香港市民は、「逃亡犯条例」改正案の完全撤回などを求めて、27日の土曜日に中国本土に隣接する新界地区の元朗、28日の日曜日には香港島の中環(セントラル)と西環(サイワン)でそれぞれ抗議デモを行った。日曜の夜、市民は先週末に続き、西環にある中国共産党の出先機関、「中央政府駐香港連絡弁公室(以下、中連弁)」の庁舎前に再集結し、抗議活動を行った。警察当局はこの2日間、抗議者に催涙弾、ゴム弾、スポンジ弾などを放ち、強制排除を行った。
27日、元朗区の住民は21日の同地区の駅で一部の市民らが、暴力団とみられる集団に襲撃された事件に強く抗議するためにデモ行進を行った。主催者によると、約29万人の市民が参加した。この日、警官隊がスポンジ弾などを発射して鎮圧したことで、市民23人が負傷し、11人は身柄拘束された。
警官隊は27日の鎮圧で、初めてスポンジ弾を投入した。至近距離でスポンジ弾を放てば、相手に致命傷を与えることがある。
28日、市民らは中環にある公園、チャーター・ガーデンで集会を行った後、複数のルートに分かれて、西環の中連弁に向かった。中連弁の庁舎の外で、警官隊と市民らは対峙した。強制排除に乗り出した警官隊は複数回、催涙弾とスポンジ弾を発射した。当局は少なくとも49人を拘束した。負傷者数は不明。
これは1週間のうち、香港市民による2回目の中連弁包囲となる。「逃亡犯条例」改正案をめぐって、市民は今怒りの矛先を、香港政府から中国当局に向けたことが浮き彫りになった。
21日夜、一部の市民が初めて中連弁の前で抗議を行った。市民らは中連弁の庁舎の壁に、「中共倒台(中国共産党、崩壊)」「中国共産党が香港を乱した」「思想の自由に罪はない」「拘束された市民を解放せよ」などのスローガンを黒いスプレーで吹き付けた。また、中国政府の象徴である国章に黒いインクをかけ、卵を投げつけた。中連弁の看板も黒く塗りつぶした。
ジャーナリストで民主派立法会(議会)議員の毛孟静氏は、香港紙「明報」に対して、市民が中連弁を包囲したことについて、「中国共産党による香港への干渉に対する市民の怒りの表れだ」と述べた。
黄碧雲・立法会議員も、「市民は、一国二制度や『香港基本法』の形骸化を懸念しており、中国当局による香港への介入に強く不満を持っている」と話した。
香港メディアによると、市民らはおもに3つの要因で中国当局への批判を強めている。
市民らは、1997年返還以降、中国当局が香港の言論の自由、市民の民主化の訴えと行政長官を選出する普通選挙の要求に関して、締め付けを強化したと指摘した。
また、今回の「逃亡犯条例」改正案に関して、中国中央政治局常務委員らは公の場で、「香港政府による同条例の修正を支持する」と明言した。改正案が可決されると、中国当局の要請があれば、香港市民と香港在住の外国人は直ちに中国本土に連行されるものとみられる。
さらに、複数の香港メディアの報道によれば、21日の新界元朗区で起きた市民への襲撃事件では、中連弁が背後で暴力団に指示した。この事件で、45人がけがを負った。警察当局の現場への到着が大幅に遅れたことから、市民らは「警察当局と暴力団は結託している」と強く批判している。
6月から約2カ月続いている抗議デモの中で、「打倒中国共産党」とのスローガンを叫んだり、プラカードを掲げたりする香港市民が増えている。
(翻訳編集・張哲)