近年自動車メーカー各社が次々と電気自動車(EV)の新車種を発表し、世界的に販売台数が急激に増加している。いっぽう、その火災リスクを指摘する声も高まっている。米道路交通安全局(NHTSA)によると、塩水に浸かったEVが発火する事故が散発しているという。
フロリダ州金融サービス局のジミー・パトロニス最高財務責任者(CFO)は同州を襲った大型ハリケーン「イアン」の復旧活動に携わった際、浸水した電気自動車が発火する事件を目撃した。
「消防隊が何万ガロンもの水を電気自動車に放水したが、一度鎮火した後も再発火を繰り返す状況をこの目で見た」。また、EVがレッカー車に積み込まれた際にも再び発火したと消防署から連絡を受けたとし「時限爆弾を抱え込んでいるのではないかと非常に心配だ」と訴えた。
パトロニス氏は6日、自身のツイッター上にEV車の火災を消し止める様子を映した動画を投稿した。消防士が大量の水を掛けているにも関わらず、EV車から煙が上がり続けている。
パトロニス氏は、「(ハリケーン)イアンの襲来により損傷したEVが大量に存在する。バッテリーの腐食は火災の原因となる。これは、消防士にとって前例のない新たな課題だ」と付け加えた。
パトロニス氏はEV車の火災について道路交通安全局に書簡を送った。安全局は返信で「我々は、ニュース報道、消防署のソーシャルメディアサイトなどを通じてフロリダのEV火災について追跡しているが、コリアー郡で起きたようなEVの再発火事故は珍しくない」と記した。
道路交通安全局によると、EVの火災事故は2012年10月にハリケーンがニュージャージー州を襲った際に初めて確認された。最近ではGMがEV「ボルト」の火災発生をうけて約11万台のリコールを発表した。
リチウムイオンバッテリーを原因とするEV車の浸水後の火災事故は、バッテリーの浸水直後、または数週間経過した時点で発生しやすいとされる。再燃焼や感電事故といったEV特有の危険性もはらんでいる。
道路交通安全局は関係者に対し、リチウムイオンバッテリーを搭載した損傷の激しい車両を保管する際は構造物内を避け、付近15メートル以内に構造物や車両、可燃物を置かないよう指示している。
米政府独立機関の国家運輸安全委員会(NTSB)は6月、電気自動車用高電圧リチウムイオンバッテリーの火災に対する緊急ガイドの見直しを発表。EVのバッテリー火災には再燃焼や感電事故といった特有の危険性をはらんでいると指摘した。
(翻訳編集・河原昌義)
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