米国の小学校教室に届く、中共の赤いプロパガンダ…34州で確認 保護者団体が警告

2023/07/29
更新: 2023/07/28

子供を持つ世帯などからなる米国の草の根団体は26日、中国共産党とつながりのある組織が、米国の小学校から高校までの教育機関に金銭的な支援を行なっていると指摘する報告書を発表した。団体は34州の知事、議員、委員会議長らに報告書を送付し、警戒を呼び掛けた。

34州の143学区にある小学校や高校は、北京言語大学など中国教育部直属の大学から資金提供を受けたり、孔子学院と契約を結んだりしていたという。09年から23年まで総額は約1800万ドルと試算されている。このなかには、全国トップの科学技術高校3校と、20の米軍基地付近の学校が複数含まれる。

報告書をまとめた団体「教育を守る親たち(PDE)」の代表ニコール・ニーリー氏は調査結果について、保護者や教育者、議員まで誰でも知るべきだと主張した。「家族は学校が誰の影響を受けているかを知る権利があり、その情報をもとに子供たちが閉鎖的な教室環境で何を学んでいるかを知るべきだ」と、FOXニュースに語った。

ニーリー氏は、トランプ前政権から中国共産党のイデオロギーを発信する大学・大学院設置の「孔子学院」の規制強化が進んだものの、小〜高校レベルで調査の動きはないと指摘。「米国の児童が教育現場で外国勢力の影響を受けずに教育が受けられるようにすべきだ」と、教育環境の整備を求めた。

PDEは米国の児童たちが「言語と文化のプログラム」を名目にした中国共産党のプロパガンダにさらされているとみている。「中国政府に対してこれほどまで接触を許したとの事実は、家族たちの懸念を引き起こしている」とPDEの上級アドバイザー、ミシェル・エクスナー氏は議員への手紙にしたためた。

さらに、エクスナー氏は「中国と米国との対立的な関係から、この教育プログラムを容認すれば重大なセキュリティリスクをもたらす」と警告を発している。

欧米で中国共産党のプロパガンダ機関としてみなされる孔子学院は、多くは閉鎖されたが一部の大学には存在する。ケンタッキー州のある公立学校は、孔子学院を管轄する国家漢語国際推広領導小組弁公室(漢弁)からの資金援助により中国語プログラムを実施していた。このほか、中国から直接教材を提供されたり、中国人講師の給与を受け取ったりする学校もあったという。

PDEは自らを「有害なアジェンダを押し付ける活動家から学校を取り戻すために活動する全国的な草の根組織」と位置づける。米国の学び舎における中国の浸透工作に対処するため、SNS活動や公聴会、行政への文書請求などの行動を検討している。

中国共産党の幅広い浸透工作に、米国は警戒感を抱いている。上院の共和党議員団は3月末、中国共産党と結びつきのある団体と関係を持つ高等教育機関への資金援助を阻止する法案を発表。影響力排除に努めている。

全米で閉鎖が相次ぐなか、孔子学院は名称を変更して米教育機関と契約を結んでいるとの報告がある。米国の保守派団体「全米学識者協会(NAS)」の報告書によれば、孔子学院を運営する中国国家漢弁は別プログラムを立ち上げ、米大学との提携を再開している。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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