米安全保障専門家は、カナダのオタワで開かれたシンクタンク会合で、中国のインド太平洋地域での影響力拡大を阻止するため、カナダはインド太平洋戦略に加わる必要があると述べた。
米空軍を退任し、米国家安全保障会議(NSC)の戦略立案シニアディレクターを務めたロバート・スポルディング氏は、このほど、大紀元の取材に応じた。
「カナダは、米国と協力してグローバル安全保障を推進する、インド太平洋地域での役割を慎重に検討する必要がある」とスポルディング氏は語った。その目的は、一つは抑止力強化、もう一つは勢力による強制の防止とした。地域での影響力拡大を行う中国共産党政権を念頭に置いている。
カナダには、この役割を前向きに捉える国内関係者の意見が出ている。
デビッド・ムロニー前中国大使は2月、オタワで開かれたマクドナルド・ローリエ研究所(MLI)の年次夕食会での基調講演で、インド太平洋地域は、カナダに外交政策を改善するチャンスをもたらすと語った。
また、2月21日のドナルド・トランプ米大統領のインド訪問で示されたように、インドは、インド太平洋地域の戦略の要となる国家だとした。今回の大統領訪印では、インドは30億米ドルを超える米国の軍事機器の購入を約束した。
米国は、インドを中国に対するカウンターウェイト(勢力の釣り合いを取るための力)と見なしている。インドとパキスタンの国境は、理想的な米軍能力の設置地点になる可能性があるため、インド太平洋計画にとって重要視されている。
国務省が2019年11月に発表した戦略で示したように、インド太平洋地域への関与は、米トランプ政権の最優先事項で、中国の抑圧的な慣行は「インド太平洋地域の安定と繁栄を損なっている」とした。
ムロニー氏は、インド太平洋地域の問題の焦点は、米中覇権争いではなく、法の支配と適切なグローバルガバナンスを重視するという意思を共にする国々による懸念から起きたものだと説明した。
「この問題を米中覇権争いとして片づけるのは簡単だが、それ以上に描く構図を重んじることで、カナダは加わることができる」とした。
カナダは北大西洋条約機構(NATO)のメンバーだ。
マクドナルド・ローリエ研究所の年次夕食会で登壇した同所外交政策担当シニアフェローShuvaloy Majumdar氏は、大西洋の秩序の形成を支えることで、カナダがインド太平洋に関与できると語った。「つまり、カナダは大西洋と北極圏の国であるだけでなく、太平洋の国でもある。そして、パワーバランスは東洋に向かってシフトしている」「カナダが成功するためには、危険にさらされているインド太平洋地域を無視できないだろう」と同氏は語った。
しかし、インド太平洋は、広大な海によって隔てられているために、欧米軍の活動は難しい。中東やヨーロッパの状況と異なる。このため、海軍作戦に給油オプションを提供することなどが一例として挙げられる。この地域では、中国軍の活動能力が遥かに上回っている。
この夕食会に出席したスポルディング氏は、インド太平洋に焦点を合わせることは、北極圏より優先されるべきだと述べた。
北極圏における米国とカナダの合同北警告システムは、対ロシアを念頭にしたものだが、時代遅れになっている。スポルディング氏は、米国やカナダの同盟国は「ロシアに対して十分な抑止力を持っている」としたが、インド太平洋地域には中国の影響力に対抗する同様のシステムがないとした。
他の登壇者もまた、経済、政治、外交のグローバルパワーは西側からアジアへのシフトを加速していることを認識するべきだ、と政策立案者らに呼び掛けた。
(翻訳編集・佐渡道世)
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