1月6日議会襲撃事件、警察は「Qアノン・シャーマン」を案内していた

2023/03/09
更新: 2023/03/09

2021年1月6日の米連邦議会襲撃事件において、一際目立っていたのが侵入者のジェイコブ・チャンスリーだった。角の付いた毛皮の帽子を被り、上裸にフェイスペイントといった異様ないでたちで、自身を「Qアノン・シャーマン」と名乗る彼は、事件の顔とされてきた。

その彼が事件当日、警察によって議会議事堂の中へと「案内」されていたことが明らかになった。

今月6日、米FOXニュースの名物司会者タッカー・カールソン氏は、これまで未公開とされた4万1000時間にのぼる事件当日の議会議事堂の監視映像を独占入手し、自身の番組で公開に踏み切った。

監視映像には、チャンスリーが事件当日に議事堂内を平然と歩いている様子が映されている。カールソン氏は、警察がチャンスリーを止めようとしなかったばかりか、彼を護送したと指摘している。

「議事堂警察は彼を複数の入り口に連れて行き、彼のために鍵のかかったドアを開けようとさえしている。非武装のジェイコブ・チャンスリーと接触可能な距離に、少なくとも9人の警官がいる」

「その中には、彼の歩みを遅らせようとする人さえいなかった。チャンスリーは、議事堂警察が自分の味方であることを理解していた。映像の中で、彼は上院の議事堂で祈り、警察に対して感謝の意を表している」

カールソン氏によると、共和党のケビン・マッカーシー下院議長の協力を経て、番組プロデューサーらは監視映像に一定期間自由にアクセスできる機会を得た。膨大な映像記録の中には、誰もいない部屋の映像など、無関係なものも多かったそうだ。プロデューサーらは、議事堂のコンピュータを使い、関連性のある時間と場所に焦点を当てたという。

レガシーメディアと民主党のエスタブリッシュメント(既得権益)の多くは、2021年1月6日の事件後にチャンスリーを風刺した。シャツを脱ぎ、角のついた毛皮の帽子をかぶり、米国旗を取り付けた槍を持った「シャーマン」は、瞬く間に米国中に知れ渡った。

2021年9月、チャンスリーは公務執行妨害罪について有罪を認めた。同年11月、ワシントンの連邦地裁は彼に懲役3年5カ月の実刑判決を言い渡した。検察側は懲役4年3カ月を求刑していた。

「彼は殺されるべきだ」

事件に関して、チャンスリーは暴行の容疑で起訴されたわけでもなく、建物を破壊したわけでもない。彼は上院の議事堂の演壇に立ち、ホールを歩いただけだ。しかし、彼は1000人以上の被告の中で最長の懲役刑となった。

カールソン氏は次のように指摘した。

「1月6日にジェイコブ・チャンスリーが議会議事堂で行った本当のこと、つまり映像に記録された紛れもない事実と、皆さんが2年以上にわたってメディアで見てきた描写を対比して欲しい。メディアは『彼はテロリストだ』『彼は殺されるべきだ』などと言っていた」

検察側はチャンスリーに対する重刑を求めた。彼は事件当日にワシントンに来て、政府内のいわゆる「裏切り者」を暴き、「選挙を盗むな」といった抗議運動を展開したと主張した。

事件当日の1月6日、トランプ大統領が抗議者らに平和的な態度で連邦議会議事堂を去るよう伝えるビデオを発表した後、チャンスリーは雄たけびを上げて皆に帰宅を促したことが、一般公開された映像で明らかになっている。

「QAnonシャーマン」ことジェイコブ・チャンスリーは、2021年1月6日、連邦議会議事堂の中へと護送された。今月6日、米フォックスニュースが特集番組で主張 (U.S. Department of Justice/Screenshot via The Epoch Times)

事件当日の午後、チャンスリーはフランスのテレビ番組 「Quotidien」に対し、「私は上院の議事堂にいた。バイデンの椅子に座った。楽しかった」と語っている。

「共産主義者とグローバリストは、私たちと精神的な戦いを繰り広げている。私たちの神聖な空間への冒涜が、彼らの戦法の全てだ。上院は神聖な空間だ。それは真実のための調和した議場だが、何十年もの間そこには嘘と反逆が満ちていた」

さらに彼は、番組リポーターに対して次のように語った。「だから、私はその議場で祈りを捧げた。すべての悪を追放し、神聖な創造主を私たちの生活と上院に再び迎え入れるために、上院の中で祈りを捧げた」

謎の扇動者が特別委員会についた嘘

FOXニュースの番組では、もう一つの大きな進展があった。事件における謎の扇動者レイ・エップスが、下院特別委員会の調査官に嘘をついていたことが明らかになったのだ。

エップスは特別委員会に対し、「1月6日午後2時12分に甥にメールを送り、自分が抗議活動を指揮し、人々を議事堂に集めるのを手伝ったと主張した。しかし自分はすでに現場を後にしていた」と語っている。これに関して、カールソン氏は次のように述べている。

Epoch Times Photo
2021年1月6日の前夜、デモ隊に議事堂への侵入を促すレイ・エップス (Villain Report/Screenshot via The Epoch Times)

「監視カメラの映像から、レイ・エップスは少なくともあと30分は議事堂に残っていたことが分かる。いったいエップスは、そこで何をしていたのだろうか。いずれにせよ、彼が捜査当局に嘘をついたことは確かだ」

事件前日の1月5日、エップスがデモ隊に向かって、翌日に議事堂へ侵入するよう促す映像が出回っている。翌6日、彼はホワイトハウスに隣接するザ・エリプスと呼ばれる広場に立ち、人々に歩いて議事堂に行くよう促していた。さらに、彼は議事堂の西側正面付近の警察線の第一突破地点でも確認されているほか、別の突破地点では、群衆と一緒にバリケードを越えて突撃する様子も捉えられている。

しかし、エップスは逮捕も起訴もされていない。彼は、政府のための潜入捜査官や密告者として働いていたことを繰り返し否定している。

カールソン氏は、民主党のベニー・トンプソン下院議員が率いた事件の特別委員会(現在は廃止)は、嘘と欺瞞に満ちていたとして非難した。

「(この委員会の役割は)何かの調査ではなかった。テレビ番組仕立ての裁判を行うことが重要だったのだ。公聴会は、冒頭からほとんど滑稽なほど熱を帯びていて、極論に終始していた。民主党は、1月6日の抗議行動について、米国の歴史上に起きたどんな悲劇よりも酷いと表現していた」

大紀元記者。2021年1月6日の連邦議事堂侵入事件とその後の影響、およびウィスコンシン州のニュース全般を中心に担当している。2022年には、1月6日の事件に関する大紀元の特別調査報道『あの日、米議会議事堂で何が起こったのか(The Real Story of Jan.6)』の制作に携わった。40年近くジャーナリストとして活躍している。