中国製太陽光パネルに人権・経済安保リスク ウイグル問題に対する欧米と日本の対応に違い

2026/09/28
更新: 2026/09/28

脱炭素化の切り札として世界的に導入が進む太陽光発電を巡り、中国に集中するサプライチェーンが人権問題や経済安全保障上のリスクを抱えているとの指摘が出ている。9月27日に東京・飯田橋で開かれた日本ウイグル協会主催の講演会で、平井宏治氏は、中国共産党によるウイグル族への人権弾圧と太陽光パネル産業との関係を取り上げ、「人権問題は単なる道義的課題ではなく、今や国家の経済安全保障に直結する最大級のリスクである」と警鐘を鳴らした。

世界では電力需要の増加と脱炭素政策を背景に再生可能エネルギーの導入が拡大している。新規導入される約800GWの再生可能エネルギーのうち、75%以上に当たる600GW超を太陽光発電が占める。

一方、太陽光パネルの供給網は中国に大きく依存している。ポリシリコン、ウェハ、セル、モジュールなどサプライチェーン全体の約85%を中国が占め、ウェハでは95%に達する。中国企業は世界需要の約2倍に相当する生産能力を背景に、低価格製品を世界市場に供給している。

平井氏は、その低価格を支える生産構造について、環境負荷と人権問題の両面から検証する必要があると指摘。発電時のCO2排出量だけではなく、製造から廃棄までを含むライフサイクル評価(LCA)や労働環境を踏まえて「クリーン」であるかを判断する必要があるとの考えを示した。

太陽光パネルの原材料となるポリシリコンやウェハの製造には大量の電力を必要とする。ウイグル自治区などの工場では、安価な石炭火力発電による電力が多く用いられており、製造段階では多量のCO2や温室効果ガスが排出されているという。

また最終的な組み立てがベトナムなど第三国で行われた製品についても、原材料や部材を上流まで遡れば、中国本土やウイグル自治区で生産された素材に行き着く場合がある。

講演では、ウイグル自治区で行われているとされる「労働移転」についても取り上げた。

現地では顔認証カメラや生体情報の収集、検問、移動制限などの監視体制が敷かれ、収容施設での思想教育を経た上で、行政管理による大規模な労働移転が行われているという。2023年1~9月には約305万件の労働移転が記録されたとしている。

こうした制度について、自発的な同意の欠如や、労働を拒否した場合の処罰・収容への恐れ、監視、移動制限など、国際労働機関(ILO)が示す強制労働の指標に複数該当する疑いがあると指摘した。

さらに、党、行政、治安、軍事、企業活動の機能が一体となった新疆生産建設兵団(XPCC)が地域経済で大きな役割を担っており、ダゴ(Daqo)、イースト・ホープ(East Hope)、GCLなど大手ポリシリコンメーカーもこうした産業構造に関わっていると説明した。

欧米では、人権問題を通商政策や産業政策と結び付けた対応が進んでいる。

米国では「ウイグル強制労働防止法(UFLPA)」に基づき、ウイグル自治区由来の製品や指定企業が関係する製品について、輸入者が強制労働によらないことを証明しない限り、原則として税関で輸入を差し止める仕組みを採用している。

米税関・国境取締局(CBP)は2023年だけで4029件、約14億2千万ドル相当の貨物を差し止めた。自動車大手フォルクスワーゲンの車両輸入が停止された事例もあるという。

米国は同時に、中国製ウェハやポリシリコンなどに50%の関税を課す一方、国内製造能力の強化や同盟国からの調達拡大を進めている。平井氏は米国の政策を、輸入を止め、国内で作り、調達先を分散するという3本柱であると説明している。

欧州連合(EU)でも、強制労働によって製造された製品について、EU市場での販売やEUからの輸出を禁止する規則が導入されている。対象は特定地域や特定品目に限らず、企業にはサプライチェーンの追跡可能性確保や人権デューデリジェンスが求められる。

これに対し、日本では2022年に「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定され、公共調達でも人権への配慮が始まっているものの、法的拘束力を持つ規制ではなく、ガイドラインや努力義務を中心とした対応にとどまっている。

米国のように税関段階で強制労働に関係する製品を差し止める制度がないことから、欧米市場で排除された低価格のパネルや部材が日本へ流入する可能性も課題として挙げられた。

平井氏は、日本の対応として、強制労働に関係する製品を税関で差し止める「日本版ウイグル強制労働防止法」の制定、原材料段階まで遡るサプライチェーンのトレーサビリティー確保、再生可能エネルギー政策と人権・経済安全保障政策の一体化が必要だと提言した。

特に、最終組み立て国だけを見るのではなく、ポリシリコンやウェハといった上流工程まで調達経路を追跡し、人権リスクや環境負荷を把握できる体制を企業側に求める必要があるとした。

また、FIT・FIP制度や公共調達の条件に人権への配慮とサプライチェーンの安全保障を組み込み、特定国への過度な依存を減らし、国内製造基盤や同盟国との調達網を構築する必要性を強調した。

太陽光発電を含むエネルギー転換を巡っては、発電時のCO2削減だけでなく、製造工程での環境負荷、人権問題、供給網の安定性を含めた評価が課題となっている。平井氏は、日本政府と企業に対し、国際的な規制の動きを踏まえた法制度の整備と、サプライチェーンの透明性確保を求めた。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。