凌鋒インタビュー:反日デモをコントロールし、危機の転嫁をはかる中共

2005/04/17
更新: 2005/04/17

【大紀元4月10日】(大紀元記者辛菲報道)成都、深圳等の地で反日デモ活動、日本商店への攻撃が展開されたのに引き続き、4月9日午前、北京において大規模な反日デモが行われた。ある抗議者は、日本大使館に向けて投石を行った。大紀元記者辛菲は4月10日、この事件について、著名な政治評論家である凌鋒にインタビューを行った。凌鋒は、今回のデモは中共当局がコントロールしたものであり、中共が直面している国際的・国内的圧力の転嫁をはかったものであるという。

中共が背後でコントロール 反日感情を煽動

記者:凌鋒先生、こんにちは。中国大陸における反日デモについて、政府がコントロールしたものであると言う人も一部にいますが、どうお考えになりますか?

凌鋒:私は、これは政府がコントロールしたものであると考えます。中国では、どんなデモでも政府の許可が必要です。許可が得られなかったとすれば、どうして一万人を超える人があれだけ大規模なデモを行い、あれだけ多くの横断幕を掲げることができ、かつ政府が逮捕しようとしなかったのでしょうか?法輪功の学習者が天安門広場で横断幕を開くとすぐに警察に逮捕されました。どうして1万人余りの人がデモを行ったのに誰も構わなかったのでしょうか。政府の支持なくして誰が支持したというのでしょうか?

また、私はネット上、憤青(憤怒した青年)だけでなく、私服を着た公安が民衆に扮してデモに参加していたという文章を見ました。政府はこの問題を完全に知っていた上、これを阻止することを全くしませんでした。

記者:国内で趙紫陽の追悼があった頃、一部の人がデモを申請しましたが、結果として逮捕されました;葉国柱もまた、デモを申請して刑が下されました。こうしたデモが弾圧されるケースは非常に多くあります。

凌鋒:さらに言うと、以前の人数は多いとはいえませんでしたが、今回は1万人に上りました。政府が仕掛けたのでなくして、どうして実現可能だったのでしょうか?

中共は目線をそらすこと、国際的、国内的圧力の緩和を意図

記者:中共がこうした行為を行う背景にどのような目的や意図があるのでしょうか。ある人は圧力の緩和、目線をそらすことであると言っておりますが?

凌鋒:そのとおりです。ここには、国際的・国内的な要因があります。国際的には、国連が最近報告書を出し、その報告書において改革を求めましたが、大きな論点が2つありした:一つが安保理の拡大で、日本等の国の参加を求めるものでした。もう一つには、人権の重視をさらに進め、反人権的な国家を人権委員会に入れないという内容が含まれていました。中共はこれを非常に憂慮し、日本の安保理加入などの問題を捉えて国連の改革をつぶし、自らの人権等の問題を隠蔽しようとしたのです。

国内的には、政治経済の危機が非常に深刻になっています。経済は危機をはらんでおり、マクロ調整は順調に進まず、原材料の上昇などでコストが増加し、輸出競争力が弱まり、一部の企業が倒産して失業人口が増える可能性があります。銀行もまた意欲に欠け、多くの銀行の高級官僚が巨額の資金を持ち逃げしており、その額は、ともすれば数億元の規模になっています。また、海外に上場して金銭の囲い込みをする作業も遅れています。

政治については、昨年末から今年にかけての話として、一つが趙紫陽の問題で、もう一つが大紀元の《九評共産党》と、これが惹起した共産党脱退の大きな潮流で、これらは共産党を非常に困惑させています。彼らは困惑していますが、反撃をすることはできません。一度反撃をすれば、趙紫陽の不当な扱い、六四(天安門事件)の真相を知られてしまうからです。《九評共産党》に対しては、なおのこと反撃、批判ができません。一度批判をすれば、皆がこの話を知ってしまい、その宣伝の手助けをすることになるからです。共産党脱退についても口に出せません。一度提起すれば、皆がこう問いかけるでしょう:どうしてこの問題を論ずるのですか?党を脱退する人が増えたのですか? だから、中共は鬱憤を腹に呑み込むだけで、その苦しみを口に出すことができないのです。

こうした状況の下で、彼らは必ず、事件を見つけ出してきて人々の注意力、目線をそらす必要があります。

アメリカを攻撃するのはとてもできないし、台湾を攻撃するのは容易ではありません。だから日本に狙いを定め、日本の中国侵略に対する感情を利用したのです。目線をそらす上で、日本は最も適した目標でした。日本には歴史的・政治的原因があるほか、日本の憲法は不戦憲法で、軍備が防衛的なので、反日感情を作り出すリスクが低かったのです。

中国人は中共に反対するデモを行うべき

記者:中共はこうすることによって目的を達成することができるのでしょうか?

