国際社会は、香港政府が7月1日から施行し始めた「国家安全維持法」に対して、懸念を一段と強めている。同法の第38条は、香港に滞在している外国籍の市民や海外メディアのスタッフだけでなく、世界各国の人々も、香港以外の場所で公に中国当局を非難すれば、同法の取り締まりの対象になると規定する。当局は、言論統制を海外に拡大する狙いがある。
取り締まりの対象になれば、香港に入国する際、拘束、または中国本土に連行される可能性があり、中国と犯罪人引渡し条約を結んでいる他の国でも、拘束される可能性があるとみられる。
国営新華社通信が6月30日深夜、同ウェブサイトで、香港国家安全維持法の詳細を公開した。第38条は、「香港特別行政区の永久住民の資格を有しない者が、香港特別行政区以外(の国・地域)で、香港特別行政区をめぐって実施した本法が規定した罪を犯したと認める場合、本法を適用する」と明記。
同日、米ワシントンDCで、海外香港人団体「香港民主委員会(Hong Kong Democracy Council)」は、米学者を招き、オンラインで香港国家安全維持法に関するフォーラムを開催した。
米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)によると、中国政治に詳しいコロンビア大学政治学教授のアンドリュー・ネイサン(Andrew Nathan)氏が同フォーラムで発言した。教授は、同法の第38条について、中国当局は香港の民主化運動を支持する各国の市民や有識者らにも「恐怖を与えようとする狙いがある」との認識を示した。
ネイサン教授は、「今後、渡航先の国が中国当局と犯罪人引渡し条約を締結しているかどうかを事前に確認すべきだ。中国当局は国際刑事警察機構(インターポール)に指示して、私を拘束する可能性があるからだ」と述べた。
法学者で、国際人権団体「中国人権(Human Rights in China,HRIC)の執行主任を務めるシャロン・ホンハム(Sharon Hom)氏は、中国当局が各国の人々を狙う目的は、「国際社会の香港市民への支持を断つことにある」との見方を示した。
ポンペオ米国務長官は1日の記者会見で、米国民なども取り締まりの対象になることを懸念し、「許しがたい。すべての国への侮辱だ」と述べた。約1300社の米企業が香港に進出しており、およそ8万5000人の米国民が居住している。長官は、米国民の香港国家安全維持法に対する不安が高まっていると示した。
一方、ロス米商務長官は同日、米フォックス・ビジネス・ネットワークの取材に対して、香港に本部を構える各国の企業は、中国当局との関係や、「今後、本部を設置する際、香港は依然として最適な選択であるかどうか」を見直さざるを得ないと述べた。
(翻訳編集・張哲)