中国税関当局はこのほど、米電気自動車(EV)メーカーのテスラが生産する新型セダン「モデル3」の通関手続きを停止した。専門家は、テスラがこのほど「モデル3」などの販売価格を大幅に引き下げたことが一因だとの見方を示した。中国当局は、「モデル3」の値下げで、国産新エネルギー自動車(NEV)の販売が大きな打撃を受けることを警戒しているという。
中国メディア「毎日経済新聞」は4日、中国税関当局の内部資料とみられる情報を公開した。これによれば、税関当局は、各地の税関に対して、米国から到着したテスラの「モデル3」の通関手続きを停止するよう指示した。また、当局は各地の税関に対して、すでに通関手続きを済ませた「モデル3」について、輸入企業に「販売、または使用しないように」との通達を送るよう求めた。同時に、税関当局はテスラの他の種類の電気自動車にも、検査をさらに厳しくするという。
中国紙・新京報5日付によると、上海市税関当局は、「モデル3」計1600台がラベル表示の法令規定に違反しているとした。
関連報道を受けて、米株式市場では5日テスラの株価が急落し、一時270.1ドル(約3万0217円)を付けた。昨年10月23日以来の安値となった。
テスラは2月28日、販売価格3.5万ドル(約392万円)の「モデル3」を発表した一方で、世界各国の店舗を閉鎖し、ネット販売を本格化することを明らかにした。
3月1日、テスラは中国市場で販売されている「モデル3」など8つの車種の価格を引き下げた。値下げ後、「モデル3」の販売価格帯は今までの価格と比べて、2万6000~4万4000元(約43万1600~73万円)安くなるほか、「モデルX」は17万4500~34万1100元(約290万~566万2260円)安くなる。
中国メディアによると、テスラのEVを購入した顧客は、大幅な値下げにより損失を被ったとして抗議している。
いっぽう、中国では国産EV車の品質の悪さが問題視されている。
中国経済金融セルフメディア「叶檀財経」は2月20日、中国国産NEVについて評論記事を掲載した。記事は、中国のNEV用バッテリー技術はまだ遅れており、リチウム電池に多くの問題が潜んでいると指摘した。
また同記事は、中国国産新エネルギー自動車は環境に良いと言えない状況だとした。中国EVメーカー、蔚来汽車(NIO)の「蔚来ES8」の顧客は「100キロ走ったのに、40Lの軽油を使った。燃費はトラックより悪い」とクレームを付けたという。
中国メディアの昨年12月の報道によると、中国当局は2019年、国内NEVメーカーに対する補助金を段階的に40%縮小していくという。NEV業界を取り巻く経営環境はますます厳しいと指摘した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)は5日、中国のNEV業界に詳しいジャーナリストの杜氏の話を引用し、中国国内NEVメーカーの大半が国家補助金をだまし取っていると非難した。
杜氏は「北京の企業は電気バスの販売価格を167万元(約2772万円)と高く設定している。このため、この電気バス1台を販売すれば、メーカーは中央政府と北京市政府から、合計約100万元(約1660万円)の補助金を受け取ることができる。一部の顧客はこの電気バスを購入して、わずか1年後に7万元(約116万2000円)という安価で転売した」と紹介した。
杜氏は「テスラの大幅な値下げによって、中国のNEV車の価格競争力は低下する。多くの中国NEVメーカーが倒産するだろう」と述べた。
米中貿易戦で多くの海外企業が中国から撤退したなか、米テスラは今年1月、中国上海で工場建設を着工した。
RFAは中国人ジャーナリストの話として、「中国に進出したテスラに対して中国当局が締め付けをした。当局は今までの(市場保護の)やり方を変える意思が全くないということを意味する」と報じた。
(翻訳編集・張哲)