凌鋒:それは非常に難しい。日本の安保理常任理事国入りを阻止したいと考えても非常に難しい。世界の大多数の国は、日本に対して特別な反感を持っていません。シンガポールのある学者は、アジアの国家でさえ日本の影響力を増すことによって中国の影響を相殺することを希望しています。

だから、日本の問題について、何の文章も書けず、ただ一部の中国人を騙すことしかできないのです。教科書検定の問題について、日本の教科書は民間が出版するもので、非常に多くのバージョンがあります。今回は、2つの教科書が日本の中国侵略に関する歴史について記述のトーンを抑え、隠蔽をしました。しかし、日本の教科書は非常に種類が多く、他の教科書も選択肢として提供されています。なぜなら、日本は言論の自由がある国家だからです。

しかし、中国の教科書を考えてみてください。日本よりもっとひどく、もっと歴史を歪曲しています。例えば、抗日戦争はもともと国民党が戦ったものですが、共産党は自分が戦ったと言っています。大躍進で数千万人が亡くなったこと、六四大虐殺(天安門事件)、法輪功の弾圧等々の話が教科書に載っていますか?彼らの歪曲のほうがよりひどく、学校には他の選択肢はありません。中共政府の教科書しかないのです。

教科書をコントロールし、改ざんすることについて、共産党は全世界でもっともひどいことをしています。現在彼らは情報を封鎖して民衆を愚弄しています。情報が一度明らかにされれば、人々は直ちに共産党の教科書が最も荒唐無稽で、最もひどいものであることを知るでしょう。

この点からすれば、中国人民は、中共に反対するデモを行うべきなのです。

デモは現在1万人に上ったところですが、もし、人数が継続的に増加して10万人になり、日本企業に火を放ち、こうしたことを繰り返せば外資は必ず撤退しようとするでしょう。外資が撤退すれば、中国経済は直ちに崩壊します。

大衆運動は諸刃の剣 中共は自業自得を恐れる

記者:では、中共は自業自得ではないでしょうか?

凌鋒:そのとおりです。共産党がやっているのは大衆の運動ではなく、大衆を運動させているのです。さらに、一定の節度を保とうとし、自分の目的を達成しようとはしますが、自分の利益に損害が及び、利益を少しでも上回る状態になれば、今度はかえって弾圧を行うのです。

記者:中共はデモを制限する通知を出したとのことですが、これをどう考えますか?

凌鋒:1万人に上ったデモの一部は日本に対してであり、一部は共産党に対してであり、状況は非常に複雑です。煽動が一定の段階に達して共産党がコントロールできなくなったとき、自分に被害が及ぶのです。1989年、東欧における他の共産主義国家が平和的転換を遂げる中、ルーマニアのチャウシェスクが民衆大会を開きました。民衆は当初彼を支持していましたが、大会の途中で突然反対の声が上がり、彼は無残に殺害されました。

共産党もこれを恐れています。人が増え、武装警察がコントロールできなくなったとき、彼ら自身が滅びるのです。

記者:民族主義は諸刃の剣のように見えます。大衆が煽動されることについて、どのような原因があると考えますか?

凌鋒:本当に反日感情があるのは一般に中高年です。若者は、ただ発散しているだけです。なぜなら、あらゆる政治活動において、リスクが無いのはこの活動だけだからです。他の政治活動をすれば共産党に逮捕されるでしょう。これだけは逮捕されず、ひいてはメリットを享受することができるのです。

一つが発散、一つがメリットの享受、そしてもう一つが反政府的で、中に入り込んでいて運動をコントロールさせない可能性があり、状況は非常に複雑になります。さらに、中国企業があります。日本企業と競争している企業は、この機会を利用して抵制日貨を行い、自分の製品を売り出すことができます。状況は相当に複雑で、共産党自身もその事情を知っています。本当に愛国的な運動であれば、規模が100万人でも恐れる必要はありませんから、コントロールする必要があるのでしょうか?

愛国主義の検討と反日感情の由来

記者:共産党はずっと反米、反日感情を植え付けていますが、どんな目的があると考えますか?

