脱水は大人、特に高齢者にとって重要な問題です。最新の研究によると、高齢者の脱水率は17~28%の範囲にあるとされています。たくさん水を飲めば体内の水分を維持できると思うかもしれませんが、実は意外な事実があります。
運動生理学者であり栄養学博士のステイシー・シムズ(Stacy Sims)氏は、『大紀元時報』のインタビューで、「単なる水分補給が必ずしも最適とは限らない」と述べています。
脱水の症状
軽度の脱水、つまり体重の2%に相当する水分を失うだけでも、健康やさまざまな身体機能に影響を及ぼす可能性があります。
脱水の症状には、口の渇きや頭痛などの軽い不調から、めまいや失神、心拍数の増加といったより深刻な症状までさまざまなものがあります。さらに、脱水が進行すると、けいれん、腎不全、脳の腫れなどの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。
食品と栄養学の博士で、登録栄養士のエマ・レイン(Emma Laing)氏は、『大紀元時報』に対して、「脱水症状が自分自身や周囲の人々の健康に与える影響を理解することは非常に重要です」と述べています。
最適な水分補給効果
正しい水分補給は、単にどれだけ水を飲んだかに限らず、電解質や栄養素のバランスにも関わっています。
水自体には水分吸収を助ける分子、いわゆる「駆動分子」が含まれていません。そのため、水は体内に入っても、目的の場所に到達する前にただ「ウロウロ」するだけのことがあります。最適な水分補給を実現するためには、体は水分を腸の細胞を通過させて体内の水分空間に運ぶのを助ける分子に頼る必要があります。これらの駆動分子には、ナトリウム(塩)や炭水化物(例えばグルコース)が含まれます。
この過程は「共輸送」と呼ばれ、ナトリウムとグルコースが腸内での水分吸収を促進するのに役立ちます。
ナトリウムとグルコースが細胞に入ると、浸透圧作用により水分が細胞内に引き込まれ、体が水分を補充するのを助けます。この過程は主に腸内で起こりますが、体内の他の部位でも液体のバランスを保つために重要な役割を果たします。特に、激しい運動や長時間の運動などでは、電解質や炭水化物を含む飲料がただの水よりも効果的に体を補水できることがあります。
「実際に体の水分補給を促進するスポーツドリンクには、最適な吸収と補水効果を得るために、少量の糖分(グルコースやスクロース)とナトリウムが含まれています」とシムズ氏は述べています。
脱水の程度の評価
レイン氏は、補水状態を簡単にチェックする方法として、尿の色を確認することを挙げています。
体内の水分が十分であれば、尿は淡い黄色であるべきです。濃い黄色や琥珀色の尿は脱水の兆候を示すことがあります。この方法は迅速で有効ですが、完全に信頼できるわけではありません。なぜなら、特定の食べ物や薬、サプリメントが尿の色を変えることがあるからです。
例えば、ビート(甜菜)、一部のビタミンや薬物は、体内の水分が十分であっても、尿の色を通常よりも濃くすることがあります。また、人工着色料を含む食品や高用量のサプリメントを摂取した場合、尿の色が体内の水分状態を正確に反映しないことがあります。より正確な評価を得るためには、この方法を口が渇く程度や体調など、他の兆候と組み合わせて確認することが推奨されます。
脱水かどうかをチェックする方法の一つに、皮膚をつまむテストがあります。手の甲、腹部、または鎖骨の下の皮膚を軽くつまんで、皮膚の弾力性、つまり元の位置に戻る速さを確認します。軽度の脱水の場合、皮膚が元の位置に戻るまでに通常よりも長い時間がかかることがあります。
水分補給飲料の作り方
プラットフォーム「SimpleFixRx」の医療ディレクターであるガレット・ガーナー博士(Dr. Garrett Garner)は、『大紀元時報』に対して、運動飲料に含まれるグルコースが非常に重要だと述べました。グルコースは水分補給を促進するだけでなく、体が必要とするミネラルの吸収を助けるからです。
そのため、6%以上の中程度から高レベルの炭水化物を含むスポーツドリンクは、体内のナトリウムレベルを維持し、血液中の電解質濃度を高めるのに役立ちます。
ただし、注意すべきは、多くの人がすでに過剰な塩分と糖分を摂取していることです。そのため、高強度の運動を行わず、運動時間が75分未満の人々にとっては、スポーツドリンクを飲む必要はありません。
また、スポーツドリンクには多くの人工添加物が含まれていることも指摘すべきです。
シムズ氏は、500ミリリットルの水に少量の塩とティースプーン1杯のメープルシロップを加えることで、添加物のないシンプルな水分補給ドリンクを自宅で作ることができると指摘しています。
水に電解質と糖を加えることは、特に運動量が多く、汗をかきやすい人にとって優れた水分補給の選択肢です。さらに、脱水を引き起こす可能性のある薬物(利尿剤など)を服用している人や、日常的に水分摂取が不足している高齢者にとっても、効果的な水分補給方法となります。
水に少量の塩と糖を加えることは水分補給に役立ちますが、まずは日常的な食事での塩分と糖分の総摂取量を評価することが重要です。特に加工食品に含まれる量には注意が必要です。過剰摂取は健康リスクを引き起こす可能性があります。
したがって、この水分補給方法は特定のニーズに適しており、日常的な水分補給には使用しない方が良いでしょう。
レイン氏は、考慮すべき自然な食品として牛乳を挙げています。例えば、脱脂乳は90〜99%の水分を含み、乳糖(炭水化物)、ナトリウム、カリウム(電解質)、さらにタンパク質や脂肪も含んでいます。
これらの栄養素はエネルギーを提供するだけでなく、体が水分を長時間保持するのを助けます。
さらに、牛乳の栄養成分の組み合わせは、運動後に特に有益です。牛乳は失われた水分を補給するだけでなく、そのタンパク質含量により筋肉の修復を助けることができます。
あなたが必要とする水分補給の程度に影響を与える要因には、体型、活動量、気候、そして高地にいるかどうかが含まれます。住んでいる場所や旅行先、服用している薬物、そして全体的な健康状態も重要な役割を果たします。
レイン氏はまた、妊婦や授乳中の女性の水分補給の必要量が異なる可能性があることを指摘しています。
さらに、充血性心不全や腎臓病、または発熱、嘔吐、下痢などの症状を伴う病気の患者は、水分補給の必要量が変わることがあると述べています。個々の水分補給の必要性を評価する際には、これらの要因を十分に考慮することが重要です。
(翻訳編集 李明月)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。