中国共産党が実施する広域経済圏構想「一帯一路」では、中国の融資と支援により大型インフラが1万3427件あまり立案された。しかし、国家財政に見合わない計画と融資により、対象国では債務が膨らみ、財政を圧迫している。米ウィリアム・アンド・メアリー大学のエイドデータ研究所はこのたび、165カ国以上の一帯一路プロジェクトを分析。このうち35%は「汚職スキャンダル、労働違反、環境破壊、市民の抗議」などの問題があると指摘した。
一帯一路によるGDPへの貢献みられず
2013年に始まった一帯一路プロジェクトの総額は8430億ドルに上る。 研究の著者の一人であるブラッド・パークス氏は、「中・低所得国の政策立案者の中には、過剰な価格設定、汚職、債務に対する懸念から、プロジェクトの中止が増えている」と述べた。
中国の国有銀行は、各国がとても払えないような融資を提供し、さらにインフラ工事は中国企業が請け負っている。支払い不能に陥った国は、中国に資源の長期利用権や、借款で建設したインフラの賃貸権などを抵当にし、さらには国家資源を差し出さざるを得なくなる。
エイドデータ研究所の報告書によると、42の低・中所得国では、対中債務が国内総生産(GDP)の10%を超えている。しかも、これらの国々は、返済義務を過少申告しており、実際の債務はさらに多いと推計している。いわゆる「隠れ債務」と呼ばれるもので、「あわせて約3850億ドル(約42兆7500億)」にのぼると報告書は述べている。
海外融資により華やかな経済発展計画を描いていた低・中所得国は、一帯一路に対して、債務を返済できるほどの国家の成長を期待していた。しかし、経済学者のアントニオ・グレースフォ氏によると、ほとんどの国は一帯一路によるGDPへの貢献はみられないという。
グレースフォ氏は、最貧国が一帯一路の債務を過剰に負担していると指摘している。また、中央銀行の報告書によると、この構想に参加している国の23%が、一帯一路の債務が対外債務を継続して維持できないレベルまで積み上げているとしている。
「経済的属国の領域に押し込めるようなもの」
ローレンス・フランクリン氏は、政策シンクタンクであるゲートストーン・インスティテュートへの寄稿文で、一帯一路の経済効果は、特に第三世界の国々では疑問視されていると指摘。「これらの二国間パッケージの一部は、すでに貧困に陥っている国を中国の永続的な経済的属国の領域に押し込めるために作られたもののように見える」と述べている。
さらにフランクリン氏は、北京の一帯一路の目標は経済的なものだけではなく、戦略的、政治的なものも含まれていると述べている。
報告書は、近年、一帯一路参加国はプロジェクトを中止したり保留したりする例が増えていると指摘する。マレーシアは115.8億ドル、カザフスタンは15億ドル近く、ボリビアは10億ドル以上のプロジェクトを中止した。加えて、プロジェクトを受け入れたことを後悔している国は少なくないという。
(翻訳編集・武田綾香)
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