中国漁船の密漁・乱獲により、黄海で春季に捕れるワタリガニの絶滅が危惧されている。「根絶やし」漁と呼ばれる乱獲は、ワタリガニのみならず、世界中の水産資源の脅威となっている。
中国と朝鮮半島の間にある黄海では4月、ワタリガニ漁の最盛期を迎える。しかし、韓国の国立水産研究所によると、ワタリガニの漁獲量は5年連続で減り、2011年は2.6トンだったのに対し、2015年は1.6万トン。今年は昨年比でさらに10~30%減ると見られている。
減少理由について、同所は、冬の水温の上昇によりカニの出産量が下がったことをあげたが、最大の要因は、違法に越境して操業する中国漁船の乱獲だと指摘。これによるワタリガニの絶滅に警鐘を鳴らしている。
懲罰も無視 大挙する違法な中国漁船
中国漁船はグループで隊列を組んで操業する。目的は、集合して大きな船に見立て、現地の海上警察に対抗することと、列になって効率よく底引き網を使うことだ。ワタリガ二のみならず、黄海では、春に最盛期を迎えるヒラメ、イイダコも漁獲量が激減した。
違法操業する中国漁船への措置として、韓国政府は取り締まりを強化した。当局は3月から、違反者を逮捕後、裁判にかけて罰金刑もしくは禁錮刑を下す。漁船の没収や取り壊しも行うという。しかし、その効果はまだ出ていない。同月は、黄海に現れる中国の漁船は70数隻に達し、2月にくらべ3倍に増加した。
世界の水産資源をおびやかす「根絶やし漁」
中国近海に魚はほとんどいない。子孫が残らないほど捕るという、生態系に配慮しない乱獲が原因とされ、この漁業方法は「根絶やし漁」「絶滅網」などと呼ばれている。養殖用の稚魚でさえ、発見することができなくなっている。
中国漁船は世界中の海で不法に乱獲し、これによる衝突事件が頻発している。韓国では2014年10月、海洋警察が違法操業する中国漁業者を取り締まるなか、殺害される事件が発生。アルゼンチンでは3月、同国の排他的経済水域(EEZ)で違法操業していた中国の大型漁船を撃沈した。日本の排他的経済水域でも、魚類やサンゴの密漁が海上保安庁により確認されている。
(翻訳編集・佐渡道代)
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