米国の有力な外交政策提言組織「現在の危険委員会・中国(Committee on the Present Danger : China、以下、委員会)」が4月25日、トランプ大統領あての公開書簡で、政府職員や軍の退職金が「悪質な」中国企業に投資されることに強い反対の意を表明した。委員会が呼び掛けた134人の影響力のある政府、軍人、企業、公共政策提案者が署名した。
委員会は、投資計画が「中国共産党を潤わせ、米国に向けられた悪意ある行動を更に許すことになる」「戦友と愛する国を脅かす敵を手伝うことになる。誇りを持って国に仕えてきた私たちにとって、耐えがたいことだ」と強調した。
最近、2人の元国家安全保障顧問を含む11人の著名な将校、旗艦、非軍人将校が、退職金を中国投資に使うことを停止するよう要求する書簡を、米軍統合参謀本部に送った。今回の危機委員会の書簡は、問題解決をさらに後押しする格好だ。
米国の公的年金が中国に注がれる
軍人や連邦職員の退職金である連邦公務員向け確定拠出型年金(TSP)を運用する政府機関、連邦退職貯蓄投資理事会(FRTIB)は、2017年、500億ドル規模(約5兆4500億円)の「TSP・Iファンド(国際株式ファンド)」の投資先として、米国が警戒している中国企業の株を含むMSCI総合世界市場(米国除く)株式指数を採用することを発表した。指数はカナダや中国、その他の新興国を含む世界の株式の99%を投資対象としている。
これには議員や政府高官から強い反発があり、見直しを求める声が上がった。2019年10月、FRTIBは、中国へのエクスポージャーを増やすとの2017年の判断を見送ると発表した。また、FRTIBは10月28日、年金運用のための中国投資には、米国の経済と国家安全保障を損なうとの懸念に言及した。
今回、危機委員会が発表した書簡によれば、この米退職金運用のための国際ファンドの投資先には、中国の武器メーカー、中国共産党との関係が強い「悪意あるメーカー」が含まれる。
書簡は、中国共産党の企業の中で、最も問題のある複数の企業を名指しした。
- 中国航空科技工業(AviChina Industry & Technology Ltd)およびAVICとその子会社:中国人民解放軍向けの各種航空機、無人航空機システム、空中兵器を開発・生産している。AVICとその子会社は、イランでのミサイル拡散活動により、米国から繰り返し制裁を受けている。
- 中国船舶重工集団動力公司(China Shipbuilding Industry Corporation):誘導ミサイル駆逐艦、フリゲート艦、在来型潜水艦、原子力弾道ミサイル潜水艦、無人航空機(UAV)システム、空母などの海軍装備品を生産している。
- 浙江海康威視数字技術有限公司(ハイクビジョン、Hikvision Digital Technology):浙江海康は、中国共産党の監視国家装置、「社会的信用」システム、特定の宗教的少数者を投獄するための大規模な強制収容所のネットワークに不可欠なビデオカメラやその他のセキュリティ技術を製造している。浙江海康は、人権やその他の活動が 「米国の国家安全保障や外交政策の利益に反する」として、米国政府から制裁を受けている。
- 中興通訊設備有限公司(ZTE):ZTEは、米国の法律や規制に違反して、制裁国に対して経済貿易活動を行ってきた電気通信会社。
- 中国交通建設股份有限公司(China Communications Construction Company):2015年時点で、同社は中国の浚渫産業の生産能力の半分以上を所有している。いくつかのCCCCの子会社は、南シナ海での北京の違法な島づくり活動を支援するために、浚渫(およびその他の)活動を行っていることが確認されている。
- 中国聯通(チャイナ・ユニコム、China Unicom)中国聯通 は、紛争地域である南シナ海のパラセール島に、通信システムを提供し、パラセール諸島とスプラトリー諸島に通信システムを提供した。中国聯通は中国民間・軍部へ技術提供し、信号情報活動を支援していると報じられている。
- 中国移動(チャイナ・モバイル、China Mobile Ltd)は、中国の民間や軍部に通信サービスを提供して、信号情報活動を支援しているとされる。中国通信は、パラセール諸島とスプラトリー諸島に近い、中国による不法な軍事基地化した島々の通信サービスを提供している。2019年5月、米国通信委員会は「国家安全保障と法執行のリスクを引き起こす」として、米国での事業許可申請を却下した。
- 中国通信(チャイナ・テレコム、China Telecom Corporation)2020年4月、米国政府は、中国のスパイ行為と米国のネットワークの混乱が許容できないリスクを伴うという理由で、この中国の通信会社の米国子会社から事業許可の取り消しを含む勧告を出した。
公開書簡の署名者たちは、トランプ大統領に対して「米国の公的資金の運用計画が中国共産党を潤している。米国に向けられた更なる悪意を強める前に行動してほしい」と呼びかけている。
現在の危機委員会は、米歴代の政権に影響を与えてきた外交政策組織。冷戦以来、20年ぶりに組織され、2019年4月に活動を開始した。これまで対ソ連政策だったが、対中国共産党政策は初めて。委員にはペンシルベニア大学の中国専門家アーサー・ウォルドロン教授、戦略的ミサイル防衛の専門家ヘンリー・クーパー氏、米国の人権団体チャイナエイド代表のクリスチャン活動家ボブ・フー氏ほか、前政権の情報高官、連邦議会議員、シンクタンクの研究員ら50人以上が名を連ねる。
(翻訳編集・佐渡道世)
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