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中共が推し進める民族根絶政策 ウイグルの子供たちがターゲット 

2025/08/18
更新: 2025/08/18

中国共産党(以下、中共)政権下で、歴史上最大規模ともいえる子供たちの大量拘束と強制同化作戦が進行している。その主たる標的は、東トルキスタン(中国名:新疆ウイグル自治区)に住むウイグル人やカザフ人といったテュルク系ムスリム民族の子供たちである。これは単なる教育政策ではない。一つの民族の未来を根絶やしにすることを目的とした、冷徹かつ計画的なジェノサイド(集団殺害)の一環なのだ。

日本ウイグル協会は7月30日、「中国によるウイグル人児童の大量拘束と強制同化」(米国コーネル大学のマグヌス・フィスケショー准教授とカナダの独立系研究者ルキエ・トゥルドシュ氏が共著)という報告書を出し、東トルキスタン地区(新疆ウイグル自治区)で行われている中共による同化政策の犠牲となっている子供たちの惨状を告発した。

 なぜ子供が標的なのか 入植植民地主義と民族抹消の論理

この非人道的な政策の背景には、中国の長年にわたる帝国主義的な入植植民地政策がある。18世紀に清朝に征服された東トルキスタンは、中国語で「新たな辺境」を意味する「新疆」と名付けられた。1949年に中共が政権を握ると、彼らはかつての帝国の領土をすべて自国領と宣言し、東トルキスタンを武力で併合した。

以来、中共は形式的な「民族自治」を掲げつつ、大量の漢民族入植者を送り込み、石油などの豊富な資源を収奪した。ウイグル人は先祖から住み続けてきた土地で少数派となり、経済的にも文化的にも搾取される構造が固定化されていった。

そして2017年、この植民地支配は新たな段階に入った。中共は「テロ対策」を名目に、ウイグル人に対する大規模な弾圧を開始した。最新の監視技術で人々を常時監視し、最大で180万人もの人々を「再教育」という名の強制収容所に送り込んだ。そこでは母国語や宗教は禁じられ、拷問や思想教育によって民族的アイデンティティが徹底的に破壊される。ある収容所の幹部は収容者に対し、こう言い放ったという。

「我々はお前たちを最大 50 年間ここに留めるつもりだ。カザフ人、ウイグル人、その 他すべてのムスリム民族が消えるまでだ。上からの文書に基づいて行動している。中央委員会から来たものであり、誰にも変更できない。現在の体制は、君や君の子、孫がすべて中国人になって初めて変わるだろう」

このジェノサイド政策において、子供たちは特別な標的とされている。なぜなら、子供こそが民族の未来そのものであるからだ。ウイグル文化において、子供は「幸福の源」「家族の柱」であり、民族の継続と発展を象徴する存在だ。ことわざに「子供がいる家は市場のように賑やか、いない家は墓場のように寂しい」とあるように、子供の存在は家庭と社会の生命力そのものと見なされている。

中共は、この民族の生命線である子供たちを親から引き離し、ウイグル人としてのルーツを断ち切ることで、ウイグル民族そのものを未来永劫にわたって消滅させようと目論んでいる。それは、国連のジェノサイド条約が明確に禁じる「集団の子を他の集団に強制的に移す行為」に他ならない。

地獄と化した「学校」 引き裂かれる家族

2017年以降、ウイグルの子供たちの日常は一変した。親が収容所に送られた子供はもちろんのこと、親が拘束されていない家庭の子供までもが、次々と寄宿学校や孤児院といった名の収容施設に送られるようになった。その数はすでに100万人を超えると推定している。

これらの施設は、教育機関というよりは刑務所に近い。生後数か月の乳児から十代の少年少女までが、家族から強制的に隔離される。兄弟姉妹は引き離され、ウイグル語を話せば罰せられる。ある証言によれば、一つのベッドに3人から4人の子供が詰め込まれ、劣悪な環境で生活しているという。

その実態は、被害者の痛ましい証言によって少しずつ明らかになっている。

収容所の生存者であるメヒルグル・トゥルスンさんは、生後2か月の三つ子と共に拘束された時の悲劇を語る。彼女は子供たちから引き離され、3か月後に再会した時、三つ子の一人はすでに亡くなっていた。病院で喉に穴を開けられ、無理やり栄養を注入しようとしたことが原因だと彼女は考えている。生き残った二人の子供も、心と体に深い傷を負ったままだ。

オランダ国籍の夫を持つエルクト・オトゥケンさんも、生後4か月の我が子が母親から引き離された経験を証言する。彼の妻が拘束されたことで、赤ん坊は母乳を絶たれた。健康だった息子は衰弱し、母親が解放された後も、彼女は拘束中のトラウマで母乳が出なくなってしまったという。

身体的・心理的虐待の日常

子供たちの施設では、子供たちが殴打されたり拷問されたりすることは日常茶飯事だという。カザフスタンに住むサリヘ・Aさんは、「孫たちの顔には多くのあざがあり、彼らは泣くだけで話さなかった」ビデオと通話で孫に再会した時の衝撃を語っている。親族と面会できても、子供たちは報復を恐れて何も語れないのだ。

