北京市当局はこのほど、秋冬期に一段と深刻になる大気汚染の対策の一環として、11月半ばからの4カ月間、市内の道路や水道工事、家屋の撤去工事を全面停止するよう各市轄区政府に通達した。大紀元の取材に応えた現地市民は、短期間では大気汚染を改善できないと、政府決定に不信感を示した。
北京市住宅及び都市農村建設委員会が15日に発表した同通達では、今年11月15日から来年3月15日まで、16の区での土木工事をすべて停止すると規定した。当局は「秋冬期の大気汚染深刻化を防止するために、史上最も厳しい措置を打ち出した」とした。
北京市民の田さんは大紀元に対して、短期間の行政命令の実施だけでは北京の大気汚染は改善できないのではと述べた。
「北京市では長年、このような行政命令を見たこともないし、聞いたこともない。当局は目先のことしか考えていない。こんな方法で、北京上空に立ち込めるスモッグを除去できるか疑わしい」
また田さんは「土木工事を全部停止したら、その従業員たちはレイオフされ、生活はどうなるだろうか。多くの関連企業も経営難に陥るのではないか」と心配そうに話した。
北京市に隣接する河北省承徳市には、粗鉄生産量が中国1位、世界3位の国営鋼鉄会社・承徳鋼鉄集団の工場がある。毎日排出される煙は、盆地の北京に流れ滞留し、市の大気汚染深刻化に繋がっているとされてる。
田さんによると、同社は8万人の従業員を抱える。「もし将来、当局が大気汚染改善措置で操業停止命令を出したら、8万人は停職となるのでは」と危惧した。
いっぽう、別の北京市民・徐さんは「近年北京だけではなく、中国北部全地域で大気汚染が深刻化している。特に冬はひどい」と話した。徐さんは、当局が市民に対してスモッグの原因について説明しないことにも、不信感を抱いている。
「なぜスモッグが発生するのか、当局は知っているはず。北京で国際会議を開くたび、当局が出す工場操業停止などの行政命令で、北京の空は一面青空が広がるのだから」
「でも当局は自動車の排気ガス、工場での石炭燃焼、土木工事、さらに串焼き料理などが原因だとして問題を片付けようとしている。昔、どの家でも調理をする時、いつも石炭を燃やしていたが、スモッグはなかった。当局の規制で今や屋台で羊肉の串焼きやバーベキュー料理を販売できなくなった」「どうして市民の日常生活まで干渉するのか」と徐さんが首を傾げた。
徐さんは鋼鉄会社やセメント会社の生産活動によってスモッグが生み出されたと推測する。「大気汚染を大幅に改善しようと思うなら、それらの企業を閉鎖するしかない。でも、当局は多くの労働者を抱える企業を閉鎖する勇気はないだろう」と述べた。
中国環境保護部は19日、8月全国74都市の大気質量状況を発表した。第65位から第74位までワースト10都市のうち6都市は、主要産業が石炭業と鋼鉄業である河北省に集中していることが明らかになった。ワースト3都市は、河北省の邯鄲市、同省邢台市、山西省太原市。
(記者・易如、翻訳編集・張哲)
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