米国下院は2日、社会主義を弾劾する「社会主義恐怖糾弾決議案」を可決した。
共和党のマリア・サラサール下院議員(フロリダ州)が提出した同決議案は、賛成328票、反対86票の超党派で可決された。共和党に加え民主党議員109人が賛成票を投じ、民主党13人が投票を棄権した。
サラサール氏は大紀元の姉妹メディアである「新唐人テレビ(NTD)」の取材に対し、議案提出の背景を語った。
「アメリカ人の44%が、『アメリカ独立宣言』よりも『共産党宣言』を支持しているからだ」
サラサール氏の当選挙区マイアミは、南米の社会主義、共産主義国からの亡命先になっている。キューバ出身の彼女は、キューバで基本的必需品の剥奪を経験し、フロリダへと亡命した。
共和党は、ソ連、中国共産党政権、北朝鮮のような社会主義国に歴史的に共通する残虐性や人権侵害を指摘する。
社会主義およびその派生である共産主義は、19世紀の思想家カール・マルクスの政治哲学に基づき、生産手段(工場や機械、その他生産設備などの資本財)の国有化を推し進める。
マルクスは、共産主義国家は最終的に政府を必要としなくなるとしたが、社会を資本主義から共産主義へ移行させる装置として、名目上短命の体制として「プロレタリアートによる独裁」が必要だと説いた。
ところがこれまで歴史上、この概念上の初期段階から抜け出せた共産主義国家はない。
マルクス思想に従った社会主義者たちは、20世紀における1億人の人々の死に対し、責任を負っている。
歴史上最大の犯罪
サラサール氏は決議案で、「社会主義が必要とする中央集権体制はこれまで何度も、共産主義、全体主義、冷酷な独裁体制へと崩壊していった」と述べている。
「社会主義はこれまで、飢饉と大規模虐殺を繰り返し引き起こしており、全世界で1億人以上の人々が犠牲になった」
サラサール氏は、歴史上最大の犯罪の多くが社会主義信奉者によって行われたものだとし、ウラジミール・レーニン、ジョセフ・スターリン、毛沢東、フィデル・カストロ、ポル・ポト、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)などの人物を挙げた。
さらに、社会主義体制下での人権侵害についても指摘した。旧ソ連内におけるスターリンの恐怖独裁により数千万人が殺され、さらに数百万もの人々が恐ろしい強制労働収容所に送られた。毛沢東が実行した「大躍進政策」は中国を崩壊させ、5500万人もの人々が亡くなった。
大量虐殺が行われたカンボジアの刑場「キリング・フィールド」では、ポル・ポトによって100万人以上が殺された。金正恩政権下の北朝鮮では、大規模飢饉が今日まで続いている。
決議案は、社会主義は米国の建国の精神に反するとし、「いかなる社会主義的な政策の実行に対しても反対する」と述べている。
民主党側の反応
決議案について下院民主党議員は、民主党の推進する政策と共産主義者の支持する政策を共和党は同一視しているようだが、それは誤りだと主張した。
下院のなかで左翼進歩主義者の一人とされる民主党のロー・カンナ議員(カリフォルニア州)は、「民主党の中でガソリンスタンドや自動車メーカーを国有化しようと考えているものは一人もいない」と述べた。
「民主党が、国民全員が保育を利用できるべきだと言うと、共和党は、『スターリンがどれだけ人を殺したか見てみろ』と言う。全員に医療保険を与えようと言うと、『どれだけの人がポル・ポトによって殺されたか見てみろ』と言う。勘弁してくれ、アメリカ人だってわかってきているんだ」
民主党のブラッド・シャーマン議員(カリフォルニア州)も同様の意見を示した。
シャーマン氏は、「この決議案によって、高齢者医療保険制度と大躍進政策が同一視されることになる」と述べ、ロシアのプーチン大統領、スペインの独裁者フランコ将軍、チリのピノチェト元大統領などもいわゆる資本主義的な権威主義者だと指摘した。
ただ明らかなように、今日のロシア経済は寡頭政治寄りで、資本主義経済というより旧ソ連崩壊によって利益を得る人々によって支配されている。
同様に、スペインのフランコ将軍もファシズム思想に傾倒していたが、ファシズムは本質的に資本主義に反する考え方だ。
もっともよく知られているファシズムの提唱者アドルフ・ヒトラーはしばしば、社会主義や共産主義と同程度、資本主義も敵対視していた。
議案は下院を通過し、現在上院での可決を待っている。
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