米国の専門家が警告する中国共産党のデータ収奪(2)–中国企業との取引を禁止に

2023/07/11
更新: 2023/07/11

中共が資金提供するDJIが世界のドローン市場を独占

米国に大きく進出しているもう1つの中国企業は、DJI(Da-Jiang Innovations)である。

Drone Industry Insightsのレポートによると、世界のドローン市場は2022年に306億ドル(約4兆4168億円)と評価され、2030年には558億ドル(約7兆5866億円)に成長すると予想されている。この拡大する市場を支配しているのは中国企業で、DJIは業界全体の半分以上を支配している。

2006年に設立されたDJIは、ドローンのモデルや部品を製造することで頭角を現し、最終的にはドローン業界のリーダーとなった。同社は名目上は民間企業だが、2022年のワシントン・ポストの報道によると、DJIは中共の国有企業であり、国務院資産監督管理委員会から資金提供を受けている。

中共はDJIの優位性を利用して、米国のデータを収集している。2016年、DJIはライトズビルビーチ(ノースカロライナ州)消防局と提携し、「収集したデータをDJIが保持するという条件で」ドローン2機を無償提供した、とフーバーの研究は述べている。バード大学の2020年公共安全ドローンレポートによると、米国では1578の州および地方の公共安全機関がドローンを使用している。これらの機関が使用するドローンのうち、DJIのドローンが約90%を占めている。

2017年の米陸軍のメモによると、DJIは重要インフラや法執行機関のデータを中共政権と共有している。2019年、米国土安全保障省は、中国製ドローンが機密飛行データを中国政府に送信する可能性があると警告した。

米国人の遺伝子情報が「戦略的資源」に

生物学的遺伝学の分野も例外ではない。BGIゲノミクス(深セン華大基因股分有限公司)は2016年に、「遺伝資源の保管、管理、利用」と「国の戦略的ニーズへの対応」を使命とする国家遺伝子バンクを深センに設立した。

遺伝子バンクはBGIによって運営されているが、工業・情報技術省や国家衛生と計画生育(家族計画)委員会など、中共の複数の機関によって承認され、資金提供されている。

遺伝子バンクの開発を承認した国家発展改革委員会のウェブサイトによると、遺伝子資源は政権の戦略的資源であり、バイオエコノミーにおける将来の競争の基盤である。

遺伝子バンクにおけるBGIと中共の提携によって、欧米諸国から収集された遺伝子データが中国の遺伝子データベースに入り、「戦略的資源」として利用される危険性がある。

2018年、BGIはメリーランド州ボルチモアにあるジョンズ・ホプキンス大学およびカナダのトロントにあるマウント・サイナイ病院との提携を発表し、膵臓がんの研究および早産の診断テストの開発を行った。BGIは両プロジェクトにシーケンスサービスを提供した。

2021年、BGIの出生前検査ブランドであるNIFTYは、中国軍との関連があるとして欧米5か国で調査された。フーバー報告書が発表された時点で、世界中で840万人の女性がBGI検査を受けた。

中国企業との取引を禁止に

専門家は、こうしたデータ支配のための行動を、中国政府と西側諸国との闘争の一環と見ている。

『Journal of Political Risk』発行人であり、『The Concentration of Power』の著者でもあるアンダース・コール氏は、中共のデータ奪取に対し、米国は権威主義国の企業の米国でのビジネスを禁止し、同盟国にも同様の措置を取るよう働きかけることで対応することを提案した。

「名目GDPで見ると世界の2大経済国は米国と欧州連合だ。もし両国経済が中国とロシアの企業を禁止すれば、最も危険な2つの敵国を弱体化させ、民主化を促すことになり、最大の問題の根源ではなく、世界的な解決策の一部となるだろう」と同氏は述べた。

元米太平洋軍の統合情報センター作戦部長のカール・シュスター米海軍大佐も、同様の懸念を表明している。

ウェブと情報システムは世界的な広がりを享受しており、そのため、「習氏の『核心技術(コア・テクノロジー)』に対する懸念を支える哲学的基盤である知識の衝突は、本質的にはグローバルなものとなる。この衝突は、習主席が今世紀残りの国際システムを形成することを望んでいる『偉大なる闘争』と呼ぶものの結果を決定するだろう」とシュスター氏は述べた。

習氏は、中国をAI、より高速で優れたコンピューター・チップ、量子鍵技術への巨額の投資に駆り立てているとシュスター氏は警告している。

量子鍵技術は、通信やコンピュータ・データの暗号化を提供し、攻撃するための手段である。技術的に複雑で、まだ完全にはマスターされていない。

「現時点では、『偉大なる闘争』の側面は西側に有利だが、中国が追い上げてきている。今後10年で結果が決まるだろう。西側の企業家精神は、習氏の中央集権的で政治的に抑圧的な、中国の研究者にイノベーションを強要する動きに打ち勝つだろうか?  西側の投資と協力のレベルがその答えを決めるかもしれない」とシュスター氏は指摘した。

 

この記事で述べられている見解は著者の意見であり、必ずしも大紀元の見解を反映するものではありません。
2019年からエポックタイムズに寄稿している。
Jenny Li