60年の歴史を各々語る:『建国大業』は上映、『大江大海1949』は封殺=中国

2009/09/22
更新: 2009/09/22

【大紀元日本9月22日】共産党政権が中国での樹立60周年を迎える10月1日を前に、北京当局は記念式典の成功に向けて、無戦下での最高警備体制を起動しており、特訓警察、武装警察、刑事警察および120万人の市民警官による24時間パトロール体制を敷いている。北京市内の隅々まで網羅し、万全の治安対策だ。そのほか、政権を賛美するイデオロギー宣伝、異なる言論への統制も緊密に行われている。最近特に注目を集めたのは、1949年前後に共産党元老たちが政権を入手した歴史を謳歌する国営制作映画『建国大業』の上映と、1949年に共産党に負け国民党軍人たちとその家族が台湾に逃げる歴史の痛みを語る、台湾の著名作家・龍応台の新作『大江大海1949』の大陸での封殺である。

大陸ネットユーザー:「建国」と「大業」は、短命政権の象徴

映画『建国大業』は、60周年記念の特別贈呈作として中国映画業界を管理する国営機関「中映集団」が特別制作したもの。1945年から1949年、共産党の元老らが政権を樹立する歴史を謳歌し、共産党中国への愛国主義感情を強めることを狙いとした、お決まりのテーマだ。中国本土、香港、アメリカ国籍の著名な華人スターが揃っているにもかかわらず、制作費用は同類作品に比べ意外と低く、共産党政権の出演者に対する政治影響力が伺える。

9月16日、近年の国内作品の最高売り上げを狙い、全国各地で同時上映され、スターらの集客力もあって、高い観衆率を記録したとされる。しかし、中国のネットユーザーの間では、同映画は「短命な政権」の象徴ではないかと話題になっている。

「楊広は大業を望み、一甲子(60年)で何業を成したのか。王莽(おうもう)は新を建国し、60年後はだれの国家になってしまったのか」。ネット上で流行しているこの対句は、中国史上の二つの短命王朝、王莽と楊広の国号である「建国」と「大業」を使って、映画『建国大業』は、共産党政権の寿命は60年であると隠喩している。

王莽(おうもう)は、前漢の皇帝から政権を簒奪(さんだつ)し、「新」朝を設立。国号は「建国」。中国歴史上初めて皇帝から政権が奪い取られた。短い政権の後、農民の反乱などが続発し、反逆者に殺害された。「楊広」は、隋の第2代目の皇帝。中国史を代表する暴君。対内的には国都を築き、華北と江南を連結させる運河などを建設。対外的には国外遠征を積極的に実施。暴政のため民衆の反乱を招き、王莽同様、反逆者に殺された。

封殺された『大江大海1949』

映画『建国大業』の上映とは対照的に、9月初め、台湾で出版されたばかりの台湾の著名作家・龍応台の新作『大江大海1949』が、北京で封殺されることとなった。9月3日、中国の国営新華社が『大江大海1949』の出版ニュースを報じた矢先の11日、中国大陸の各ポータルサイトは、北京市ネット管理責任部門から、龍応台の文章をすべて削除するよう通達を受けたという。新華社9月3日のニュース報道もネット上から削除された。

龍氏は、現在、台湾の知識人や中国大陸の読者に最も影響力を及ぼしている人で、10年の取材を通して完成した『大江大海1949』は、1949年を分水嶺とする歴史を背景に、共産党に負けて台湾に逃げた人々が家族と別離や死別する悲しいストーリー。共産党政権60周年に向けてこの本を出版した理由は、「歴史上、これまで見えなかったものを、見えるようにしたい」という思いからだという。

「大陸の人が、台湾人がどのように傷ついたのかを理解できたら、初めて平和が実現されるだろう」と龍氏は語る。中国大陸の読者に見てほしいと願っていたが、北京当局がそれを封殺したことについては、「原因は分からないが、意外ではない」とコメントしている。

(報道・肖 シンリ)