中国貴州省の「国家級の貧困県」、借金で「ミニ紫禁城」を建設

2019/12/17
更新: 2019/12/17

中国ではこのほど、貴州省独山県政府が総額22億元(約344億)を借金し、北京の故宮(紫禁城)を模倣した建築物を建設したことで話題になっている。同県は中国当局に「貧困県」と指定されているため、ネット上では同県幹部らは建設プロジェクトを通して利益を貪った可能性を指摘した。

メディアによると、「独山版紫禁城」には数十棟の擬古的な建物がある。同県政府が4年前の2015年末ごろから、観光収入の拡大を目的に建て始めた。しかし、貴州省は中国国内でも有数の貧困地域で、独山県は「国家レベルの貧困県」である。公開統計によると、2017年、同県の財政収入総額はわずか9億4635万元(約148億円)にとどまった。「つまり全県の住民が2年間以上、飲まず食わずで、やっと借金を返済できるという計算だ」。

中国のインターネット上では、「地方政府の幹部と開発業者は、きっと公金を横領して私腹を肥やしただろう。巨額の予算を着服したのでは」「このプロジェクトで、どれほどの人間の私腹が肥やされたのか?」「誰が許可したのか?誰が出資したのか?受益者は誰だ?」などと独山県政府に対する批判の声が上がり、腐敗行為があったとの見方が広がった。

同県は2016年にも、巨額な借金をして、高さ99.9メートル、24階建ての大型木造建築物、「第一水司楼」を建設し始めた。同建物は、地元の少数民族、シュイ族の建築の特徴を取り入れているため、チベット自治区・ラサ市にある「ポタラ宮」を彷彿とさせる。

独山県の「第一水司楼」(大紀元資料室)

「中国新聞週刊」の報道によると、2018年以降、「(資金不足で)建築会社の作業員への給料が支払えなくなり、内装は未完成のままで工事を中断している」という。にもかかわらず、県政府は今年、「世界で最も高いシュイ族の建物」としてギネス認定を申請した。

両プロジェクトを推し進めた県トップの潘志立・県党委員会前書記は今年3月、「重大な規律違反」の疑いで当局の取り調べを受けた。10月に収賄罪と職権乱用の罪で起訴された。同氏は将来の出世のために、「政績を挙げ、メンツのために、無理にプロジェクトを進めた」という。失脚した当時、同県の債務規模はすでに400億元(約6248億円)以上にのぼっていた。

中国メディアは、甘粛省楡中県や陝西省韓城市などの貧しい地域の当局も同様に、莫大な借り入れをして観光地の開発を行っていたと報じた。

コメンテーターの梁治氏は、中国共産党政権の体制の下で「政績プロジェクト」や「メンツ・プロジェクト」は、地方幹部を評価する基準の一つだと指摘した。この暗黙のルールでは、貧困地域の地方政府は今後も、住民の生活改善より、立派な建物の建設に熱心なようだ。

(翻訳編集・張哲)