欧州委、アジアにインフラ計画 「一帯一路」の実質対抗案

2018/09/21
更新: 2018/09/21

欧州委員会は9月19日に、アジアで輸送、エネルギー、デジタルインフラ整備を強化する投資計画を発表した。欧州連合(EU)は否定するものの、英メディアは、中国が世界に広げる現代版シルクロード構想「一帯一路」の実質的対抗案と呼んでいる。

資金は民間銀行と開発銀行から調達するという。規模は不明。2021年からEU予算からも一部の資金を拠出する。欧州委は次期長期予算(2021年〜2027年)で対外投資金額を30%増の1230億ユーロ(約16兆3150億円)まで増やすと提案した。そのなかには、民間投資を加速させるための追加予算600億ユーロ(約7兆9576億円)が含まれている。

アジアは世界でも成長機会のある市場と見なされている。日本の設立したアジア開発銀行(ADB)は、2017年の報告『アジアのインフラ需要に応える』で、開発途上にあるアジアの国・地域が経済成長を維持するには、2030年までに年間1.7兆ドル(約180兆円)の投資が必要だと見積もっている。

ベルギーのブリュッセルで10月18日と19日に、アジア欧州サミットが開かれ、首脳間会談が行われる。EU外相はこの会議で、アジアインフラ投資計画は重要課題に上がり、各国の承認を促すとみられる。

EU外交安全政策上級代表フェデリカ・モゲリーニ氏は19日の記者会見で、このアジア投資計画を「欧州とアジアをつなぐEU戦略」と呼んだ。同氏は、「EU市民と企業、投資家にとってよりよい環境を作り出す、『ヨーロッパのルール』を採用している」と述べた。さらに、関係国の地域社会で雇用創出、経済発展と福祉推進につながると付け加えた。

「欧州ルールをアジアで」

モゲリーニ氏の掲げたヨーロッパのルールとは、「欧州とアジアの互恵関係であり、その3原則として持続可能性、多様性、ルール順守」だと述べた。また、投資計画の推進には、共通の基準と原則が必要だと強調し、国際原子力機関(IAEA)と世界貿易機関(WTO)と協議する予定であるとも付け加えた。

2013年来、中国は世界で権益を強化するため政府主導のインフラ整備計画「一帯一路」を打ち出した。60カ国以上、アジア、ヨーロッパ、アフリカに及び、投資額は推計1兆ドル(約111兆円)とされている。同構想は「債務トラップ」との悪評が付きまとう。関係小国に多額債務を負わせ、政治的な影響力を拡大する中国共産党政権の戦略だ。

ジョンズ・ホプキンス大学先端国際研究学校の中国アフリカ研究構想(CARI)の報告では、中国によるアフリカへの融資は過去5年間で急上昇している。また、米国の政策シンクタンク・世界開発センター(CGD)によると、キルギス、ジブチ、ラオス、モルディブ、モンテネグロ、パキスタン、タジキスタン、モンゴルの8つの一帯一路関連のインフラを受け入れた国は、中国融資による負債対GDP比率がますます高くなっていると警鐘を鳴らしている。

モゲリーニ氏は、EUのアジアインフラ投資計画が、一帯一路の対抗策とみなされることについて、これを否定した。「EUの提案は北京、ワシントン、モスクワのいずれの構想への反応ではない」。

モゲリーニ氏の反応とは対照的に、専門家は、欧州のアジア投資計画は「一帯一路に対する回答と捉えて間違いない」と述べる。欧州中国関係の専門家で、ベルリン拠点のメルカトル中国研究会ジャン・ワイデンフェンルド氏はロイター通信に対して、「大規模なインフラ計画にはルール順守が必要だ。欧州は、中国の政策とは別の選択肢を(アジアの国に)提供している」と述べた。

(翻訳編集・佐渡道世)