米国の中国語ニュースサイト「多維新聞網」はこのほど、7月12日中国政治雑誌「炎黄春秋」を発行する出版社社長や副社長、総編集長などの管理層幹部が、同社を管轄する「中国芸術研究院」から更迭されたことについて、中国共産党内部における分裂と意見衝突が表面化し、将来中国共産党政権に致命的な影響を与えるとの評論記事を掲載した。
同サイトが23日に掲載した元関係者への取材記事によると、同出版社の人事異動を命じたのは習近平主席ではないとの見方を示したという。指示を出したのは党内江沢民派閥で中央政治局常務委員劉雲山氏だと見られる。
「炎黄春秋」管理層への人事介入
「中国芸術研究院」は7月12日に、同社社長、副社長、編集長を更迭し、新社長には同研究院副院長の賈磊磊氏が就任するとの人事を突如発表した。
社長を解任された杜導正氏は、中国芸術研究院の一方的な人事介入は2014年に同出版社と中国芸術研究院とが双方で署名した「人事、出稿、財務の自主権は炎黄春秋出版社にある」との合意書に違反したとして、18日ネット上で同誌の停刊声明を発表した。
声明では、15日に中国芸術研究院関係者数人が「出版社に侵入し、社の公式ウェブサイトのパスワードを盗み取り、変更したため、同誌の基本的編集出版の権利を喪失した」と同出版社が占拠されたことを明らかにした。
「炎黄春秋」問題で党内の意見衝突と分裂があらわに
中国指導部に近いとされている「多維新聞網」が7月28日に発表した評論記事は、国内外の世論は「炎黄春秋」を「党内自由派」または「改良派」と呼んでいるが、雑誌の創刊者や歴代社長、総編集長は「党内同志」で、同出版社は「正真正銘の党メディア」だと評した。
そして、同出版社が関係部門から厳しい締め付けと報道規制を受けたことは、党指導部内で「認識の不一致、歩調の不一致」が表れ、保守派と改革派との意見衝突、さらに党内分裂があらわになったとも評した。
また、一方的な人事介入からみると、当局による両派の対立を解決する方法が「簡単で乱暴だ」、「客観的なルールを無視した方法で、これがいったん慣習的となれば、将来中国共産党政権に致命的な影響を与える」と批判した。
「炎黄春秋」への締め付けは習氏の指示ではない
今回副総編集長を解任された王彦君氏は「多維新聞網」(23日付)の取材に対して、習近平国家主席は「炎黄春秋」の運営について「封殺しない、良く指導する」との指示に関する噂について、「情理に合う」と肯定的な考えを示した。王氏は、地方から中央まで昇進してきた習氏は下層の状況をよく知っており、同誌の主要読者層である党内の老幹部ともよく交流しているため、その指示は「情理に合う」とした。
また、王氏は今回の強制人事更迭のやり方が文化大革命の時のように乱暴で、習氏の「指導」と全く合わないことから、習氏の指示ではないと分析した。
江派閥中宣部の仕業
1991年に創刊した「炎黄春秋」は歴史記述や評論記事を掲載し、中国政治体制改革の推進を努めてきた。しかし、近年同出版社は、党内江沢民の側近で中央政治局常務委員劉雲山氏が掌握する情報統制の中心である中央宣伝部(中宣部)からの圧力を受けるようになった。
香港誌「争鳴」昨年5月の報道では、劉氏が中宣部の会議において「炎黄春秋」を名指しで批判したという。
昨年7月に離職した元総編集長の楊継縄氏は離職前、中宣部が監督する政府機関「国家新聞出版広電総局」へ公開書簡を発表した。書簡によると、2014年9月10日に中宣部は事前通達なしで、同出版社を管轄する機関、学術団体の「中華炎黄文化研究会」から、当局文化部直轄の「中国芸術研究院」に突然変更したという。楊氏自身も当局から圧力を受けたことなどを明らかにした。
中国共産党史学者で人民解放軍軍事出版社の元社長である辛子陵氏は、7、8月に開催される予定で党指導部の重要人事を話し合う「北戴河会議」の前に人事介入が行われたことから、江派閥が世論を習氏にとって不利な方向に動かし、この重要会議をかく乱する目的にあるのだと分析した。
(翻訳編集・張哲)
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