英シンクタンクの最新調査が、米政府が従来から指摘してきた中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)と中国当局および中国軍との関係性について、「強い繋がりがある」と結論付けたことで、ファーウェイへの注目が再び集まった。一方、米国に亡命した中国人富豪の郭文貴氏は、中国当局や軍と密接な関係にあるのはファーウェイだけではないと指摘した。同氏によると、ファーウェイなど中国ハイテク企業のトップは、軍と国家安全機関から「コードネーム」を与えられている。
英紙デイリー・テレグラフ5日付は、同国シンクタンクのヘンリー・ジャクソン・ソサエティ(HJS)が入手したファーウェイ社員2万5000人分の履歴書を分析したところ、一部の社員が中国軍、または情報機関で勤務した経験があると分かった。
米政府は数年前から、ファーウェイは実際には中国当局の情報機関に当たるとの認識を示してきた。今年5月、トランプ米政権は同社をはじめ、中科曙光、江南計算技術研究所、天津海光先進技術投資有限公司など中国のハイテク企業5社を禁輸措置対象リストに追加した。
郭文貴氏は昨年12月以降、江沢民元国家主席とその一族の不正を複数回にわたり暴露してきた。同氏は自身が設立したセルフ・メディア「郭媒体」で、「中国共産党内の江沢民を中心とする上海派が、ファーウェイや中科曙光などへの投資を行っている」「江沢民一族が中国の通信やハイテク企業を実質的に牛耳っている」と暴いた。
江沢民の後押し
中国軍の元技術員だった任正非氏が1987年、ファーウェイを創業した。英紙フィナンシャル・タイムズの昨年12月の報道によると、同社の元幹部は「1994年、任氏が江沢民と会見した後、会社は急激に事業を拡大した」と話した。
報道は、当時の中国最高指導部が任氏を強く後押ししたとした。この数年後、ファーウェイは中国軍の通信ネットワークの構築を下請した。また、江沢民の息子で、中国通信産業の実質的支配者である江綿恒氏が主導したネット検閲システム「グレート・ファイアウォール」プロジェクトにも加わった。
ファーウェイの関係者によれば、当時、江沢民が深センを視察するたびに、必ず同社の本社を訪ねたという。ファーウェイは、江沢民らの支持を受けて世界の大企業に発展した。
郭文貴氏は、ファーウェイが生産するすべての携帯電話に盗聴機能が備えられていると批判した。「同社と孟晩舟氏は、中国当局と江沢民一族のために、技術の窃盗、国民への監視を手助けしている」
孟晩舟氏は任正非の娘で、同社の最高財務責任者(CFO)を務める。カナダ政府は昨年12月、米政府の要請を受けて孟晩舟氏を逮捕した。
今年1月、米政府は孟氏の身柄引渡しを正式に要請した。米司法省は同氏とファーウェイに対して23件に上る罪状で起訴した。
中国ハイテク企業と江一族
米政府の禁輸措置対象リストに入れられた中科曙光は中国スーパーコンピューター(スパコン)大手で、ファーウェイと同様に江沢民一族と強い繋がりを持つ。
同社が2006年12月に設立した際、江沢民は同社を国内スパコン業界のリーダー企業として位置づけ、中国の最高科学研究機関、中国科学院に同社の育成を命じた。当時から、中科曙光は、中央政府から莫大な開発研究費を受けてきた。
また、当時江綿恒氏は中国科学院副院長のほか、同院スパコン専門家委員会の顧問も務めており、中科曙光に技術提携を行う同院計算所を複数回にわたって視察した。
中科曙光は、中国当局のネット検閲システム「グレート・ファイアウォール」や、警察当局の監視システム「智慧都市」の構築プロジェクトに参加し、国内各地の警察署のクラウドコンピューティング・サービスを提供している。
