両会 大紀元コラムニスト 朱明

中国の二大富豪が「両会」に背を向けるわけ

2017/03/20
更新: 2017/03/20

毎年3月開催される「両会」は、中国共産党にとって、各界のエリートを代表に据え、政権の体裁を整える絶好の機会。「両会」代表という肩書は国政参加や名誉というより自身の実利と直結しているから、各界の著名人やエリートがこぞって代表になり、大会に参加しようとする。

一方で、当局から問題ありとみなされた、いわゆる「敏感な」代表が参加しなくなると、その人物に何らかの異変が起きたと認識されてしまう。そのため両会に嫌々ながら参加していると噂される人物も多い(訳注)。

そんな中、中国一の富豪、大連万達集団(ワンダ・グループ)会長の王健林氏と、2番目の富豪でアリババ会長、馬雲(ジャック・マー)氏は「両会」に不参加の姿勢を表明し続けている。

馬雲氏、王健林氏らが両会に姿を見せないのはなぜだろうか。中国社会に対する両者の影響力が、その他の企業家よりも劣っているからでは決してない。

馬雲、王健林、両氏が両会に参加しない理由

このほど発表された『「胡潤百富榜(中国語版)」(フージワーフの中国富豪ランキング)』で、王健林氏は総資産2,050億元(約3兆3,550億円)で中国一の富豪の地位に返り咲き、馬雲氏は2000億元(約3兆2,732億円)で一位にわずかに届かなかった。両者とも私有財産は、香港一の大富豪、李嘉誠氏の資産を上回っている。

この2人は現在、全人代の代表でも政協の委員でもないため、当然「両会」とは関係ない。中国メディアはその理由について、「王健林氏は個性が強いため、馬雲氏は政治に首を突っ込まない信条のため」との認識でおおむね一致している。

中国メディアが報じたところによると、11年の両会開催中、王健林氏は高級贅沢品に掛けられる関税を引き下げるよう提案を出した。関税が下がればブランド品の国内販売価格も下がり、海外で買い物をする中国人を国内市場に呼び戻せるほか、内需が拡大すれば新たな雇用も生まれるというのがその理由だったが、この案は不採用となった。

翌年、王氏は前年と同じ提案を再度提出した。だがこの時も採用には至らず、王氏は「失望」を表明している。これを境に、王氏は両会に姿を見せなくなった。当局のお飾りになりたくないという姿勢を示したのである。

一方、馬雲氏は、ことあるごとに「紅頂商人(政府高官と密接な関係があり政策に影響力を持つ企業家)になるつもりはない」としてきた。

12年10月26日に開かれた「金融博物館書院読書会」で、馬氏は「官僚になるならば決して富を追い求めてはならず、一旦その志を立てたなら、金のことなど忘れてしまうことだ。商売で生計を立てようと思ったならば、権力のことなど頭から捨て去るべきだ。金と権力を同時に追い求めるということは、火薬と雷管をセットにすることに他ならない。つまり、爆発は必至だ」と語っている。氏にとって政治にかかわることこそが危険なのだ。

また15年の最初に開催された冬期ダボス会議でも、馬氏は「政府が私に何かするよう求めてきても、無理なことならちゃんと断る。だが、それに興味のありそうな友人を紹介することはできる」と述べている。

なぜ富豪ランキング入りした富豪が次の年には消えてゆくのか?

 

この発言は、馬氏がいかに頭の切れる人物であるかを象徴している。1~2年前、フォーブスやフージワーフが毎年発表している中国富豪ランキングにランク入りした富豪たちが相次いで次の年に不正や贈収賄などの罪に問われ、刑務所に送られたため「豚殺しランキング」と揶揄された時期があった。

例えば16年のフージワースランキング第4位にいきなり入った前海人寿保険股份有限公司の董事長、姚振華氏は、今年2月24日に中国保険監督管理委員会から就業資格を抹消され、10年間の保険業界での営業活動が禁止された。

中国共産党内部の政治的な力関係に頼り不正に蓄財してきた企業家たちが自分の後ろ盾となる勢力の選択を誤って粛正を受ける可能性が非常に高い。例えば、周永康、薄熙来らの権力が最盛期だった頃、民間企業家の資産が「犯罪組織撲滅取り締まり」を名目に、次々と奪われていった。

中国共産党に身を捧げた者の末路

中共に身を捧げた者の多くの末路は悲惨な結末に終わっている。大紀元がこのほど発表した大型特集「共産党100年の真相」の中には、国家主席から中国の十大元帥(朱徳や林彪など軍元老10人)、各界のエリート、一般庶民にいたるまで、多くの実例が挙げられている。

共産党政権は自分たちが強大だという体裁をつくろいたい時、あらゆる手段を講じて富裕層の企業家を人大や政協に勧誘し、利益を享有する同盟関係を結ぶが、党の利益を守る必要が出てくると、政治運動を利用して、躊躇せず企業家の資産を取り上げてしまう。

馬氏の発言から、彼が内心では共産党政権による政治体制を拒否していることが透けて見える。また中国からの巨額資本流出現象も、多くの中国人が共産党政権に見切りをつけており、中共と同じ釜の飯を食っていては自分の身が危ういと理解していることを示している。王健林氏や馬雲氏はこの点を熟知しているからこそ、両会から距離を置いている。共産党政権から距離を置くことは、実は最善の保身策に他ならない。

訳注)一例として、中国で有名な芸能人の趙本山は、腐敗官僚と密接な関係を持っているとされているため、マスコミからその件について質問されることを嫌っている。だが、両会を欠席すると腐敗官僚の失脚と共に過去の人になったと推測されてしまうため、マスコミの取材を避けるために帽子をかぶり、マフラーで顔を隠してこっそり両会に出席した。

 

(翻訳編集・島津彰浩)

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。