両会開催、「さまざまなリスクと課題に直面」=中国

2019/03/05
更新: 2019/03/05

中国で年一度の政治行事である両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)が行われている。3月3日、中国当局の国政諮問機関、全国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第2回会議が北京で開幕した。中国共産党中央政治局常務委員で、党内序列4位の汪洋・政協主席は同日、2000人以上の政協委員に向けて活動報告し、中国共産党政権は現在「さまざまなリスクと課題に直面している」と強調した。

リスクと課題 

3日の会議には、中国最高指導部である中央政治局常務委員7人、政治局委員18人、政協副主席24人と政協委員2133人が出席した。

汪主席は演説で、習近平国家主席の「2019年は必ずチャンスとチャレンジが織り合う1年になる」との発言を紹介した。汪氏は今年の政協の主要任務に就いて、「時勢の変化に適応し、『難』と『憂』への意識を高め、『穏(安定化)』をしっかり把握していく」と述べた。

汪氏はまた、中国当局が「さまざまなリスクと課題の深刻さと複雑さに直面する」なか、「政協は必ず大局に服従し、大局を維持しなければならない」とした。

中国最高指導部は最近、社会不安や経済失速などについて強い警戒感をあらわにしている。習近平国家主席は2月22日の中央政治局会議で、「中国当局は各方面で『重大なリスク』に直面しており、『危機』が『脅威』に変わった場合、中国共産党の幹部全員がその責任を負わなければならない」と発言した。

習主席は1月21日、全国省レベル以上の幹部を召集した会議でも、中国当局が「7つのリスク」に見舞われていると言及した。

在米中国経済学者、程暁農氏は米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対して、現在中国当局が直面する最大のリスクは経済リスクであるとの見方を示した。しかし、中国当局の政治体制下では、経済リスクは政治リスクでもあるため、当局は強い危機感を抱いている。

中国の経済成長伸び率は30年ぶりの低水準となった。個人消費の低迷、地方政府の債務急増、不動産企業などの債務不履行、失業者の拡大、大規模な抗議デモの発生、米中貿易戦や、世界覇権を狙う中国当局に対する国際社会の反発に加えて、中国当局は内憂外患に陥っている。

南米のベネズエラでは1月23日、社会主義を掲げるマドゥロ現政権の退陣を求める大規模なデモが行われた。野党指導者のフアン・グアイド国会議長が暫定大統領の就任を宣言した。現在、米、英、フランス、カナダ、日本など各国政府が、グアイド氏を暫定大統領と認定し支持を示している。

このベネズエラ情勢を意識して、中国共産党中央政治局常務委員、党内序列5位の王滬寧氏は1月24日、党内に向けて、習近平国家主席の政治思想を学習する必要性を訴え、「最悪の状況に備える」べきだと述べた。

5日に開幕した全国人民代表大会(国会相当)で、中国当局は2019年の経済成長率の目標を2年ぶりに引き下げ、6.0~6.5%と設定した。

代表らの宿泊ホテルを鉄条網で囲む 「政権の脆弱性浮き彫り」

鉄のフェンスで囲まれた全人代代表宿泊のホテル。(陸天明氏の微博より)

中国当局も同政権が「ベネズエラ」のマドゥロ政権のように、いつ崩壊してもおかしくない状況に陥っていると強く懸念しているようだ。

中国当局は、全国各地からの陳情者の殺到や反政府デモの拡大を防ぐため、北京市内で厳戒態勢を敷いた。両会に出席する各地や各分野の代表者らが宿泊するホテルの周りに鉄条網を設置した写真がネット上に投稿された。ネットユーザーの批判が集中した。

仏国際放送、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)中国語電子版は3月2日、北京在住中国人作家の陸天明氏の評論を引用した。陸氏はインターネット上で、「鉄条網を使って国民と国民の代表を隔離するのは、やり過ぎではないか」と非難した。陸氏によると、2年前までの両会では、フェンスを使って「国民の代表」の宿泊ホテルを囲むことはなかったという。

陸氏の書き込みに対して、一部の中国人ネットユーザーは、「両会の代表たちが集団で監禁されたのではないか」「これは(新疆ウイグル自治区の)ウルムチ市だと一瞬思った」「他の国では国民の代表が、中国国民の代表と同様に、隔離されているのかを知りたい」などのコメントを書き込んだ。

中国共産党当局は1月末、党建設強化に関する指針を発表し、党内における習近平氏の「核心的地位」の維持を再び強調した。米中貿易戦や国内経済情勢への対応に関して、両会の開催期間中、各地の党幹部から習近平指導部への不満を噴出させない狙いがあるとみられる。

香港紙・蘋果日報3月2日付は、中国最高指導部は両会に出席する各地の代表に対して、海外メディアの取材を受けないよう要求したと報じた。

いっぽう、中国当局はインターネット上の情報検閲を強化した。当局はこのほど、4月から11月まで、セルフメディアを主要対象にするネット規制強化計画、「浄網2019」を実施すると発表した。 

米ラジオ・フリー・アジア(2月28日付)によると、中国人ジャーナリストの斎崇礼氏は、中国当局による言論の自由へのさらなる抑圧は、「この政権の脆弱さ」を浮き彫りにしたとの見解を示した。

(翻訳編集・張哲)