江綿恒氏が中科曙光、CPUベンダーの龍芯(Loongson)、ソフトウェア企業の中科紅旗軟件技術など、いわゆる「中国科学院系企業」を全面的にバックアップしたことで、中国国内電子機器・通信産業を掌握した。
また、江蘇省無錫市にあるスパコン会社、江南計算技術研究所に関する公開資料によると、同社の前身は1951年6月設立の中国軍総参謀部第56研究所で、軍内において最大の規模を誇るコンピューター研究所だった。
同社が開発した大型MPP、ハイパフォーマンスコンピューティング・システムとコンピュータ・クラスターは主に模擬核実験に応用される。中国軍当局は1993年、同研究所に、科学技術を開拓する「先進研究所」との称号を与えた。
一方、中国国内メディアの報道によれば、米政府の禁輸制裁を受ける中国半導体会社3社、天津海光先進技術投資有限公司、成都海光集成電路有限公司、成都海光微電子技術有限公司は、中科曙光との間に複雑な株主関係と業務提供がある。中科曙光は、天津海光の26%株式を保有する。天津海光は成都海光集成電路の7割の株式を持つ。成都海光集成電路は、成都海光微電子技術に半導体を供給する。
「アリババ」など10社は中国の軍需企業
昨年12月9日、郭文貴氏は「郭媒体」で、ファーウェイ、アリババ集団、テンセント(騰訊控股)、北方工業公司、中国兵器工業集団、保利集団、平安保険集団、振華石油控股有限公司、中興通訊(ZTE)、同方威視技術股份有限公司などの10社は「100%の中国国家軍需企業だ」とした。10社のうちの9社は江沢民一族と深い関係にあり、江らの後ろ盾を受けて大きく発展したという。
郭氏は、「孟晩舟氏を含む10社のトップは、中国軍と国家安全当局に所属し、コードネームを持っており、高官としての特別待遇を受けている。これらの企業は中国金融業から特別な資金支援を受けている。外交問題においても、孟氏らは高官に準じる特権を享受している」
「だから、カナダ政府が孟晩舟氏を身柄拘束したとたん、中国外務省はすぐに記者会見で反発した。他の中国人実業家に対して、このような対応はなかった」
海外メディアの報道では、孟晩舟氏が逮捕された時点で、8つのパスポートを所持していたことを明らかにした。
江一族「1兆ドル以上の資産を保有」
今年4月以降、郭文貴氏は江沢民の孫、江志成氏に関しても暴露した。「江一族は1000社以上の企業をコントロールしており、海外で約1兆ドル(約109兆円)以上の資産を保有している」「江志成は国有企業、金融機関、一族が持つ特権を通じて、5000億ドル(約54兆1600億円)以上の資金をマネーロンダリングして海外に移した」
郭氏は、一族が厖大な「国家の富を盗んだ」と非難した。「数兆ドル以上の富を支配している」江一族は、中国の政治と経済を完全に手中にしているという。
同氏はまた、自身の暴露について「関連情報を米国務省や連邦捜査局(FBI)などに提出し、法的責任を問うつもりだ。米の議会、司法省で証言したい」と述べた。
6月、香港市民は、容疑者の中国本土移送を可能性にする「逃亡犯条例」改正案をめぐって大規模な抗議デモを行った。香港情勢の混乱につれ、株式市場の相場は激しく動いた。
郭文貴氏は6月17日「郭媒体」で、江志成氏について再び批判した。江志成氏が国家隊と呼ばれる中国政府系機関投資家を動かして700億香港ドル(約9693億円)を投じ、香港株市場の急落を回避させた上、「江志成はこの相場の乱高下を利用して100億ドル(約1兆832億円)以上の巨利を獲得した」という。
米ニューヨークに本部を置く大紀元時報と新唐人テレビは6月6日に特別評論記事を掲載し、国内外の中国国民および関係者らに、江沢民元国家主席らの海外資産についての情報提供を呼び掛けている。
(翻訳編集・張哲)
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