元収容者のズムレット・ダウトさんは、息子が中国人教師から激しい身体的虐待を受けたが、抗議すれば逮捕されると脅され、沈黙するしかなかったと涙ながらに訴える。

心を閉ざした子供たち

最も衝撃的な証言の一つが、トルコに救出されたアイスちゃん(当時6歳)とルトフッラちゃん(当時4歳)の姉弟の物語である。両親が拘束された後、二人は別々の施設に20か月間収容された。そこではウイグル語も、少し話せたトルコ語も禁止され、違反すれば「バイクの姿勢」と呼ばれる拷問のような体罰を受けた。

20か月後、父親の元に戻された二人は、飢え、怯え、完全に沈黙していた。ウイグル語もトルコ語も忘れ、罰を恐れて一言も話せなくなっていた。新しい母親は「彼らはまるで生ける屍のようだった」と語る。恐怖は彼らの心に深く刻み込まれ、部屋を移動することさえ恐れるようになっていた。

母親との強制的な分離は、子供たちに深刻なトラウマを与える。メヒルグルさんの子供たちは、母親が寝ている間にいなくならないかと怯え、毎晩彼女のバッグや靴を握りしめて眠るという。誰かに食べ物を盗られることを恐れ、お菓子を隠してしまう行動も見られる。これは、飢えと孤独に放置された乳児期の恐怖が、潜在意識に深く刻み込まれていることの証左である。

「私は中国人です」 洗脳されるアイデンティティ

中共の目的は、単なる肉体的拘束ではない。子供たちの魂を乗っ取り、「中国人」として作り変えることにある。そのためのキーワードが、2018年にカシュガル地区の公式文書で示された「四つの断絶(断代、断根、断連、断源)」である。

「断代」はウイグル民族の歴史や伝承・継承を途絶えさせ、「断根」は民族のアイデンティティ、祖先・宗教・文化などの根本的な部分を断ち、「断連」は家族やコミュニティ、国境を超えたウイグル人同士の結びつきも含めて、そのつながり・結束を分断、「断源」は文化・宗教・言語・伝統の“源泉”となるリソースや情報・知識・伝承の根本的な供給・発信を遮断することを断つ事を意味する。

施設内では、この方針に沿った徹底的な政治的洗脳が行われる。子供たちはウイグル語を禁じられ、中国語のみでの生活を強いられる。共産党を賛美する「紅歌」を歌わされ、漢民族の伝統衣装を着せられる。教師の命令に従い、「私は中国人です。黒い髪と黒い目をしています」と、自らのアイデンティティを否定する言葉を復唱させられるのだ。

中国国内のSNSには、看守や教師自身が誇らしげに投稿した動画が散見される。そこには、2〜3歳の幼児が「最も愛している人は誰?」と聞かれ、「習近平」と答える異様な光景が映し出されている。

この「教育」は、子供たちから自由な思考力を奪い、党のプロパガンダを暗記するロボットへと変えるプロセスである。ある動画では、子供たちが「大きくなったら何になりたいか」と問われ、「兵士になって国境を守りたい」「警察官になって悪者を捕まえたい」「中国のために死んでも怖くない」と、暗記させられた答えを即座に口にする。彼らは、自らのルーツを破壊し、中国の植民地支配に忠誠を誓う「奴隷精神を持つ未来の戦士」として育成されているのである。

この洗脳プロセスは、子どもたちにとって耐え難い苦痛を伴う。泣き叫びながら中国語の暗唱を強いられる子どもたちの映像は、その精神的苦痛を雄弁に物語っている。中には絶望のあまり、洗剤を飲んで自殺を図った子どももいると報告されている。

暴かれる嘘と国際社会の責任

当初、中共は収容所の存在そのものを否定していた。しかし、衛星写真や内部文書の流出によって隠しきれなくなると、「職業訓練センター」であると主張を変えた。子供たちの施設についても同様で、「貧しい農民の子供に教育の機会を与えるための寄宿学校」というプロパガンダを繰り広げている。

しかし、流出した政府の内部文書は、その主張が完全な嘘であることを証明している。東トルキスタン南部のある県だけで、2018年時点で9500人以上の子供が、少なくとも一方の親が収容されている「困難」な状態にあったことが記録されている。これは氷山の一角に過ぎない。

中共の行為は、自らが署名している「国連子供の権利条約」のあらゆる条項に違反している。同条約は、子供が「幸福、愛情及び理解のある家庭環境の中で育つべき」であり、「自らの文化を享受し、自らの言語を使用する権利を有する」と定めている。中共は、これらの権利を組織的かつ大規模に踏みにじっているのだ。

ウイグルの子供たちに今、起きていることは単なる人権侵害ではない。それは一つの民族の存在そのものを歴史から消し去ろうとする、現代における最も残忍なジェノサイドの一つである。引き裂かれた家族の悲鳴、心を殺された子供たちの沈黙は、もはや見過ごすことが許されない段階に来ている。

この悲劇を前にして、国際社会は沈黙を守り続けることはできない。経済的な利益のために、この民族抹消という犯罪に目をつぶることは、歴史に対する重大な裏切りとなるだろう。ウイグルの子供たちの未来を奪うこの非道な政策を終わらせるため、今こそ断固とした行動が求められている。彼らの声なき声に耳を傾け、正義のために立ち上がることこそ、現代を生きる我々に課せられた責務なのである。

大道修
社会からライフ記事まで幅広く扱っています。