世界金融大手の英スタンダードチャータード銀行はこのほど発表した研究レポートで、中国の広義マネーサプライ(M2)は過去5年間で約146%増加し、2011年末時点でのM2残高は85兆2000億元(約13兆5000億ドル)に達したと示した。また、同レポートによると、2011年度、世界全体M2新規増加額の内、中国が約52%を占めている。世界金融危機発生以降3年間(2009年~2011年)での世界M2新規増加総額のうち、約48%は中国中央銀行によるものだという。
同銀行はレポートの中で、「世界流動性の主要提供者は人々が想像する米国連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)ではなく、中国の人民銀行に変わった。周小川氏は中国中央銀行の総裁であると同時に、世界の中央銀行総裁でもある」と皮肉った。また同銀行は、中国のM2の急増で世界M2規模は50兆ドルに達するとの見通しを示した。
M2対GDP比(マーシャルK)について、中国政府はこの2年間で徐々に下げるよう努めていると言われているが、2011年末時点でのM2対GDP比は189%で、米国の同期の同64%と比べて、依然と非常に高水準に維持していることが明らかだ。
米国サウスカロライナ大学教授の謝田氏は、マネーサプライの急増が国内インフレ圧力を高めた主因だと指摘し、現在中国政府は人民元に対し管理変動相場制を採っており、元は国際通貨ではないため、マネーサプライが急増しても元は国際社会で流通することができず、国内だけで流動していることから、インフレの圧力はすべて中国国民が耐えなければならないことになる、との認識を示した。
同銀行はまた、過去5年間において人民銀行の総資産は119%増加し、2011年末時点で28兆元(約4兆5000億ドル)に達し、FRBやECBの同期の資産規模(それぞれ3兆米ドルと3兆5000億ドルだった)と比べると、大幅に増加した。
これについて謝教授は「人民銀行はマネーサプライの拡大で帳簿上の自己資産を増やした。また、金融市場における中央銀行との寡占的な優位性で、国民からさらに多くの財貨を集めてきたことで、同銀行の資産規模を増やした。しかし、これは中国の経済には良いことではない。独占で暴利業界となった中国の銀行業はほとんど中国政府の関連企業を相手に融資を行うが、経済成長に、より貢献度の高い中小企業には支援をしない。これは中国の経済発展を阻んでいると言える」と指摘した。
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