世界コンサルタント大手キャップジェミニの統計によると、中国人富裕層は投資先を香港からシンガポールにシフトしているという。香港政府が昨年、脱税や租税回避の行為防止として「共通報告基準(CRS)」国際制度に加盟したことが主因だ。同制度では、香港の金融機関が中国当局に利用者の口座情報を提供する義務がある。ブルームバーグが7日伝えた。
キャップジェミニによると、中国では、1000万元(約1億7000万円)以上の投資可能資産を保有する富裕層は全体で、約5兆8000億ドル(約638兆円)の資産を持っている。そのうちの約半分はすでに海外に流出した。
経済協力開発機構が2014年に「CRS制度」を含む「課税における自動的な情報交換に関する基準」を公表した。現在、中国当局も含めて世界75カ国が「CRS制度」の適応国となっている。
同制度では、各国の金融機関は口座保有者の居住国を特定し、各金融機関の所在地国の税務当局に報告するのが義務付けられている。また、各国の税務当局は収集した情報をその口座保有者の出身国の税務当局と自動的に情報交換を行うこととなる。
シンガポールはまだ、同制度に加盟していない。
中国人富裕層は、この制度で香港の金融機関から資産情報が中国当局に報告されることに対して不安が高まっている。中国当局は近年、資本流出の引き締めを強めている。このため、投資先を香港からシンガポールに移す中国人富裕層が増えているという。
ブルームバーグによると、香港金融機関関係者は、ネット技術の発達で中国当局はより速く顧客の資産情報を把握できると指摘。
米コンサルタント会社のベイン・アンド・カンパニーの昨年7月の調査では、香港を最初の投資先に選んだ中国人富裕層の人数は15年の71%から53%に減少し、一方でシンガポールを最初の投資先に選んだ人は15%から20%に増えたと示された。シンガポールの金融機関に預けられた総額1兆9000億ドル(約209兆円)規模の資産のうち、78%は海外から流入したものだという。
(翻訳編集・張哲)
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