オバマ・胡錦涛会談は「中国の良心」を避けて通れない

2011/01/19
更新: 2011/01/19

【大紀元日本1月19日】胡錦涛主席の訪米が始まった。波乱の2010年を経て、米国が唱えている「アジア回帰の戦略」と強気の外交、日増しに高まる周辺国家の中国に対する恨みや強硬な態度、そして絶えまなく起こる国内民衆の抗争や不満に直面し、中共は面目丸つぶれも同然で、いても立ってもいられない様子だ。そこで世界ナンバーワンの米国と関係を「修復」することによって、自国民と世界の人々の前でメンツを取り戻そうとする。この点から、胡主席の訪米は実質的なものというより象徴的な意義が大きいと言える。

実際、胡主席の訪米に関して何か実質的な結果を期待しているのかとの米側の問い合わせに対して、中共外交部は実質上の結果は重要ではなく、面目を重視していると表明したという。このため、中共は胡の訪米前に人民元の切り上げを行い、駐ウィーン外交官によるイランでの核施設見学も断って、会談前の「友好」な雰囲気を作ろうとした。

しかし、中共の不意をつくかのように、AP通信が1月10日、昨年4月に行われた著名な人権弁護士であり「中国の良心」と呼ばれる高智晟氏への取材を公表した。内容は高氏が監禁期間受けた残酷な拷問に関するものである。その残酷さは、「言葉では形容できない」ものだ。取材詳細の暴露が遅れたのは、当時の高氏と約束を交わしていたためだ。即ち、本人がある一定期間行方不明であるか、あるいは米国のような「安全な地」に到着できてはじめて、この内容を公表することができるという取り決めだった。

高智晟氏の行方が再度分からなくなってからすでに9ヶ月経過したので、AP通信は今が公布の時期だと考えたのだろう。胡の訪米直前を公表の時期に選んだことから、米中両国政府がこれまでの人権迫害をどのように対処するか、胡主席とオバマ大統領の会談が「中国の良心」に及ぶかどうかに注目を集めようという明白な意図が伺える。

中共にとって、APの取材内容の公表は打撃になるだけでなく、国際社会に中共が残忍で「言行不一致」な本質を認識させることにもつながり、すでに堪えがたいイメージの植えつけられている中共にとって、さらにマイナス要素をもたらした。

胡主席にとって、訪米前夜この記事に遭遇したことは、無論バツが悪いに決まっている。どのようにこの厄介な問題を解決するか、国際社会はみな関心を持っている。以前中共の最高指導者が米国を訪問する前に、一、二人の異議者を釈放し、「好意を示す」のは特に珍しいことではなかった。実際、昨年、胡の訪米前、当局は1年あまり行方不明になっていた高智晟氏に対するAP通信の取材を許可した。当時、中国問題専門家の中には、法輪功を弁護する高智晟氏に対する外国媒体の取材が許されたのは、中共高層の内部闘争で胡総書記が優位に立っていること、法輪功を迫害する江沢民グループに打撃を加えようとしたいる、という推測もあった。しかし、胡主席も中共という同じ船の中で利益を共有しており、法輪功の問題を解決する勇気がどれだけあるのか、今回の高智晟氏の再度の非人道的な虐待の経緯を鑑みると、実に疑わしい。胡がどのようにAP通信の記事に対処するのか、再度高氏を公衆の視野に出すのか、あるいは高氏を釈放するのか、胡主席の中共党内の位置を判断する材料にもなるだろう。応対しなければ、自分自身が国際社会から批判され、蔑視の対象となるだろう。

一方、米国のオバマ大統領も人権組織や高氏の家族、支援者から圧力を受けている。ある民間団体は、米国内で10数万人の署名を集め、中共当局に高氏の釈放を呼びかけ、またオバマ政府に救援の手助けを求めている。

高智晟氏について、オバマ大統領は知らないわけがない。昨年10月、高氏の17歳の娘である耿格さんがオバマ大統領に手紙を送り、同年11月のG20トップ会議で胡錦涛と会談する際、自分の父の行方を尋ねるよう求めていた。

今月13日、アムネスティ-・インターナショナルは、フリーダムハウス、国境なき記者団などの8つの国際人権組織と共に、オバマ大統領に手紙を送って、胡主席の訪米の際、中国の人権状況に対する関心を伝えるよう求めている。ヒューマン・ライツ・ウォッチアジア区責任者のソフィー.リチャードソン氏は、「胡主席の訪米の際、オバマ政府が言論自由、法治及び政治犯の問題に米国が注目していることを公にすることが極めて重要であり、前回、中国での会談の際にとった控えめな対応は再びあってはならない」と語り、オバマ大統領がもしこの点を遂行できなければ自分の名声が損なわれるだろうと指摘した。

同じ13日、オバマ大統領はホワイトハウスで中国公民の権益と人権事業に携わっている5人の学者と活動家と面会した。あるホワイトハウスの職員は、「これはホワイトハウスが胡錦涛主席訪米のために準備している一部分だ」、「人権問題は話しにくいが、やはりスケジュールにいれなければならない、そうすればそれなりの効果を発揮できる」という共通認識があることを語った。

このホワイトハウス職員によると、オバマ大統領は胡主席と会談する際、必ず中国の人権問題を話題にするだろうが、AP通信の記事に反応し、わざわざ高智晟氏の名前を提起するかどうかは、オバマ政府の法輪功問題での立場にかかっているという。この選択はオバマ氏、米国政策決定者への良心に対する試練と言えよう。

実際、昨年の3月16日、米国下院で412票の賛成、1票の反対で第605号決議案が採択された。同案は、中国共産党に対して法輪功への弾圧を直ちに止め、監禁している全ての法輪功学習者を釈放することを要求するものである。同案はさらにオバマ大統領と米議員に対して、個人の修養のために公に迫害を受けている法輪功学習者のサイドに立ち、可能な手段で彼らに接見し、良知と自由を支持することが米国政府の基本原則であることを表明するよう求めている。

今までのところ、オバマ政府は法輪功の問題を回避する態度を取っているが、最終的に米国、中国、世界の人々の幸福のために正義の立場を選択することを心から望んでいる。最近アリゾナ州ツーソン銃撃事件追悼式典でのオバマ大統領の感動的な演説から、彼の心の声が聞こえたからだ。

「世界中の全ての悪を停止することはできないかもしれない。しかし、お互いをどう対処するかが、完全に私たち次第であることを私は知っている。完璧からはほど遠い私たちだが、私たちは皆、礼節をわきまえ、善意で心を満たしている。私たちをまとめようとする力は、私たちを引き裂こうとする力を押さえ込むだけの強さがある」

(翻訳編集・金本)