中国、ネット金融13社を一斉指導 専門家「中国の金融革新の時代は終わった」

2021/04/30
更新: 2021/04/30

中国人民銀行(中央銀行)など金融規制当局は29日、インターネット金融業者13社を呼び出し、行政指導を行った。金融規制の順守を求めたと中国国営新華社通信が報じた。金融規制当局は市場で影響力を増す巨大IT企業に対する締め付けを一段と強めた。

報道によると、指導に当たった金融規制当局は中国人民銀行、銀行保険監督管理委員会、証券監督管理委員会、国家外貨管理局となっている。人民銀行の潘功勝副総裁が会合を主催した。

呼び出し指導を受けたのは、微信支付(ウィーチャットペイ)を手掛けるインターネットサービス大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)や動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する中国の北京字節跳動科技(バイトダンス)、百度(バイドゥ)、ネット通販の京東集団(JDドットコム)、出前アプリの美団(メイトゥアン)、平安保険、配車アプリの滴滴出行(ディディ)などの金融会社13社だ。

13社は、いずれも業界で強い影響力をもつ大手ハイテク企業である。4月29日付の官製メディア「国是直通車」が、今回の13社に対する指導は中国共産党によるオンラインプラットフォーム企業に対する是正の「第一歩」だと報じた。さらに「アリババ傘下のアント・グループと同様、規制当局は今回の指導を通じて、業界全体に警告を与えようとしている」と分析した。

アリババ集団は10日、独占禁止法違反で過去最大となる3000億円の罰金処分を受けた。アリババ傘下のアント・グループも、フィンテック企業から金融持ち株会社への再編を指示された。

当局はその後、テンセント、バイトダンス、百度、JDドットコム、美団など34社のプラットフォーム企業に対し、期限までに是正するよう求めていた。

ロイターは29日、情報筋の話を引用して、中国の独占禁止当局である国家市場監督管理総局(SAMR)は、テンセントに少なくとも100億元(約15億4000万ドル)の罰金支払いを命じる可能性があると報じた。ネット業界の独占行為を取り締まる一環だとしている。

また、独占禁止当局は26日、フードデリバリー大手の「美団」のビジネス慣行が独禁法に違反した可能性があるとして、調査を開始した。同社は取引先に対して同社の競合企業とは取引しないよう「二者択一」を求めていた。

罰金額が昨年の売上高の4%という「アリババ基準」が適用された場合、美団の罰金額は46億元(約774億5700万円)に及ぶ可能性がある。

ブルームバーグは、中国共産党政府は現在、アリババやテンセント、美団といった大手企業が市民生活のあらゆる場面で影響力を強めていることや、各社がオンラインショッピング、チャット、配車などのサービスを提供することで蓄積された膨大なデータに懸念を抱いていると報じた。

専門家:「中国の金融革新の時代は終わった」

コーネル大学の教授で、ブルッキングス研究所の上級研究員でもあるエスワル・ プラサド(Eswar Prasad)氏は29日、米ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿文の中で、中国政府がジャック・マー氏と同氏が所有するアント・グループに打撃を加えた目的は、マー氏が持つ強い経済的・政治的パワーを制限することだと指摘した。

プラサド氏は「中国政府の行動は、民間企業や革新を奨励する習近平氏の約束を空言に変えた」と述べた。

「ジャック・マー氏の失脚とアント・グループへの取り締まりは、中国のフィンテック・イノベーションの時代に終わりを告げた。金融市場の自由化実験の失敗や、政府介入の復活、そして中国のビジネス環境が投資家にとってますます不利になることを示している」とその影響を分析した。

同氏はまた、「大手13社への一斉指導は、北京の民間企業に対する許容範囲が限られていることを示唆した」「つまり、企業は革新と成長を遂げることができるが、政府を脅かす存在となったら、すぐに罰せられる」と述べた。

(大紀元日本ウェブ編集部)

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