中共ウイルス(新型コロナウイルス)の感染が拡大した台湾に日本は124万回分のワクチンを寄贈した。台湾企業は13日、「まさかの時の友こそ真の友」と産経新聞に感謝広告を出した。日台の接近に中国外務省は、蔡英文総統や与党・民進党を「防疫協力を政治的にもてあそんだ」と反発した。
日本のワクチン寄贈は中国の反応を見越した上での行動だと言える。産経新聞台北支局長の矢板明夫氏は大紀元日本語版に対して、日本が中国への遠慮をなくしたのは中国の近年の強硬な外交姿勢が招いた結果だと分析した。
「1990年代から、当時の権力者である鄧小平氏は韜光養晦(とうこうようかい) の外交政策を実践し、敵国を作らないようにしていた。レッドラインは台湾問題とチベット問題だけだった」
しかし近年、中国は意に沿わない言動をとる国に相次ぎ制裁を加え、世界中でひんしゅくを買っている。「中国のレッドラインは今、あらゆるところにある」と同氏は指摘する。
中国は昨年から、中共ウイルスの起源調査を要求するオーストラリアに石炭や農産物などの輸入を制限するなど制裁措置を発動した。
今年3月、「害虫」が確認されたとして、台湾産パイナップルの輸入を禁止した。
中国は今、ソンビ外交を展開していると矢板氏は主張する。「誰にでも噛みつき、意思疎通を図ることもできない」
「日本はこれまで日中戦争に対する贖罪(しょくざい)意識で中国の神経を逆なでするようなことを避けてきた。しかし、戦争の当事者が減っている現在、中国の顔色を伺うやり方に多くの人は嫌気をさしている」と世代交代が進んだことも一因だとした。
ほかに中国の経済は多くの問題を抱えており、マーケットとしての魅力が下がったことも影響しているという。
反外国制裁法、長期的に運用不能
中国で6月10日、「反外国制裁法」が制定された。外国から制裁を受けた際の報復制裁を規定したもので、制裁に協力した者も対象とする。米国に追随する各国を牽制するためだとみられる。
これについて、矢板氏は「威嚇の意味合いの方が大きい」と過去の例をあげて説明した。
中国の全国人民代表大会(第10期第3回)が台湾の独立阻止を目的に、2005年、反国家分裂法を採択した。しかし、台湾独立を主張する賴清德副総統には同法を適用していない。
昨年11月、中国が香港国家安全維持法(国安法)を施行したことを受けて米国の制裁措置の対象となった。香港のスタンダードチャータード銀行とHSBCは制裁措置に従い、キャリー・ラム香港長官の銀行口座を凍結した。「香港紙幣を発行する2行に反制裁法を適用すれば、香港で紙幣がなくなる」と反制裁法には現実味がないと指摘した。「孤立が深まっている自分自身を奮い立たせるだけだ」という。
(高遠)