EVの納税者負担 一台当たり720万円…税優遇や補助で=米国

2023/11/26
更新: 2023/11/29

欧米での電気自動車EV)購入がガソリン車より安くなると予測されている。しかし、米国人納税者が負担するEVの「社会化されたコスト」は10年間で1台あたり4万8000ドル(720万円)にも上ることが、調査により明らかになった。

EVを市場に投入するため、政府は購入者やメーカーにさまざまな税制優遇措置を設けてきた。コックス・オートモーティブのレポートによると、新車のEVの平均販売価格は、1年前の6万5000ドルから今年は1万ドル以上下がっている。

しかし、テキサス公共政策財団が10月に発表した報告書によれば、EVの実際のコストは、補助金、資金移動、その他の費用の数々によって覆い隠され、EVを所有していない米国人に転嫁されていると指摘した。

「もしこれらの補助金が税金などから支給なければ、EV価格は約10万ドルになるだろう」と、報告書の共同執筆者であるブレント・ベネット氏はエポックタイムズに語った。

EVの「社会化されたコスト」

EV1台あたり4万8000ドルは、EVを買う余裕のない多くの米国人が負担している。EV購入者の平均所得が15万ドル、つまり米国世帯所得の中央値7万5000ドルの2倍であることを考えると、これは一般米国人が富裕層のコストを受け持っていることを意味する。

「4万8000ドルには税金やユーティリティ・コスト、ガソリン車が負担する社会化されたコストが含まれている」とベネット氏は指摘した。

現在、EV購入者は1台当たり最大7500ドルの税額控除が受けられるほか、道路のメンテナンス費用の大半はガソリン税から支払われる。またガソリン車やトラックの製造業者が支払うEPAの温室効果ガス(GHG)クレジットおよびCorporate Average Fuel Economy(CAFE)クレジットがある。

電気料金の上昇

ユーティリティ・コストには、新しい発電、送電、充電設備にかかる資本費用が含まれ、これらは一般的に電気料金の値上げという形で消費者に分配されている。

「EVの電力消費量は非常に大きいため、インフラに余計な負担がかかる。EVの充電は家庭数軒分の電力を消費するため、最終的にはインフラをアップグレードして対応しなければならない」とベネット氏は述べた。

このような電力会社の資本コストは、1台あたり1万1000ドル(160万円)以上と推定される、と報告書は述べている。

交通インフラに関しても、EV所有者は道路建設やメンテナンスなどのコストを負担していない。これらのコストを考慮しないことは、自動車産業における市場価格を政府が大きく歪めていることになる。

「EV擁護派は、EV所有者の電気代はガソリン1ガロンあたり1.21ドルに相当すると主張している。しかしEVの燃料費に補助金を加えると、EV所有者は実際ガソリン1ガロン当たり17.33ドルを支払うことになる」と報告書は指摘した。

ハイブリッド車が答えだ

EVは二酸化炭素の排出量を減らすことができるため、環境負荷が低いなどのメリットも挙げられる。しかし、電池材料の採掘や精製、追加の電力インフラから排出されるCO2を考慮すると、ハイブリッド車が良い選択肢かもしれない。

「ハイブリッド車は燃費を向上させ、排出ガスを削減するはるかに効率的な方法であるにもかかわらず、連邦政策はハイブリッド車よりもEVを推進している。ハイブリッド車は、小さなバッテリーを使用し、優れた走行距離と性能を提供し、電気インフラのアップグレードを必要としない」と報告書は述べた。

トヨタは最近、長距離EV用バッテリー1個の製造に必要な原材料の量で、90個のハイブリッド用バッテリーを製造できると述べた。さらにトヨタは、予想されるEVの需要を満たすためには、300の新しいリチウム、コバルト、ニッケル、グラファイト鉱山が必要で、それに伴う排出ガス、環境破壊、有毒廃棄物が発生すると見積もっている。

経済記者、映画プロデューサー。ウォール街出身の銀行家としての経歴を持つ。2008年に、米国の住宅ローン金融システムの崩壊を描いたドキュメンタリー『We All Fall Down: The American Mortgage Crisis』の脚本・製作を担当。ESG業界を調査した最新作『影の政府(The Shadow State)』では、メインパーソナリティーを務めた。