日本発の漢詩に触発された中国人、政権批判の名句が続々

2020/02/15
更新: 2020/02/15

日本にある中国語検定試験HSK事務所が、湖北省に援助物資を送る際の梱包材の外装ラベルに漢詩が記されていたことが、中国で話題となった。以後、日本からの物資に詩を添えるのが密かなブームになっている。いっぽう、中国人は「(国内では)名句の登場がちっとも見られない」として、専門家は文化の破壊を嘆いている。また、体制を揶揄する名句がインターネットに表出しはじめた。

HSKはこのほど、湖北省に数百万枚のマスクと赤外線体温計を寄付した。物資の段ボール箱には「山川異域風月同天」と書かれている。

中国歴史書『唐大和上東征伝』によれば、1300年前、熱心な仏教信者だった日本の長屋王が千枚の袈裟を作り、唐王朝の衆僧に布施したという。袈裟には「山川異域、風月同天、寄諸佛子、共結来縁」と四字成語で作られた唐詩が刺繍されていた。鑑真和尚は、いたく感銘を受け、日本へ伝法することを決意したという。一命を失う危険を冒しながらも、6度目の航海で日本に到着した鑑真和尚の話は有名だ。

この話題が中国インターネットで浸透した。さらに、日本各地が感染対策の支援物資を発送する中で、連帯感を表わす名句を相次いで披露した。

日本の京都府舞鶴市は、遼寧省大連市に寄付した物資に、「青山一起同云雨、明月何曽両郷」という、唐の王昌齢の『柴侍従』から引用した詩を貼り付けた。「風も雨も乗り越えた親友同士は、別々の場所で同じ月を見ている」と苦境に共感を示すという詩だ。同市は詩の選択を、大連から来た国際協力員から助言を受けたという。

富山県もまた、中国東北部・遼寧省へマスク1万枚を発送した。段ボール箱の一部に、中国出身の県職員が作成した漢詩を貼り付けた。「遼河雪融 富山花開 同気連枝 共※(目へんに分)春来」意味は、「互いに寒い土地だが、事態が落ち着き春が来てほしい」だという。漢詩の規則に従い、土地の名前を引用した。

日本の医療法人仁心会は物資を運ぶ段ボール箱に「豈曰無衣、與子同裳」と、中国最古の詩編『詩経』から引用した。意味は「もしあなたは着る物がないなら、ひとつの衣服を一緒に着よう」に由来する。いずれも苦境を分かち合う同胞の意思を示す。

日本からの応援メッセージは中国ネットユーザーの間で話題を呼んでいる。中国作家協会の会員である韓晗(ハンハン)氏は「なぜ日本人が『風月同天』と書けるのに、私たちは『武漢加油(武漢頑張れ)』と叫ぶだけなのか」と書き、歴史の長い中国文化を、本土から発信していないことを嘆いた。

韓氏はさらに、中国では「全面推進、統籌兼顧、綜合治理」(全面的に推進する、統一的に計画し各方面に配慮する、総合的に管理する)など新たな「四字熟語」が作り出され、「聞くだけで恐れをなす」と共産党の文化を暗に批判した。

台湾の龍応台・前文化部長は文章で韓氏のコメントを引用し、このような新しい「四字熟語」は「集団的な言語文化の貧弱さ、軽率さ、粗雑さ、粗暴さの表れだ」と述べた。さらにはこうした貧弱な精神は、社会の行動様式にも表れると付け加えた。

数千年の歴史を持つ中華文化は、共産党政権の圧制以後、著しく破壊され、本土では文化の神髄を見出すことが困難になった。

中国の人気ブロガーやネットユーザーはソーシャルサイトに、日本からの唐詩の反響を見て、相次ぎ漢詩を返句として書き込んだ。いずれも共産党の貪欲さ、意地の悪さ、面子維持を皮肉ったものだ。

「碩鼠碩鼠、無食我黍(大きな鼠よ、私のキビを食べないでおくれ)『詩経、四言古詩』から」地方政権同士が物資を略奪したり、個人資産の押収を可能にしたりする横暴な条例が発令されたことを揶揄する。

ほかにも「独夫之心、日益驕固(自己中心的な心の持ち主は、日々自尊心を固める)唐代、杜牧『阿房宮賦』から」「楚雖三戸、亡秦必楚(楚がたとえわずかな人数になったとしても、秦を滅ぼすのは必ず楚だろう)『史記』の一句から」「覆舟水是蒼生淚,不到橫流君不知(政権を転覆させる水は民衆の涙であり、大きな水になるまで君主はそれに気づかない)現代の詩人・李夢唐『詠史』から」などが書き込まれた。

(翻訳編集・佐渡道世)