中国の言論戦争

2006/02/27
更新: 2006/02/27

【大紀元日本2月27日】「銃から、政権が生まれる」、毛沢東のこの名言の現代版は、権力は、ペンから、あるいは、キーボードから生まれると言える。40年代の中国では、毛沢東が共産党反逆軍をリードして、ゲリラ戦術で国民党の軍隊を打ち破ったが、現在の中国では、記者とブログ作家、反体制者が世界最大の情報検閲機構―中国共産党の中央宣伝部と対抗するゲリラ戦争を起こしている。

英紙ガーディアン20日付けの「中国の言論戦争」によると、メディア戦争は、中国では目新しいことではなく、中国における優秀な記者たちが20年来絶え間なくひっそりと言論自由の境界線を推進し続けてきた。しかし、最近の「氷点」週刊廃刊事件はこの戦争を公にさせ、国際化しているという。「氷点」週刊が廃刊され、主要編集者が解任された後、中国における一部の自由主義者が力を合わせて、新しい技術と1989年の天安門事件以来の大胆さで中共宣伝部に反撃し始めた。

「氷点」週刊廃刊事件で解任された編集長の李大同氏は、中共宣伝部とゲリラ戦争を行った第一人者として見られている。彼のほか、「公益時報」の編集長・陳傑人も、個人的な問題で解雇されたことを主張し、インターネットで中共当局を抗議する活動をスタートした。

従来の懲罰を受けるのではなく、今回の打撃された者の反撃に中共が驚いている。更に、中共が警戒しているのは、それらの人へエールを送った支持者の背景である。毛沢東の前秘書、中共宣伝部前部長、人民日報前編集長など含めて13人の中共元長老幹部は、中共宣伝部が「氷点」停刊の命令を出した後、中共上層部あてに公開書簡を出し、「氷点」週刊の復刊を要求した。公開書簡の中、中共元長老らが、「歴史はこう証明している、メディアの管制を必要とし、大衆から永遠に真相を隠そうとし、愚民政策を貫徹し、『独断』がいつまでも保たれるよう図るのは独裁体制以外にない」と中共の言論規制を猛烈に批判した。 保守派であるはずの彼らが、「氷点」週刊の停刊事件について、「中国メディア界を長年支配してきた悪質な管理制度の集中的な表れである。これは中国メディア界の重大かつ歴史的な事件である」と現体制を批判したのである。

「中国メディア界の重大かつ歴史的な事件である」という彼らの見解は、今の内外の中共政権に対する普遍的な不満の背景を考えると非常に適切であろう。公開書簡の発表は、ちょうど米議会でグーグルやヤフー、マイクロソフト社、シスコ社が、中共政権の言論検閲に協力したことにより議会で批判されている時期と軌を一にしているのは単なる偶然ではない。

しかし、こういう変化をもたらした力は、政治よりは科学技術の発展であるようだ。ガーディアンの取材に応じ、ネット検閲の責任者のある中共幹部は、「インターネットは世論に大きい影響を与えている。インターネットから情報を得る人は、社会で活躍している存在であり、80%のネット使用者は、35歳以下である。その重要性を考えて、政府がますますインターネットを重視している」と語った。この幹部が、インターネットの掲示板での発言は、共産党に対するコメントはほとんどすべてが不満であると認めており、科学技術の進歩で広がりつつある世論を共産党は絶対無視してはいけないという。

中国の一億のインターネット使用者は、一見すると、政治に無関心のように思える。しかし、インターネットで共産党の腐敗、司法の不公正、情報規制などについて批判する文章が山ほど多い。インターネットでの言論発表において、新聞記者はアクティブで影響力のある存在。「氷点」の停刊に関して、多くの記者が非常に怒りを感じたという。ある「氷点」の前編集者によると、十年前と比べて、記者の態度は大きな変化が見えた。共産党は常に社会大衆の立場に立つと主張しているが、記者と編集者の多くは再びと共産党を信じることはしないという。

胡錦濤国家主席が就任した時、人々の多くは、中共の言論に対する規制が緩和するだろうと期待した。最初は、確かに兆しがよかった。ちょうとその年はSARSの危機があった。記者らがより多くの報道自由があり、SARSの隠蔽などを大々的に報道し、それにより、衛生部部長と北京市長の解任に至った。

