富士康、深セン市から撤退開始 中国産業構造に大きな課題

2010/07/06
更新: 2010/07/06

【大紀元日本7月6日】連続自殺事件で話題となった、電子機器受託生産(EMS)世界最大手の鴻海(ホンハイ)精密工業(台湾)の子会社であるフォックスコン(富士康科技)が、深セン市から撤退し始めた。7月1日、同社は主要生産ラインを河北省廊坊に移すと正式に発表した。中国国内最大の製造委託工場として、今回の内陸への移転は、中国の産業構造に大きな課題を残している。

同社の工場移転に関する噂は絶えなかったが、最近の大幅の賃上げが移転を実現させた。「中国史上最大の企業の自主的移転」と言われる今回の移転によって、生産量の7割を新工場がまかなうようになり、深セン工場は現在の40万人から10万人へと大幅に縮小される。

中国国内メディアの報道によると、6月に入って、移転の話が一気に進められ、中国各地で従業員を大量に採用し、河南省では10万人、武漢市では2.8万人と着々と準備を進めている。一方、深セン工場の新規採用は5月末をもって終了となった。

移転計画は6年前から既に始まったようだ。同社は既に華南、華東、華中、華北、東北部で12の工業団地を建設しており、12の事業群の研究開発基地が全国に分布している。ノートパソコンやゲーム機を生産する部門は、主要な機能を深セン市から山東省まで移し、上海などの新たな拠点を設置して、華北、華南、華東の三地連携による勢力拡張を見込んでいる。

しかし、何と言っても巨大な工場移転に様々な困難が伴っている。これを後押ししたのは最近の連続自殺事件による大幅な賃上げである。人件費の高騰は同社の移転を早まらせた。

6月30日、同社株の終値が5.11元と急落し、9ヶ月来の最低値を更新した。その前日、同社は商品価格の下落などで、今年の上半期が赤字増加の見込みと発表したばかり。モルガンスタンレーは同社の投資判断を「ホールド株」とし、目標価額を8.8元から4元に引き下げると発表した。同社のスポークスマンは移転によって人件費の削減を期待できると話している。

今年に入り、富士康に13人による連続自殺事件が発生し、従業員の待遇改善を迫られた同社は、賃金倍増の決定を出したが、各地で同社の賃金と足並みを揃えることを要求するストライキが急増。低賃金で支えられてきた中国の産業構造に大きな衝撃を与えている。

中国国内最大のOEM(製造委託工場)を誇る深セン市からの撤退について、深セン大学国際金融所所長国世平氏は、OEM企業の深セン市からの撤退は今後も避けられないことであり、深セン市が新しい産業のレベルアップをはかるためには必然的な結果であると、「中国証券報」でコメントしている。

80年代の_deng_小平よる改革開放政策を背景に、香港に接する深セン市は、特別経済区と指定され、急速な発展を果たした。近年、特別経済区での優遇政策によるメリットの減少や、土地コストと人件費の上昇で、低利益の労働密集型企業は不利な立場に置かれている。

「富士康の一連の事件は、中国の未来を書き直す」と、台湾ポラリス金融グループ副総裁の黄斉元氏は「中国証券報」に語っている。富士康事件は今後も波及していくことを指摘し、中国の産業構造の方向性という大きな課題を残したと言及する。

(翻訳編集:高遠)