英ボリス・ジョンソン首相は、欧州連合(EU)離脱をきっかけに新たな多国間の枠組みに参画するべく、日米豪印の安全保障枠組み「クアッド(QUAD)」への参加の可能性を検討している。複数の英メディアが1月31日までに報じた。
英タイムズ紙によると、ジョンソン首相は、太平洋・インド洋諸国とは貿易と経済のみならず、安全保障面における戦略的な結びつきを強化しようと考えている。
日本と英国は、2021年の年明けに日英包括的経済連携協定(日英EPA)を発効した。また、英政府は1月30日、日本やオーストラリアなど11カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を正式表明した。
ジョンソン首相はさらに、現在のG7を拡大発展させる新たな枠組み「D10」を推進している。Dは民主主義(democracy)を意味しており、G7諸国にインド、オーストラリア、韓国が加わる形だ。これは南シナ海やインド洋における中国の覇権主義的拡張への対応とみなしている。
タイムズ紙によると、D10の結成については、ジョー・バイデン米大統領のアジア専門家カート・キャンベル氏も支持している。キャンベル氏はまた、中国を牽制する方法として英国のクアッド参加と役割拡大に賛成しているという。
1月13日、バイデン政権は国家安全保障会議(NSC)に新設するアジア政策の統轄ポスト「インド太平洋調整官」に、ベテラン外交官でオバマ政権の「アジア基軸外交」を進めたカート・キャンベル氏を起用すると発表した。この動きから、中国メディア・財経の取材に応じた中国外交専門家は、米新政権はトランプ政権のインド太平洋地域政策を引き継ぐと予想されると答えた。
英海軍は米海軍と共に、大型艦隊をアジアに派遣し大規模な演習を計画している。ドイツもインド太平洋にフリゲート艦1隻を派遣すると表明している。2020年11月に訪日したフランス海軍トップのピエール・ヴァンディエ参謀総長は産経新聞の取材に対して、クアッドの共同訓練に参加し、インド太平洋地域でのクアッド連携を強化する方針を語った。
元海上自衛隊自衛艦隊司令官の香田洋二氏は、北大西洋条約機構(NATO)がアジアに遠征することで、「中国による世界基準の行動規範や国際法を無視した行動を許さない、という態度を示す狙いがあるのではないか」と、ジャーナリスト・木村正人氏の取材のなかで語っている。
2017年、マニラで開かれたASEANサミットで、日米豪印の首相は10年凍結していたクアッド構想の復活について議論した。河野太郎防衛相(当時)は、英国とフランスに対して「協力的な役割」を担うよう呼びかけた。復活の背景には、中国のインド太平洋諸国に対する抑圧的な拡張、一帯一路の拡大、米国の本格的なアジア関与などがある。
クアッドの4カ国による地域連携強化は、安倍政権が提唱した自由で開かれたインド太平洋構想の中核的な枠組みとみなされている。日本政府の平成29年版外交青書(2017)の特集記事のなかでは、同構想を具体化していくため、「東アフリカと歴史的に結び付きの強いインド、同盟国である米国、オーストラリア等との戦略的連携を一層強化」すると明記されている。
(編集・佐渡道世)
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