〈香港デモ〉相次ぐ衝突、長期化に苛立つ中国当局 「重大な政治事件だ」と批判攻勢

2014/10/16
更新: 2014/10/16

【大紀元日本10月16日】香港の中心部アドミラリティ(金鐘)にある行政長官弁公室(官邸)前で16日未明、道路にバリケードを設置したデモ隊を排除しようと、警官隊はスプレーを噴射し、衝突が起きた。15日未明にも現場の道路を占拠したデモ参加者45人を逮捕するなど強制排除したばかりで、2日連続の衝突となった。相次ぐ衝突の背後に20日から始まる共産党第18期中央委員会第4回全体会議(四中全会)を控え、中国当局は長期化の様相を見せている香港デモの早期解決を図りたい思惑があるとみられる。

デモ隊は16日未明、道路にバリケードを設置して封鎖した。数百人の警官隊が駆け付け、デモ隊を車道から歩道まで排除した。警察は2人のデモ参加者を逮捕したと発表した。15日の強制排除の際に、無抵抗の民主派男性が複数の警官に殴る蹴るの暴行を受け、内外から批判の声が集まった。

2週間以上続いているデモに中央政府は苛立ちを隠せない様子だった。共産党機関紙の人民日報は1日から10日まで連日、「背後にアメリカなど西側勢力の支持があった」などデモを糾弾する記事を掲載した。しかし、アメリカ当局はこれを否定した。

親中メディアとして知られる香港紙・大公報も学生リーダーの一人である黄之鋒が「米政府からの資金供与を受けている」と報じた。ただ、「明確な証拠はまだない」と付け加え、なりふり構わぬ批判を展開している。1989年の天安門事件の際も、当局は民主化を求める大学生が「西側の反中勢力からの支持を受けている」と宣伝していたため、次に出る強硬策のための世論作りである可能性が高い。

中国政府の香港出先機関、中央人民政府駐香港特別区連絡弁公室(中連弁)の張暁明主任は14日、「中央は現在の香港情勢を非常に注視している」と述べ、習近平国家主席が先月、北京を訪問した香港ビジネス界訪問団と会見した際、「『二制度』のみを重んじ、『一国』を重んじないのは許されない」と発言したことを明らかにした。さらに、「香港デモは政権転覆を狙う色革命だ」、「中央の権力を挑発する重大な政治事件だ」と強く批判した。

ロイター通信は15日、政府に近い情報筋の話として、上層部の指導者らは最近の会議で「香港デモを決して容認しない」との意見に一致したという。「容認してしまうと、独立を求めているチベット新疆で連鎖が起こりかねない」と危惧している。さらに、中国当局はこれまで、2003年に香港基本法23条に基づいて制定しようとした国家安全条例と、中国への愛国心を養う新教科「国民教育」の導入はいずれも市民の猛反発を喰らい、大規模な抗議デモで頓挫してしまったという過去があった。同情報筋によると、上層部は「香港のデモはもう懲り懲りだ」、「三度目の譲歩は絶対ない」と話していたという。

天安門事件のあと、各国が対中制裁を発動し、中国は国際社会で孤立していた経験があった。その辛さを知っているから、今もデモ隊の完全排除に踏み切れずにいた。しかし、当局は長引くデモに苛立ちを見せ始めたと米華字ニュースサイト「明鏡新聞網」は伝えた。20日から始まる四中全会までに事態を収拾するようとの指示が出ているという。

現在、アメリカなどの諸国は香港デモを容認する態度を示しており、これを無視して力で抑え込む行動に出れば、国際社会の批判を招くのは必至だ。

(翻訳編集・江音)