近年、中国軍高官が相次いで腐敗問題で失脚したことで、国内外に軍内部の深刻な贈賄や収賄が知れ渡ることとなった。中国問題専門家はこのほど、高官は武器密輸などの方法で、贈賄のために横領していると指摘した。米VOAが2月3日に報道した。
VOAは、中国軍高層部の人事変動について、専門家によるディスカッションの内容をまとめた記事で、一部の読者から「(収賄などで無期懲役を言い渡された元軍トップ)郭伯雄氏らが莫大な金額の賄賂を受け取ってきた。軍内部では官職売り、または官職買いにつき、明確な相場がある。では贈賄した人たちはその後、どのように資金回収をしているのか」との質問があったという。
これに関して、中国軍に在籍経験のある中国共産党の歴史に詳しい高文謙氏は「中国共産党政権がいわゆる改革開放政策を打ち出した以降、軍は武器密輸、軍馬場(軍用の馬を飼育し海外に輸出する。また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放する)の運営、様々な業種の大型国有企業との連携でビジネスを行って、金を集めてきた」と回答した。
「贈賄を受けた人がどのように資金回収したのか。つまり軍内部では昇進と出世のため、一番下の兵士から排長(小隊長)幹部へ、その上の連長(中隊長)、営長(大隊長)、団長(連隊長)、旅長、師長クラスへと、下から上の各階級で贈賄を行っている」と高氏は説明した。
より高い階級に昇進できれば、その権力と地位を利用して金儲けできて、また下の階級からも貢がれるため、兵士から将校まで皆贈賄や腐敗に奮走するという。
森林や鉱山を守る部隊も 企業に勝手に売却
中国政治評論家の陳破空氏は「兵士召集から腐敗が始まっている。男子が軍に入隊したいなら2万~5万元(約34万~85万円)、女子は5~10万元(85万~170万円)との相場で、軍幹部に賄賂を渡さなければならない」「軍内部の腐敗は至る所でみられる。国境防衛部隊なら、武器を密輸する。なかでは一部の武器を東トルキスタン解放組織(ETLO)まで渡っていた。また森林や鉱山など資源を守る部隊も、その森林や鉱山資源を勝手に他人や企業に売ることで金を儲けてきた」と示した。
「軍内ではこのような噂が流れている。(収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の)徐才厚が亡くなる前に、太子党の劉亜洲氏(現空軍上将)と劉源氏(元総後勤部政治委員、上将。15年に軍を退役)を除いたほとんどの将校から賄賂を受け取ったと話したようだ」「つまり、中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならない。軍内の腐敗は非常に深刻だ」と陳氏が話した。
陳氏は、兵士や将校らは出世、賄賂、金儲けばかり考えているのだから、「中国人民解放軍の戦闘力は全くゼロに等しい」と指摘した。
軍内では、徐才厚は総政治部と総後勤部を掌握し、郭伯雄氏は総参謀部と総装備部を掌握していた。二人とも江沢民の腹心で、郭伯雄は2002年~13年まで中国共産党中央軍事委員会副主席を務め、徐才厚は04年から13年まで、同じく党中央軍事委員会副主席だった。二人は江沢民の権力を後ろ盾に、軍内で大いに腐敗を行ってきた。
中国国内メディアの報道によると、14年3月15日に徐才厚が当局に身柄を拘束された後、家宅調査に当たった政府関係者らは北京市内にある徐の豪邸の地下室から、膨大な量の現金、金延べ棒、豪華な宝石装飾品、骨董書画などを見つけ、十数台の軍用トラックを使ってやっと全部運び出したという。
一方、15年に失脚した郭伯雄は軍内の将校に対して官職売りを行っていた。少将に昇進したいなら500万~1000万元(約8500万~1億7000万円)。中将に1000万~3000万元(1億7000万~5億1000万円)などの相場を付けたと言われている。
また香港メディアは、郭とその家族、また徐とその家族が不正蓄財した規模はそれぞれ200億元(約3400億円)以上と報じた。
(翻訳編集・張哲)