中国少林寺などが共産党旗を掲揚 宗教統制に批判の声

2018/08/30
更新: 2018/08/30

1000年以上の歴史を誇る中国の名刹(めいさつ)、河南省の少林寺と雲南省の圓通寺で27日と28日、相次いで国旗の掲揚式が行われたことがわかった。中国国内世論は、当局による宗教統制に対して強く批判した。

中国政府系メディアは27日、少林武術で名を馳せる嵩山少林寺で同日早朝7時に、創建1500年以来初めて国旗を掲揚したと次々と報道した。河南省登封市党委員会常務委員の李力氏や少林寺方丈の釈永信氏と僧侶全員が出席した。背景には、7月末、北京で開催された全国宗教関連会議で、宗教活動拠点では国旗を掲揚すべきだと提案された。

釈永信氏は、中国版ツィッター微博において、「愛国は、仏教の一貫した歴史伝統だ」と強調した。釈氏は現在、中国仏教協会の副会長を務めている。2015年、少林寺僧侶の「釈正義」はネット上で、釈氏の愛人、横領、収賄などを暴露された。中国国内世論は、党に順従する釈氏が方丈に上りつめた後、少林寺が急速に金儲けに走ったことで、同氏に「少林CEO」「経済和尚」と言ったあだ名をつけた。

一方、雲南省昆明市にある圓通寺は1200年前、唐の時代に立てられた。同寺も現地時間28日午前7時半ごろ、初めて国旗掲揚式が行われた。

圓通寺方丈の淳法法師は国内メディアに対して、「愛国は、仏教の伝統だ」「仏の弟子として、国にとって責任感のある新時代の僧侶になるべきだ」と話した。

中国人権派弁護士の謝燕益氏は、仏教寺院での国旗掲揚について「馬鹿げている」と非難した。

謝氏によると、昨年秋の党大会以降、思想浸透工作を担う党中央統一戦線工作部が、国内宗教団体などを管轄することが決まった。中国当局は、党による宗教統制を一段と強化した。

当局はこのほど、キリスト教信者やイスラム信者に対しても、取り締まりを強化した。河南省などでは今月、キリスト教会の十字架の強制撤去が報じられた。キリスト教信者に対して、当局が「キリスト教への信仰を放棄する」との覚書きにサインするよう強いている。新疆ウイグル自治区では、当局は「思想再教育」として、イスラム教徒を収容所に拘束し、イスラム教が禁止するアルコールや豚肉の摂取を強要している。

「これらは逆に、中国当局の政権運営が危機的な局面に差し掛かっていることを反映した。イデオロギー・思想において、当局の統制が完全に失敗したことを浮き彫りにした」と謝氏は分析を示した。

国内インターネット上では、ネットユーザーらは「党が、仏教を服従させることに成功した」と相次いで書き込んだ。

なかには、中国共産党政権による宗教への統制工作で、「中国の仏教はすでに党に従っている。そもそも、少林寺には偽和尚が多い」「(少林寺などには)和尚はいない。彼らは寺の職員に過ぎず、僧服も制服に過ぎない」との声がある。

「世俗から離れ、出家した和尚に愛国を強要するって?亡国の兆しだ」と、共産党政権崩壊の兆候だと主張するネットユーザーもいた。

さらに、仏教信者は少林寺などが国旗を掲揚したことについて、仏教経典に書かれている釈迦牟尼仏と魔王波旬との会話が「現実に起きた」と嘆き、党が「魔王」ではないかと推測した。

経典によると、魔王は「末法の時を待って、私の子々孫々をすべて出家させて、おまえの法を滅ぼそう。彼らはおまえの経典を歪曲(わいきょく)し、おまえの戒律を破壊して、私が今武力で果たせなかった目的を達成するだろう」と話したという。

(記者・駱亜、翻訳編集・張哲)

関連特集: