中国軍香港駐留部隊は7月31日、ソーシャルメディアで、テロ事件や暴動を想定した鎮圧訓練を紹介する宣伝動画を公開した。また同日、同部隊の司令官が香港デモについて「絶対に容認できない」と非難し、抗議行動を続ける香港市民を威嚇した。時事評論家は中国軍が鎮圧に乗り出せば、今後、国際社会から厳しい制裁を受けるため、中国当局にとって「自殺に等しい」措置だと指摘した。
駐留部隊当局は中国版ツイッター「微博」で、約3分のプロパガンダ動画を発表した。「反テロ、維穏(デモ鎮圧)」など4つの部分で構成されている。
「維穏」の中で、全身武装した兵士らが防護盾などを使って抗議者に迫りながら、広東語で「後果自負(自分で責任を負え)」と叫んでいる様子が映っている。また、戦車が障害物を破壊する様子、兵士が催涙弾などを発射し、抗議者役を連行する様子もあった。香港警察当局がデモ参加者を強制排除する様子と重なる。
また、駐留部隊の陳道祥・司令官は同日の中国軍設立記念イベントで、香港デモについて「一連の極めて悪質な暴力事件だ」「一国二制度のレッドラインに触れた」と批判した。
香港人の時事評論家・劉鋭紹氏は米ラジオ・フリー・アジア(1日付)に対して、中国軍が香港情勢に介入する可能性はまだ低いとした。同氏は、「軍の出動は、『一国二制度』の消滅を意味する」と指摘した。しかし、現在、国際金融センターである香港を利用し、「不正資金のマネーロンダリングを行っていきたい」と考える中国当局の高官やその親族はまだ多いという。
大紀元コメンテーターの唐浩氏は、「中国当局と駐留部隊が武力鎮圧を示唆したのは、心理戦と世論戦のためだ。目的は、抗議者の内部を分断させることにある」と分析。また、軍の介入は中国当局にとって「経済・政治的自殺に等しい」との考えを示した。米政府が、香港の「独立関税地域」の資格を取り消せば、香港から莫大な規模の資金を引き上げ、香港市場に上場する中国企業の深刻な資金難が予想される。中国経済が一段と悪化すれば、政局不安も深まる。
独経済紙ハンデルスブラット7月31日付は、中国軍による武力鎮圧は、今後、中国当局と西側諸国の長期的な関係悪化と制裁合戦を招くとし、軍の派遣は当面ないだろうと指摘した。中国と西側諸国の対立が激化すれば、世界経済がより大きな打撃を受けると同紙は主張した。
一方、駐留部隊の一連の動きは、7月29日に香港の林鄭月娥・行政長官と警察を支持すると表明した中国当局の態度に呼応し、抗議活動を一段と拡大しようとする香港の若者らをけん制する狙いがあるとみられる。
7月27、28日、香港で連日大規模な抗議デモが行われたことに対して、香港・マカオ政策を所管する中国国務院港澳事務弁公室(以下、港澳弁)は29日、異例の記者会見を行った。
港澳弁の楊光・報道官は、香港情勢について「下心のある人やメディアが虚言や噂を広め、社会不安を引き起こした」と述べ、当局は「法に則り特別行政区政府を率いる林鄭月娥・行政長官を支持し、厳格に法を執行する香港警察を支持している」とした。報道官はまた、中国軍駐留部隊の出動の可能性に関して、「香港基本法」に基づくと明言を避けた。
(翻訳編集・張哲)