凌鋒:それは主にイデオロギーの問題です。なぜなら、アメリカ等西側の国家には民主・自由・人権・法治の理念がありますが、中国は必ず独裁を唱える必要があり、独裁を宣伝するために、必ず西側国家のことが一文にも値しないとする必要があるからです。特にアメリカは、他の西側国家よりも中国が民主・平和の道を歩むことを希望しており、即ち中共に平和的転換を求めます。それは、中共にとって最も危険なのです。だから反米感情を煽動することが必ず必要になるのです。

以前、政府は反日感情をあまり煽動していませんでした。民間の反日感情を彼らが抑える必要がありました。日本はこれまで、中国の人権状況について何の要求もしたことがなく、中国の機嫌をとって中国と商売をすることを求めてきました。アメリカや一部の西側国家が中国を批判するのとは異なり、日本が中国を批判することはありませんでした。しかし、中国は現在軍備拡大を進めており、かつて、日本が経済発展のためのエネルギーを掠奪するために戦争を発動すると言ってきたものが中共自身にあてはまるようになりました。拡大して海に出る時、中国がまず突き当たるのは日本と台湾です。これら関門を突破するためには、反日・反台湾感情を作り出して拡大を合理化する理由にする必要があります。

記者:共産党は極端な民族主義や愛国主義を煽動することを常用手段としています。異論者が国家政権の転覆、国を愛さないことを煽動していると指摘したり、外国政府が共産党の人権問題を指摘すれば、それは内政干渉であると言います。民衆非常に容易に乗せられて血がのぼります。

凌鋒:血がのぼるということについて、一部は本当で、一部はうそです。反米、反日を叫ぶことはコストが最も低く、リスクがありませんし、メリットを享受することも可能です。 愛国なんて、戦場に行かせてみてよ、行くはずがないよ、前線には行かないはずだ。

反米第一ですが、アメリカへ行く申請をするのも第一です。抵制日貨といっても、家では日本の家電機器を使用していないのでしょうか?共産党に教育された中国人の多くがダブルスタンダードなのです。

中共にとって、こうした行為を行うことにはリスクがあります。民族主義を行う度が過ぎれば、直ちに自分へと矛先が向かってくるのです。だから、今回の大規模デモについてもそれほど緊張しすぎる必要はありませんが、必ず真相を明らかにすべきです。アメリカ人はよく緊張します、中国の民族主義が一度発作を起こすと、自らその原因、なぜ自分をかくのごとく見なすのかを調べようとします。中共を真に知っているのは日本人です。日本人の情報工作がうまくいっており、また中共とのつきあいが長いので、日本政府は抗議をするでしょうが、特に緊張はしません。彼らは共産党が今回の事件を仕掛けたことを知っているからです。

民衆の覚醒が必要 共産党脱退こそが希望

記者:ここにも、愛国イコール愛中共という概念の混同があります。

凌鋒:共産党はいつも自分が13億の人民を代表していると言います。民衆もまた彼らに代表の地位を与えてもいいとすれば、どうしようもありません。民衆が無知蒙昧で忍耐力が強いので、共産党は統治を維持できているのです。中国の民衆が政権打倒に立ち上がることは必ずしも必要なく、共産党に協力しないというだけでよいのです。

記者:国内の民衆がとてもかわいそうです。長期にわたって愚弄され、本当の情報を得ることができません。だから真実がわかっている人がともに努力しなければなりません。

凌鋒:そのとおりですが、大きな代償を支払う必要があります。私自身もそれを経験してきました。私は文化大革命を経て初めて共産党を徹底的に知りました。あの時期に非常に大きな代償が支払われ、ひいては数千万人の生命が失われました。文革では、ほぼ全ての家庭がひどい目に遭いました。80年代初期、過去が誤っていたことが知られ、思想が活発になりましたが、再び反ブルジョア自由化運動が始まり、民衆は再び真実をごまかしされるようになりました。将来において中国人を覚醒させるためには、再びもう一つの文革が必要かどうかわかりません。

記者:そうならないことを願っています。あまりに悲惨すぎます。現在、民衆は絶えず覚醒しており、共産党脱退者数が激増しています。脱党というのは、非常に平和的、理性的なよい方法です。

凌鋒:そのとおりです。脱党は非常に良い方法です。即ち、皆が共産党から離れ、共産党を捨てるのです。