中国共産党の習近平総書記は5月31日、対外プロパガンダ宣伝および国際発言権の強化に関する中央政治局の会議に出席した。背景には、国際社会で、人権侵害問題、好戦的な戦狼外交、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の情報隠ぺいなどを巡って中国当局に対する批判の声が高まっていることがある。
「有利な外部世論」を誘導
国営新華社通信によると、習近平氏は同会議で、新しい情勢下で国際社会に向けて発信力の取り組みを強化し改善する重要性と必要性を強調し、「中国の特色ある」戦略的な国際発信システムを構築するよう要求した。
また、習氏はこのシステムを通じて、「中国(共産党)のストーリーを正しく語り、中国(共産党)の声をしっかりと発信し、真実の、立体的かつ全面的な中国(共産党)を示す」「我が国の改革・発展・安定のために有利な外部世論の雰囲気を醸す」「信頼でき、愛され、尊敬される中国(共産党)のイメージ作りに取り組む」などと述べた。
在米中国語雑誌「北京之春」の名誉編集長、胡平氏は、習近平氏の発言について、「国際社会の非難で中国当局は苦境に立たされていることが浮き彫りになった」との見方を示した。
中国民主化活動家でもある胡平氏は、中国当局は現在、1989年天安門事件以来、最大の挫折を経験しているとした。「今、至る所で中国共産党への不満と批判を耳にする。中国当局にとって、外部からの圧力は過去最大となっている。各国、特に民主国家で、中国共産党政権への反感がますます高まっている」
「中国当局がこの現状を何とか変えようとして、国際発信力に関して党中央政治局の会議を開催したのだろう」
胡氏は、5月31日の会議の目的は、国際社会において中国共産党の良くないイメージを払拭し、「信頼でき、愛されるイメージを作る」ことだけだと指摘した。同氏は、今後、中国当局が「戦狼外交を減らし、発言も少し柔らかくするだろう」と予想した。
「しかし、共産党が引き続き傍若無人な行いを続けるのであれば、いくらその宣伝方法を変えても無駄だろう」
近年、欧米各国は、中国当局が各国のマスコミや世論を操って影響力を拡大していることに懸念を強めている。大紀元英語版のコラムニスト、スティーブン・モッシャー(Steven W. Mosher)氏とレジー・リトルジョン(Reggie Littlejohn)氏は昨年の寄稿で、中国当局は早くも、人々の思想をコントロールすることが最も重要な戦略分野だと心得たと指摘した。
「反米専門家」が会議出席
いっぽう、中国で反米で名を知られる復旦大学中国発展モデル研究センター主任の張維為教授が、31日の中央政治局の会議に参加したことで注目された。
国営新華社通信の報道によると、張教授は指導部に対して、国際発信力の強化に関して提言を行ったという。しかし、発言の詳細は不明だ。
張教授はその後、政府系メディア「人民網」の取材を受けた。この際、同氏は、西側諸国は中国当局を「誤解し、読み間違えている」と批判した。
中国国内ネット上では、張教授は「米国を貶す専門家」と揶揄されている。
同氏は過去、「中国は、全面的に『小康(ややゆとりのある生活)』を実現できた。14億人が貧困から脱出した。しかし、米国では4000万人が貧困に苦しんでいる。つまり、8人のうち1人が貧困層だ。しかも、人口の20分の1を占める1850万人の米国人が極貧生活を送っている」などと発言していた。同氏は中国の政治・社会制度は米国などより優れており、中国人は米国人より豊かな生活を送っていると強調する。
張氏は、著書『中国の戦疫(中国語:中国的战疫)』で、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の大流行は、「全世界を東方に傾けさせる触媒剤である。これによって、西側諸国の経済状況が悪化し、国際社会における地位が落ちるだろう」と欧米での感染拡大をチャンスだと捉えた。
中国人ネットユーザーは国内SNS上で「最強無敵のコンビだ!インターネット上には(五毛党の)周小平氏がいる。国際情勢分析には張維為氏がおり、メディア・プロパガンダには(環球時報編集長の)胡錫進氏が、外交分野には戦狼隊がいる。軍事分野の天才は、金燦栄氏か張召忠氏(両氏は台湾への武力侵攻を主張)がいる。 この組み合わせには、宇宙人ですら、お漏らししてしまうほど怖くなるだろう」と皮肉った。
海外のツイッターでは、「口から出任せを言う偽物の教授が、なんと政府に提言している」と驚いた中国人ユーザーがいる一方で、「張維為氏が中国共産党のブレーンになっているのを見て、逆に安心したよ」と書き込んだ人もいる。
(翻訳編集・張哲)