【大紀元日本12月27日】G20会合が10月16日に幕を閉じた。人々が予想したような、米国が中国に対して人民元切り上げの圧力をかける局面は見られなかったが、米国のスノー財務長官が提起した「六字の真言」は、却って広く報道された。それは、「少貯蓄、多消費」であり、これをもって内需を刺激することであった。
中国の経済学者は、これを聞いて憂鬱になっている。「我々は、こんな簡単な道理さえも理解しないで、外国人に指摘されてしまったのではあるまいか?この7、8年の間、我々は、政府に対して民衆の貯蓄を減らし、消費を増やすことを提案したことがあったのだろうか。西洋の僧侶が唱えたものこそが真の経典だったのではあるまいか?」
筆者は、むしろ中国の経済学界に対し、実に不満を感じている。10年余り前に、中国都市・農村住民の貯蓄が3兆5000億元を超えて以来、政府のブレインや多くの経済学者は、そろって民衆の財布に目を着け、ここからお金を引き出し、内需を刺激することで、久しく疲弊した市場を盛り返すことを考えた。過剰な対外依存度が一国の経済に極めて危険なことは誰の目にも明らかなことであり、中国における純輸出のGDP成長率に対する寄与度が既に37%に達していることについては、いうまでもないことである。中国の貿易依存度は既に80%に達しており、他の先進国や発展途上国の水準を大きく上回っており、世界の中で貿易依存度が最も高い国家となっている。こうした状況においては、内需を刺激することこそが、経済発展のための長期の計である。
90年代中垣xun_ネ来、民衆の懐からお金を引き出すため、中国は、様々な「改革」を不断に実施し、もともと政府の民衆に対する借りであった福利を改革の対象とした。ここで説明しておかなければならないことは、中国人の賃金は、改革前及び80年代に比べても低くなっているということである。その理由として、この賃金には、食事、簡単な衣類及び生活用品といった生活費のみが含まれ、住居費、医療費、年金費、教育費は、すべて賃金には含まれていない。これらは、労働単位からの福利の分配として労働者に支給されるもので、政府の民衆に対する借りに等しいものであった。計画経済のもとでの高貯蓄は、こうして蓄積されてきたのである。しかし、一旦住居費、医療費、年金費、教育費のすべてが「改革」の対象となると、民衆は、お金を持ち出してこれらを再度「購買」せざるを得なくなる。この行動は、次の二つの効果をもたらした。
第一の効果として、中国民衆の懐のお金が、これらの「改革」の中で、次第に消耗されていった。自身の消費について、中国の民衆は質素倹約に努めている。このため、多くの人が病気を診ようせず、病気によって家が貧しくなった家庭は、各地方で数多く見られるところである。住居が多少劣っても気にならないが、子供の教育だけはいい加減にはできない。しかし、中国政府が1999年以来推進してきたのは、「教育の産業化」政策であり、これによって、高等教育の費用が、毎年30%以上のペースで上昇していった。このため、中国の中等収入クラスの家庭は、有り金をはたいて、何とか子供一人の大学進学費用を捻出しているのである。貧困家庭の子供が、進学するお金がないことに絶望して自殺するニュースや、親が、子供の学費を負担できないために自殺するニュースは、よく聞かれることである。「教育の産業化」は、最終的には、教育の利益集団だけが受益者となり、国として屈辱的な改革となった。巨大な道徳的圧力の下、政府に「教育の産業化」策を献じた経済学者・湯敏氏は、昨年より、外部に対し、自分は決して「教育産業化の父」ではないと弁解に努めている。
第二の効果として、民衆が、将来の生活の予想について危機感を抱き、貯蓄の比率を高めた。この数年来、中国の民衆が貯蓄を好む理由を明らかにするため、国家統計局及び各省直轄市の調査チームが、常に調査を行っているが、その結果は驚くほど重複している。貯蓄の目的の第一位は、子供の教育費用で、自らの年金、医療等の不時の需要は後の方にランクされている。こうした状況の下、高等学校や病院以外に、どんな種類の消費が、民衆の懐にあるわずかばかりのお金を引き出すことができるというのだろうか?
しかし、最も重要な問題はここではない。人口の80%を占める一般の民衆の懐には、いくらのお金があるのだろうか?最新の数字によると、中国民衆の貯蓄は、既に13兆3700億元に達している。人口が13億であるとすると、1人当たり1万元となる。この天文学的な数字の貯蓄を目の当たりにすれば、前借り消費を好む米国から来たスノー長官が、中国の民衆は多消費、少貯蓄であるべきと考えるのは自然なことである。しかし、問題は、この巨額の貯蓄のうち、どれだけが、一介の貧民に属しているのかということである。
中国経済を研究する者にとって、次の数字は見慣れたものである。中国の金融資産分布は、極めて不平等であり、最新の調査数字によると、最高収入グループが占有する金融資産は66・4%であり、最低収入グループが占有しているのはわずかに1・3%、両者の比率は51:1である。最も強い実力を持つ最高収入グループの消費は既に奢侈の域に達しており、その子女の留学に係る巨額の支出は他国に流れ、本国の内需とは関係がない。
中国の民衆は守銭奴ではなく、お金があれば、誰でもよい生活をしたいと考えるものである。現在の消費をできるだけ抑え、貯蓄を増やす資産モデルは、完全に時勢に迫られてのことである。こうした状況の下、中国メディアが、スノー長官による六字の真言をいくら宣伝しても、民衆に「多消費、少貯蓄」をさせ、もっと「内需を刺激」することはできない。
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