しかし、その夏、前国家主席の江沢民が政治局に手紙を出し、メディアが制御しきれないほど行き過ぎていると警告、中共政権はメディアに対し長期にわたり規制した。著名な記者らが逮捕され、印刷物が停刊、ウェブサイトとブログが相次いで閉鎖された。インターネットカッフェでは使用者に対して登録が強要され、訪問したサイトも監視された。新しいフィルターリングソフトが開発され、ダライ・ラマ、台湾独立あるいは法輪功などの言葉を検索するとそれらの言葉のポジティブに言及する情報へのアクセスが、「精神上不純」の口実で禁止されるようになった。

また、報道によると、3万人以上もいるインターネット警察が、ウェブサイトとチャットルームを一斉検閲したが、反中共言論と反体制言論を即時に削除する作業をしているという。外国のインターネット大手企業も誘惑され、この歴史上最大の情報検閲に入った。中国でビジネスできるように、MS社が、自分の提供しているMSNブログサービスに、民主などの言葉の使用を制限した。グーグル社が1月に、「天安門虐殺」という言葉に対する検索の結果を制限した。ヤフーが、使用者の個人情報を中共当局に提供したことで、二人のインターネット反体制者の逮捕と判決に至った。

しかし、中共中央宣伝部が精密の検閲システムと西側インターネット大手企業の協力で絶え間なく反体制言論をする人々と記者らを弾圧しているにも関わらず、最終的にこの言論の戦争に負けた。その原因は、一つは使用者がプロキシサーバーと代替する言葉を使って検閲を避ける方法を使っている、もう一つは、インターネットの情報は膨大であり、ネット警察が3万人いたとしても、何十億のウェブサイト、一億のネット使用者などを規制しきれるものではない。

過去の三年間に、多くの記者が、中央政権から、地方政府の腐敗、汚染と産業の安全問題に対する暴露を推奨していると感じた。コントロールできない地方政府から信用できる情報さえも得ることができず、法令の執行はさらに不可能。孤立した中共中央政権は、どん欲な地方政府を一所懸命抑制しようと必死なのである。

しかし、新聞記者が暴露した全てのスキャンダルは、共産党政権に泥を塗っている。メディアは、依然当局がコントロールしているが、記者らはもはや共産党政権から離れた。共産党は現在、言論のゲリラ戦争などの厄介な結果を報じられ、それに対する弾圧から、指導者らがこの戦争が実際に存在していることを理解しているということだ。メディア監視組織・国境なき記者団の発表によると、中共政権下、記者32人とインターネットで活動する反体制者81人が監禁されているという。

今の段階では、共産党政権はまだ優勢に立っているように見えるが、この2週間で、中国の未来に影響する、または中国の過去に影響を与えた、最も力のある世論を形成する者たちがつながった。「氷点」停刊事件の中、ウェブサイト上で、言論を発表する怒りの青年たちと中共の元長老たちが共に力を合わせて中共政権の意識中枢である中央宣伝部に対して発砲したのである。

中央宣伝部は海外からの圧力にもさらされた。2月15日の米議会証人喚問会で、米インターネット大手企業が中共の言論制限に協力したことで厳しく批判された。

若いインターネット使用者たち、年よりの中共保守派ら、または米議会の議員に囲まれ、中共政権は現在、守勢に落ちた。国務院新聞事務室ネット局の責任者・劉正栄氏は14日、「中国ではいままでインターネットで言論発表により逮捕された人がいない」ともはや誰も信じない発言をしたのである。

同時に、中央宣伝部が、「氷点」週刊の停刊命令を撤回し、復刊を発表した。ところが、前編集責任の解任と復刊での自己反省を条件として付けたため、さらなる反発を招き、保守派の趙勇・中共青年団中央書記の左遷でバランスを二人の解任とバランスを取ろうとした。

それについて、前編集長の李大同は、氷点の復刊は、「ペテン」であり、たとえ復刊されても「氷点」の魂は失われ、抜け殻しか残っていないと批判した。