中国、党100周年控え台湾海峡でグレーゾーン作戦強化=豪シンクタンク

2021/06/29
更新: 2021/06/29

オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)は24日「To deter the PRC…」(中国を抑止するには…)と題したレポートを発表した。「今後数年のうちに」台湾や南シナ海で大規模な軍事危機が発生する可能性や、台湾での危機が欧米の自由民主主義諸国にもたらす課題について論じている。

レポートは、台湾海峡の情勢が欧米の民主主義陣営全体に影響を与えるとその重要性を説いた。中国共産党(以下、中共)が武力による威嚇を続けるだけでなく、台湾への軍事的圧力を強める「グレーゾーン作戦」を拡大すると指摘した。

レポートの共著者に、米陸軍海外地域担当官のカイル・マークラム中佐と、米空軍大学の中国航空宇宙研究所(CASI)のブレンダン・マルバニー所長が名を連ねる。

ASPIは、24日にシリーズの第一弾を発表し、今後数カ月のうちに追加記事を発表する予定だと述べた。

報告書の序文では、米中対立のリスクは、互いの動機や「戦略文化」に対する理解不足にあるとみている。こうしたリスクが台湾危機の急速な上昇につながり、さらに誤判断によって戦争が勃発する恐れもあると指摘されている。

中共の戦略モデルは、相手が自分の利益のために行動するよう「強制力」を利用していると説明されている。 しかし、西側諸国にとっては、中共のアプローチは侵略行為と見なされるという。

序文はここ数カ月、中国海軍が台湾付近で頻繁に活動していることや、台湾の防空識別圏(ADIZ)に軍用機を継続的に派遣していること、特に今年6月15日に中国の軍用機28機が台湾の南西部ADIZに飛来した事件について言及している。

中共の行動に複数の動機があると説明している。第1に、中共が要求する統一条件を受け入れるよう台湾に圧力をかけること、第2に、中共の軍用機が台湾の軍事情報を収集できること、さらに、長期的には台湾の軍事力を消耗させること、などが挙げられている。

また、中国共産党結党100周年の7月1日を控え、中共は台湾への圧力を強め、特に「グレーゾーン作戦」を強化して、米国の軍事介入を避けつつ、圧力を強めている。さらに台湾を中共に服従させるために、外交で台湾を孤立させる動きを強める可能性があるとしている。

「グレーゾーン作戦」は、デンマーク・コペンハーゲン大学軍事研究センターの研究者であるアンドレ・ケン・ヤコブソン氏によって命名された。同氏は2018年から、中共が採用している「戦争と平和」の間の「ハイブリッド戦争」を「グレーゾーン」と名づけ、衝突を戦争以下に抑えつつ、政治的目標を達成するためにあらゆる手段や資源を利用していることを意味する。

ASPIのレポートは、中共が2024年の台湾総統選挙への圧力を拡大すると予測している。中共が台湾のコロナウイルス(中共ウイルス)ワクチンの確保を妨害したのは、民進党政権への国民の信頼を損ねる狙いがあるとも指摘した。

同レポートは、米海軍大学中国海洋研究所の報告を引用し、中共は台湾への攻撃に必要な大規模な水陸両用戦の能力をまだ持っていないが、大規模な海上民兵を使って攻撃する可能性があると分析した。

また、報告書では、台湾が独自の接近阻止・領域拒否(A2/AD)能力を開発することで、中国の軍事的脅威に対抗できるとしている。

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)2015年5月8日付によると、米軍事アナリストであるオマー・ラムラニ氏は、台湾の今後の戦略目標は「A2/AD」に焦点を当てるべきだと提言した。

ラムラニ氏は、大型の軍艦を周辺海域に配備する従来の方法とは異なり、台湾は「柔軟性とステルス性を備え、高い火力を持ち、敵の移動の自由を奪うことができる艦船」を使うべきだと考えていると説明した。

VOAは当時、レーダーの検出を避ける能力をもち、38ノットの速度を出せる台湾独自の沱江級コルベット(満載排水量約500トン)が2014年に導入されたことは、台湾の軍事戦略の方向転換の兆しだと報じた。

(翻訳編集・李沐恩)