていると指摘した。日本は敵基地攻撃能力を確保するため、陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾(SSM)」の改造を加速しているという。

陳教授は、日本の軍事戦略は以前の「本土防衛」から、中国と北朝鮮を念頭に置く「攻防兼備」に転換しつつあるとの見方をしている。今後、日本国内で、憲法9条に基づく日本の防衛姿勢である「専守防衛」をめぐる議論がさらに高まるとした。

VOAの報道では、今月11日に開かれた自民党の安全保障調査会の会議に、中谷元、岩屋毅各元防衛相らが出席した。防衛相経験者らは会議で「専守防衛」の名称変更案に言及し、国際情勢や技術の急変化では「必要最小限」の自衛は「抑止力にならず国民を守れない」との意見を示した。

太田文雄氏は、与党自民党内で「専守防衛」の名称・解釈変更を支持する声が大勢を占めていると明らかにした。

徳地秀士氏は、現在の専守防衛に関する解釈は完全なものではないとした。

同氏は、「相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、その態様を自衛のための必要最小限にとどめる」との解釈は、国連憲章51条とほぼ同じであると指摘した。「多くの国がこのような防衛政策を取っている。自国の軍事力が過剰だと主張する国はいない。したがって、日本が敵基地攻撃能力を確保するのはこの原則に反しておらず、問題はどう解釈を変更するかにある」と同氏は主張した。

徳地氏は、日本は、わかりやすい言葉で理論的に国民と国際社会に対し、安保上の敵基地攻撃能力を保有しなければならない理由や、同能力は専守防衛に抵触しないことを説明する必要があると強調した。

(翻訳編集・張哲)