中国ではHIV感染者が増加しており、特に大学生を中心とした若年層の感染拡大が深刻な状況となっている。2020~23年の4年間で報告されたHIV感染者数は総計1万2397人に達し、感染者の多くは男性で、平均年齢は19.9歳とされる。中学生や高校生を含む若年層での感染例も増加しており、この問題が注目を集めている。
HIV感染の現状
12月1日の世界エイズデーに合わせて発表した「中国青年生殖健康青書」によると、2023年には15~24歳までの若者3010人がHIVに感染したと報告している。感染経路の内訳は、同性間の性行為が84.7%、異性間の性行為が14%だった。また、感染者の平均年齢は約19.9歳で、特に大学生の感染率が高いことが明らかになった。
さらに、SNSを利用した出会いが感染リスクを高める一因としている。感染した人の約60%がSNSで出会った相手との性行為により感染しており、複数の性パートナーとの接触や無防備な同性間性的接触が主な感染要因となっている。
2020~23年にかけてのデータによると、新たに報告された若年学生のHIV感染者数はそれぞれ2977人、3677人、2733人、3010人で、4年間の合計は1万2397人に達した。男女比は33.9対1で、平均年齢は19.9歳とされる。
感染者の低年齢化
HIV感染は若年層に広がりを見せており、最年少感染者は13歳未満との報告もある。中国疾病予防管理センターが発表した報告によると、2010~19年の間に、15~24歳の若者のHIV感染者が累計14万1557例報告されている。このうち、約80%は学校を中退、または通学を断念した若者だ。
中国では、多くの青少年HIV感染者は学校を中退したり通学できなくなった若者。また、HIV感染は発覚に時間がかかる場合が多く、学校を辞める前にすでに感染していたケースも多い。調査によれば、感染が判明した学生の中には退学や転校を選択する例もある。
中国西北地域では、学校ごとのHIV感染者数をランキング形式で公表し、このデータが注目を集めている。大学生や中高生の間でHIV感染率は依然として高く、深刻な状況が続いている。近年、大学生はエイズ対策の重要な監視・調査対象となっている。
深圳市疾病予防制御センターの報告によれば、HIV感染は低年齢化の傾向を示しており、中学生や高校生の感染例も多く報告されている。最年少の感染者は13歳未満である。また、上海や北京など大学の多い都市では、感染している学生の約60%がSNSを通じて交際活動を行っていたことが分かっている。
具体的な感染事例
中国のニュースサイト「虎嗅網」によれば、19歳の大学2年生の男子学生が肛門の出血と痛みの症状で病院を受診し、1か月後の再診でHIV陽性と診断された。
この学生は、友人と共にバーで飲酒後、翌朝一人で目覚めた際に肛門の強い痛みと出血に気付き、病院で診察を受けた。このケースは、華北地方で報告された若年層のHIV感染者10例のうちの一つ。
清華大学の公衆衛生・健康学部の程峰教授は、「HIV感染者数は依然として無視できない規模であり、特にキャンパス内での感染防止は依然として厳しい状況にある」と警鐘を鳴らしている。
さらに、疫学調査によれば、新たに報告された学生感染者の約87%がネット上で築いた交友関係を持っている。71.7%が社会人との性行為を経験、66.0%が複数の性パートナーを持ち、11.3%が新型薬物を使用していたことが判明している。ネット上での交友、多数の性パートナー、無防備な同性間での性行為がHIV感染拡大の主な要因として挙げられている。
なぜ大学生のHIV感染率が高い?
なぜ大学生のHIV感染率がこれほど高いのか? ネイチャー誌はその原因として、大学生の性知識の不足、エイズ予防策の認知不足、リスクの高い行為への対処法の未熟さを挙げている。また、複数の性パートナーを持つことや、SNSを通じて出会った相手との無防備な同性間性行為も感染リスクを高めている。
2019年5月、中国疾病予防管理センター(CDC)の専門家と清華大学医学部が共同でたサイエンス誌に発表したの論文によると、HIV感染が深刻化している背景には、大学入学前の性教育が十分に行われていない点があると指摘されている。
中国では優秀な若者のうち3分の1しか大学に進学できないこともあり、大学入学前の教育は主に学問的な内容に偏りがちだ。最近の調査によれば、約半数の大学生が性教育を受けた経験があるものの、その内容はHIVや性感染症(STD)の予防策に関する具体的な説明をほとんど含まない、保守的なものに留まっているという。
大学生の婚前性行動は増加傾向にあり、60~80%の学生が婚前の性行為を容認し、複数の性パートナーを持つ行動が一般化しつつある。加えて、性教育の不足がHIVや性感染症の感染リスクをさらに高めているとしている。
性教育の強化を求める声
これらのデータが公開された後、「大学生のHIV感染者が4年間で1.2万人」という話題が注目を集め、多くのネットユーザーが意見を投稿した。
「大学生は国の未来を担う存在だ。このような統計は非常に憂慮すべきものであり、学校や家庭は性教育やHIV予防知識の普及を強化すべきだ」
「大学生は自らの防御意識を高め、高リスクの性行動を避けるべきだ。自身や他者への責任を自覚して行動してほしい」
また、一部のネットユーザーからは「婚前検査を復活させるべきだ」という提案も寄せられた。「自分がHIVに感染していることを知らない人もいる。こうした状況で異性と結婚や性行為を行えば、さらに深刻な結果を招く可能性がある」という意見も見られた。
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