ノーベル賞学者・大村智博士が開発したイベルメクチンは長年にわたり寄生虫治療薬としてアフリカなどで使用され、多くの命を救ってきた。世界保健機関(WHO)の必須医薬品リスト入りする安価なこの薬は、中共ウイルス(新型コロナウイルス)感染症の流行が始まって以降、日本国内外の複数の医師や研究者がかねてコロナ感染症の症状を和らげるのに有効だと指摘してきた。
しかし、欧米や日本当局からコロナ治療薬としての承認を得られていない。イベルメクチンの試験を進める製薬大手・興和は「試験で効果を明らかにする意義は大きい」と大紀元の取材に答えた。
イベルメクチンは駆虫薬のみならずインフルエンザ、デング熱、ジカ熱などのウイルス増殖を抑える効果があることが、非臨床試験で確認されている。海外の複数の研究機関は臨床試験を通して新型コロナウイルスの増殖の抑制を確認している。北里大学は2020年のマウス実験で肺炎を引き起こすウイルスの増殖をイベルメクチンが抑制したと発表した。
いっぽうイベルメクチンについて、WHOや米保健医薬品局(FDA)は駆虫薬として承認しているがコロナ治療薬として有効性の結論を出すことを保留している。特にFDAは、処方箋を必要としない家畜用のイベルメクチンを服用して入院する人が増加しているとの報告があり「あなたは馬じゃないし牛でもない」と昨年7月にツイッターで警告を発する事態にまで及んだ。
こうした指摘について、全国で治験を実施する興和に話を聞いた。
イベルメクチンのコロナ感染症に対する「有効性及び安全性が現段階では明確でない」とのFDAなどの指摘を踏まえたうえで「試験を実施して効果を明らかにする意義は大きい」と、興和は7日までの取材に答えた。
興和は昨年7月、開発者である大村智博士から直接、新型コロナ感染症の臨床試験実施について依頼を受けたと発表した。今年1月31日には北里大学との共同研究(非臨床試験)から、既存の変異株(アルファ・ベータ・ガンマ・デルタ株)と同様に、オミクロン株に対しても同等の抗ウイルス効果があることを確認したという。現在実施中の第三相臨床試験の成績次第で厚生労働省へ承認申請する。
いっぽうで、医療機関の監督を通さない個人輸入は専門家も推奨していない。
イベルメクチンの検証を続ける大村智記念研究所感染制御研究センター長の花木秀明教授は個人輸入の場合「動物薬が入っていたり、抗炎症薬が入っていたりする」と懸念を示した。また、偽薬の横行もあるとツイートした。
厚生労働省が1月に発表した「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き第6.2版」によれば、日本国内で承認された薬剤はレムデシビルなど6種。開発中の薬剤は昨年10月までの登録で11種。
進む効果や安全性の検証
医学界では、イベルメクチンの効果の検証を継続する動きが進む。
国立アレルギー・感染症研究所(NIH)は、一年前に有効性の評価を保留としたイベルメクチンについて、検証を継続していることを明らかにした。
バイデン米大統領の首席医療顧問でNIH所長のファウチ氏は1月末、新型コロナとイベルメクチンの使用については、世界中のさまざまな保健機関の方針が混在しているとした上で、イベルメクチンを含む薬剤の試験を行なっていると述べた。
1月15日付の医学誌「キュリアス(Cureus)」で発表された査読付き研究論文は、ブラジルのイタジャイ市地域でイベルメクチンが新型コロナの予防薬として有効であることを示した。
試験の期間は2020年7月7日から12月2日まで。約15.9万人の住民が参加し、11万人が薬を服用した。報告によると、イベルメクチンを服用した被験者群は、対照群と比べて新型コロナ感染率が39%低いとの結果を示し、入院率や死亡率も顕著に減少するなどの効果が確認されたという。特に死亡率は、服用していない被験者群は約7〜10倍高かったとしている。
報告の医師は「大規模で無作為の臨床試験とほぼ同等」の結果を示すと付け加えた。本研究の著者の一人であるフラビオ・カデジャーニ博士は報告を踏まえ「イベルメクチンは特に感染が確認されたときの選択肢として検討しなければならないだろう」と大紀元の電子メール取材に答えた。
いっぽう、イベルメクチンの安全性は示されたものの有効性を否定する研究論文もある。
医学誌「International Journal of Antimicrobial Agents」2月号で発表された高用量イベルメクチンの安全性と有効性を評価するイタリアでの研究論文では、89人の被験者からのウイルス量を検出したところ、有意なウイルス減少は認められなかったとの結論を出した。「臨床試験以外での治療のためにイベルメクチンを投与することは現時点では控えることが望ましいとのWHOの勧告を裏付けるものと考える」と指摘する。
これまで何度も効く、効かないの議論が繰り返されてきたイベルメクチン。興和の日本における臨床試験の成果報告が待たれる。
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