米軍は新たに66機のF-16戦闘機を台湾に売却する。専門家は、米国は今後も台湾の自衛のために台湾を支援するという公約を堅持していくことを示しており、実際の軍事力増強という意味よりも、政治的に重要だとの見方を示した。
台湾はこのほど、米国から最新のF-16を66機購入する契約を正式に締結した。2023年に最初の2機が納入され、2026年にすべての納入業務を完了する見込み。米国が台湾に先進戦闘機を売却するのは、1992年にジョージ・ブッシュ大統領がF-16を150機売却すると発表して以来。
米シンクタンクのヘリテージ財団のシニアフェロー、成斌(ディーン・チェン)氏はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、今回の武器売却は政治的に重要であり、米国が台湾の自衛のための支援を継続していくことを示していると語った。
「台湾海峡の状況を平和的に解決するために、中国と台湾に対する米国の継続的なコミットメントを反映している」と成氏は述べた。「台湾関係法の下で、米国の長年の立場であり、米国が平和的解決への支持を表明していることのもう一つの保証」と付け加えた。
米国は台湾に自衛手段を提供するとしているが、中国共産党から見れば、明らかに異なる捉え方をしている。台湾を中国の一部だとみなす彼らは「内政干渉」としている。
米シンクタンクのランド研究所ティモシー・ヒース上級研究員(国防問題担当)はVOAに対し、米国の台湾への武器売却は、米台関係の距離が縮まり続けており、米中関係がますます緊迫していることを示していると語った。
ヒース氏は「米中関係が協力的な時、米国は台湾に大量の武器を売り込むことは少なくなる。逆に言えば今回の武器売却は、米中関係が悪化している証明であり、米台関係が温まっていることを示している」と述べた。
台湾の軍事情報サイト「軍情与航空」編集長の施孝偉氏は、台湾海峡両岸の軍事力のアンバランスは明確であると指摘した上で、「台湾が米国からF-16を購入することで台湾空軍の戦闘力を高めることができ、将来的に本格的な軍事衝突が発生した場合、量的にはともかく質的には中国の戦闘機に対抗する余地があるかもしれない」とVOAに語った。
施氏は、「現在、いくつかの新たな軍事購入と非対称軍事行動を展開することで、将来、現実に両岸の軍事衝突が発生した場合、北京側は、代償が高くつくと気づき、台湾に対する武力行使を再考しなければならないだろう」と述べた。「台湾の軍備増強は基本的に戦争を呼び込むものではなく、戦争が起きないようにするためのものだ」と付け加えた。
ヒース氏は、台湾がF-16を購入しても中国の軍事力の優位性は変わらないが、台湾が米国の親しい友人であることを示しており、軍事的な意義よりも政治的な意義の方が大きいと述べている。
「先進的な戦闘機を運用し、近代的な軍事力を持つことは、アジアにおいても、台湾に対する尊敬と地位をもたらすだろう。 中国が台湾を外交的に孤立させている今、これは重要なことである」
施氏は、台湾は確かに米国からより高度なF-35Bを購入したいが、メンテナンスに高額な費用がかかり、F-16は1機あたりの価格ではF−35Bの半額程度だと述べた。
「レーガン政権と北京当局が1982年に署名した817コミュニケ(米国の対台湾武器売却に関する合意)によれば、台湾への軍事売却にかなりの制限を設けており、米軍の台湾への売却は基本的に台湾の現在の兵器能力や水準を超えることはできないとしている。F-35Bを売却すれば、米政権がこの合意をほごにしたとして、北京の反発は強まるだろう。しかし、F-16の追加販売は、短期的には台湾の防空力を高めるための良い方法だ」と述べた。
成氏は、機体を維持するための莫大なコストに加え、新型戦闘機に慣れるためのパイロットの訓練にも長い時間がかかるだろうと述べた。また、F-35Bの価格の高さを考えると、同じ金額でF-16を買い足した方が費用対効果は良いとみている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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