駐日米大使の悪行のおかげで、日米関係における70年来のゴタゴタが暴露されようとしている。ある自民党幹部の言葉を借りれば、党執行部は「力ずくでこの問題を決めた」のであり、「党の民主的運営に禍根を残した」のである。
問題は、日本の政治的選択を影響する米国の力である。その選択とは、日本が性的少数者の権利を擁護する国内法を採択するかどうかということだ。この問題は以前検討され、議論されたが、バイデン大統領が私たちに圧力をかける前に休眠状態となった。そして今、ラーム・エマニュエル大使の猛烈なキャンペーンのおかげで、日本の国会は衆議院と参議院の両方で、バイデン大統領のゲイ・レズビアン・トランスセクシュアルに対する寛容の綱領を法律として正式に採択した。
エマニュエル大使の東京でのキャンペーンは、米国の外交官が世界中で繰り広げている攻勢の一端を如実に表している。グアテマラでは、USAID(米国国際開発庁)のサマンサ・パワー長官率いる米国務省が中絶推進団体に1100万ドルの資金を提供し、胎児の権利を明確に保障したグアテマラ憲法を弱体化させている。
バラク・オバマ元大統領の側近として有名になったパワー氏とエマニュエル大使は、急進左派における信頼が厚い。彼らがバイデン氏のために実行しようとしている政策は、性的嗜好とリプロダクティブ・ライツに象徴される急進的なアジェンダを元とする。そのアジェンダは今やアメリカの外交プログラムの中心に位置付けられている。
法案が衆議院の内閣委員会で可決した際、エマニュエル大使は「今日の国会の委員会採決は、日本にとって新しい日の1日目だ。岸田首相、あなたのリーダーシップに感謝します」とツイート、共同通信のインタビューでは、「日本は進化の過程にある」とまで発言した。
大使は日本に圧力をかけていることを隠そうともしない。アメリカ人であろうとなかろうと、どんな大使であろうと、相手国に自国のアジェンダを押し付ける権利はない。洋の東西を問わず、相手国の法律や慣習に干渉しないことが外交の基本である。エマニュエル大使はそれを無遠慮に破っている。
バイデン政権が、内政干渉する大使を通じて、米国民が自国では決して受け入れない措置を日本に押し付けたことはなんと皮肉なことか。そもそも、日本には同性愛を激しく差別する慣習がない。過激な法的措置は、私たちを抑圧し支配する以外の効果を持たない。
力によって押し付けられた寛容さは、建設的なものとなり得ず、苦しみの序章でしかない。特にバイデン政権の政策はそうであり、その意図はゲイやトランスジェンダーの人々を平等にすることではなく、実際には彼らを優遇することにある。
バイデン政権統治下の米国では、女性の外見をまとった生物学的な男性たちが、生まれながらの女性たちを屈服させようとしている。日本の国会議員の決断は、まさに国民を苦難へと誘い込んでいるように思えてならない。
いっぽう、エマニュエル大使は5月9日、「中華人民共和国からの新しい外交団員を歓迎する。すべての国の平和と安全を強化する自由で開かれたインド太平洋のために、呉大使と協力する用意がある」とツイートし、まるで一国の主のように振る舞っている。
エマニュエル大使は、インド太平洋地域の責任者として発言している。事実上、彼はマッカーサー元帥のマントを身にまとっている。しかし、その手は瓶の外に出てしまった。エマニュエル大使の言動は、アメリカが日本を支配し続けているという不愉快な光景を世の人々に知らしめた。
大使の高圧的で度を超えた言動を見るたびに、私たちは不快な現実を思い知らされる。米国との戦争に敗れて以来、日本という国が自立する機会は一度もなかった。米国の支配下で3世代にわたって生きてきた結果、私たちは自主的な考えや行動をとる訓練も才能も失ってしまったのだ。
シェイクスピアの戯曲のなかでハムレット王子が事件の顛末を知ったときのように、エマニュエル大使のマナーの悪さによって、この国で何かが腐っているのだということを私たちは知ることができた。しかし、エマニュエル大使は私たちを苦しめている張本人ではない。現在の不幸の元凶は、わが国の名誉を汚した自民党の指導者たちである。
ほぼ2対1の反対多数にもかかわらず、自民党幹部はエマニュエル大使が押し付けたLGBT理解増進法の受け入れを政令で決定した。高鳥修一議員は記者団にこう語った。
「結局、指導部はこの問題を力ずくで決めた。党の民主的な運営に禍根を残した」。最後の言葉は丁寧な控えめ表現だ。個人的な抗議として、同議員は採決の際に退席した。
私たちの国家性を再発見する道は、世界中の良識ある人々や政党と協力しながら、独立と自立を培っていくことだ。それこそが、戦後レジームから脱却し、現代世界における正しい居場所を見つける唯一の道なのだ。
(了)
※原文は英語です。
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