7月10日、トランプ米大統領は8月1日からカナダからのすべての輸入品に35%の関税を課すと発表した。自身のトゥルース・ソーシャルで公開した書簡で、この決定を伝えた。
書簡では「ご存じのとおり、アメリカはフェンタニル危機への対応として、カナダに関税を課してきた。この問題は、カナダが我が国への麻薬流入を十分に防げていないことにも一因があります」と記した。
「しかしカナダは、アメリカとの協力ではなく、報復関税という対応をとった。そこで、2025年8月1日より、カナダからのすべての輸入製品に対し、一律35%の関税を課す。これは、すでに導入している分野別の関税とは別枠の措置」としている。
カナダのカーニー首相は、6月16日のG7サミットにおいて、トランプ氏と両国間の新たな通商協定を30日以内に締結することで合意したと語った。
しかしその後の6月27日、トランプ氏は「カナダがデジタルサービス税(DST)を撤廃しなければ、通商交渉はすべて打ち切る」と発言。DSTは、アマゾンなどアメリカの大手IT企業がカナダで得た収益に3%を課税する制度であり、バイデン政権時代から続く米側の貿易上の懸念事項となっていた。
カナダはその2日後、DSTを撤回すると発表。カーニー氏は「両国は7月21日までに新たな合意を目指す姿勢に戻った」と述べていた。
トランプ氏は今回の書簡の中で、米加間のもう一つの貿易上の懸案、カナダの酪農供給管理制度にも言及した。
「カナダは、アメリカの酪農家に最大400%もの非常識な関税を課している。そもそも、我が国の酪農製品がカナダで販売される機会すら極めて限られている」と批判した。
第1次トランプ政権下では、北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA・原産地規則が大幅に厳しい)」の発効をめぐり、カナダはアメリカ産乳製品の市場アクセス拡大を容認した。しかし最近、カナダ議会は供給管理制度を将来的な通商交渉の対象外とする法案を可決しており、再び摩擦が表面化している。
一連の関税措置
トランプ氏は今年初め、メキシコとカナダに対し25%の関税を課すと発表。両国がアメリカへのフェンタニル密輸を阻止できていないことを理由に挙げた。
4月には、大多数の貿易相手国に対して基礎関税と報復関税を導入する方針を発表。メキシコとカナダには25%の関税を維持する一方、USMCAに準拠する製品は関税対象から除外するとした。
また、鉄鋼、木材、銅、エネルギー、カリ鉱などの特定品目については、すでに「分野別関税」が導入されている。今回発表した一律35%の関税は、これらとは別に全製品に適用する措置となる。
トランプ氏はまた、カナダが報復措置を講じた場合には、関税率をさらに引き上げる可能性があると警告した。
カナダは過去に、アメリカによる関税措置に対抗する形で報復関税を導入したが、その後一部を撤回している。
トランプ氏は今週、20か国以上の貿易相手に対し、今後適用する関税率を通知する書簡を送付した。交渉に応じなければ、さらなる関税措置を講じる構えだ。
7月11日放送のNBCで、トランプ氏は「通商協定を結んでいない残りの国々に対しては、一律で関税を課す。率は20%か15%か、これから決める」と述べた。
トランプ氏はまた、ブラジルからの輸入に対して50%の関税を課す方針も明らかにしている。これは、同国の保守派前大統領が刑事訴追されていることを理由としたものだ。また、銅の輸入にも50%の関税を課し、こちらも8月1日から発効される予定だ。
「8月1日までにアメリカと通商協定を結ばなければ、各国は米国が決定した関税率を受け入れることになる」とトランプ氏は警告している。
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