国際社会がウクライナに侵攻したロシアへの制裁を強めるなか、中国はロシアを批判する姿勢を見せていない。専門家らは、今回の侵攻をめぐって中国とロシアは互いに利用しているとの見方を示した。米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が1日、伝えた。
党内から習氏への不満が高まる
ニューヨーク大学教授のジェローム・コーエン氏は、プーチン氏が2月の北京冬季五輪に合わせて訪中した際、習近平氏にウクライナ侵攻に言及したと推測した。米メディアの報道によると、米政府も事前に習近平氏にロシアのウクライナ侵攻の可能性を知らせたと報じた。
それでも習近平氏はプーチン氏との会談後、共同声明を発表し、北大西洋条約機構(NATO)のこれ以上の拡大に反対し、中ロ両国が「協力する上で『禁じられた』分野はない」と強調した。
この共同声明で「国際社会は中国がロシア側の決定に反対していないという印象を受けた」と同氏は述べた。
コーエン氏は、「習近平氏は党内で厄介な立場に立たされている」と話した。同氏によれば、中国指導部では、「習氏のせいで国際社会は中国がロシアのウクライナ侵攻を支持していると認識している。中国は今、面目が立たない状況だ」と習氏への不満を強めている。習氏の支持を取り付け、ウクライナ侵攻に踏み切ったという意味で、同氏はプーチン氏が習近平氏を利用したと指摘した。
中国の企みは「ロシアを利用して国際社会の圧力を軽減する」
米ニュースクール大学の国際関係の教授で旧ソ連の最高指導者だったニキータ・フルシチョフのひ孫であるニーナ・フルシチョワ(Nina Khrushcheva)氏は、習近平氏がプーチン氏を利用したと逆の見方を示した。
フルシチョワ氏は2月18日、国際NPO団体、プロジェクト・シンジケート(Project Syndicate)に寄稿した。記事は、「欧米との関係が悪化するなか、中国がロシアを味方につけようとしている。その逆ではない」「むしろ習近平氏が、ロシアを中国への属国的な依存関係に固定化するために必要なことをした。プーチン氏は、習近平氏と組めば、欧米との対抗に有利になると考え、習氏の罠にはまることを選んだ」との認識を示した。
フルシチョワ氏は「中国は、ロシア経済が西側から完全に切り離されることを望んでいる」と指摘した。
同氏は、中国当局は米国に対抗することも、西側諸国の制裁を弱めるためにロシアに大規模な支援を行うこともしないと推測した。
「むしろ中国は、可能な限りロシアが欧米と対立することを望んでいる。そうなれば、欧米諸国の目を中国からそらすことができるからだ」
「中国は台湾侵攻をためらうだろう」
米国中国語雑誌「北京之春」の名誉編集長、胡平氏は、ロシアのウクライナ侵攻を見て「習近平は台湾侵攻を躊躇する可能性がある」とVOAに語った。中国が侵攻した場合、米政府は台湾関係法に基づいて台湾へ軍を派遣する可能性が高い。
同氏はまた、「今最も心配されているのは、米国が今後も中国を最大競争国と位置付けていくかどうかということだ」とした。
「米国の最優先課題が中国からロシアに変わり、米国の中国当局への圧力が軽くなれば、中国はウクライナ侵攻の勝者になる」と胡平氏は指摘した。
(翻訳編集・張哲)
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