トランプ邸捜索、弁護士「正当な理由があると思えない」 2024年大統領選の影響はいかに

米フロリダ州のトランプ前米大統領の邸宅「マールアラーゴ」がFBIの家宅捜索を受けたことについて、共和党側は司法制度の政治的利用であるとして強く反発している。トランプ氏の担当弁護士は取材に対し「正当な理由があると思えない」と主張した。また、米国の法律学者は2024年の米大統領選への出馬について、法的な問題はないとの見方を示した。

目当ては機密を含む文書か

8日午前9時ごろ、数十人のFBI捜査官がウェストパームビーチの「マールアラーゴ」に到着した。家宅捜索はおよそ10時間にわたって行われた。捜索終了後、捜査官が箱一杯の書類を運び出したとされている。

トランプ氏の弁護士を務めるクリスティーナ・ボブ氏は9日、大紀元の取材に対し、FBIは「大統領任期中の文書、そして潜在的に機密となりうるものを探していたのではないか」と語った。

トランプ氏の退任後、米国立公文書記録管理局(NARA)は議会宛ての書簡で、マールアラーゴから回収した15箱の文書には大統領関連の記録が含まれていたと指摘。そして、一部には機密情報が含まれていたと主張した。

米国の大統領は「大統領記録法」に基づき、在任中の電子メールや書簡などの記録を保存し、退任時に提出することが義務付けられている。

「正当な理由があると思えない」

FBIの突然の捜査について、クリスティーナ・ボブ氏は「正当な理由があると思えない」と述べた。

「我々は以前、彼らに非常に協力的だった。なぜ彼らがこのような思い切った手段をとったのか、私には分からない。彼らは正当な理由を教えてくれなかった」。

ボブ氏によると、FBIの捜査官は当初、捜索令状の提示を拒否していた。交渉の末、渋々提示したものの、捜索の正当な理由は判明しなかった。また、捜索中の立ち合いは認められなかった。

トランプ氏の弁護団は、フロリダ州南部の連邦地裁に対し、捜索の理由を記した書類の開示を求める予定。

大紀元はFBIや司法省に取材を試みたが、コメントは得られなかった。

2024年大統領選への影響は

トランプ氏は月曜日に声明を発表し、本件捜査は「検察の職権乱用であり、司法制度の武器化だ」と非難した。そして「2024年の大統領選挙への、私の立候補を望まない過激な左派による攻撃だ」と主張した。家宅捜索が入る前の6日、トランプ氏はテキサス州で開催された保守政治行動会議(CPAC)に出席し、2024年大統領選への出馬を示唆した。

ここで論点となるのが、前出の大統領記録法が定める罰則規定だ。同法で有罪となった場合、罰金や禁錮が科されるほか、連邦政府のいかなる役職にも就く資格を喪失する、と定められている。

法律学者は大紀元の取材に対し、2024年大統領選挙へのトランプ氏の出馬を法律戦で阻むことは容易ではないと指摘した。

米国の憲法は大統領となる要件について、①米国生まれであること②35歳以上であること③14年以上米国で居住していること、と定めている。憲法と下位法に矛盾がある場合は憲法が優先されることから、ハーバード大学教授のアラン・ダーショウィッツ氏は、トランプ氏の被選挙権に対する制限は「違憲となるだろう」との見解を示した。

ニュージャージー州セトン・ホール大学で法学教授を務めるユージン・マゾ氏は取材に対し、「憲法は大統領になるために具備すべき条件を列挙している」と指摘。憲法と矛盾する下位法が違憲と判断された1995年の米最高裁判例を引用し、たとえトランプ氏が有罪判決を受けたとしても、2024年の大統領選に出馬することを法的に阻止することはできないと述べた。

「これはリベラルとか保守とかの問題ではなく、類似した状況において裁判所が判断してきたことだ」。

共和党政治家、家宅捜索を非難

FBIによる突然の家宅捜索に対し、共和党の政治家は反発を強めている。

米下院共和党院内総務のケビン・マッカーシー議員は9日、本件捜査をめぐってメリック・ガーランド司法省長官に警告を出した。

「もうたくさんだ。司法省がこれ以上政治的武器と化することを容認できない。共和党が下院を奪還した暁には、直ちに司法省に対する監査を行い、事実に基づいて、隅々まで捜査を行う。ガーランド司法長官には書類を保存し、予定を開けておいてもらいたい」。

マイク・ポンペオ前国務長官は「元大統領への捜査は危険だ。司法省とFBIの赤裸々な政治武器化は恥ずべきことだ」と指摘。「250年に及ぶ慣習を覆した理由について司法省長官は説明しなければならない」とし、説明責任を果たすよう求めた。

フロリダ州知事のロン・デサンティス氏は「マールアラーゴに対する突然の捜査は、連邦機関が現政権のもと、政治的ライバルに対する武器と化していることの象徴的な例である」と述べた。

なお、ホワイトハウスの報道官はFBIによる本件捜査について、バイデン大統領は事前に知らなかったと述べている。

(翻訳編集・静媛)

政治・安全保障担当記者。金融機関勤務を経て、エポックタイムズに入社。社会問題や国際報道も取り扱う。閣僚経験者や国会議員、学者、軍人、インフルエンサー、民主活動家などに対する取材経験を持つ。
メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。
米国のエポックタイムズ記者。EPOCH TVの番組「Facts Matter」で司会を務め、国内外で抗議、暴動、選挙の取材経験を持つ。エポックタイムズのCMプロデューサーも務める。