習氏の訪米直前、中国軍機が米軍機に異常接近 外交を撹乱する中国軍

2015/09/30
更新: 2015/09/30

 9月22日、習近平・中国国家主席は夫人とともに米国を正式訪問した。その一週間前、中国軍が米軍機に異常接近するという「事件」が起きた。習主席が外国訪問中に、軍部が「暴走」するケースは昨年も起きている。同9月にインド訪問中、カシミールへ中国軍が侵入した。中国の政治闘争は、外交にも飛び火している。

 米国防総省のクック報道官は22日の記者会見で、黄海上空の国際空域で15日、中国軍の戦闘機が米軍の電子偵察機に異常接近していたことを明かした。中国山東半島から東約130キロの黄海上空で、中国軍のJH7戦闘機2機が、アメリカの電子偵察機RC135に近づき、同機の前方を危険の形で横切った。うち1機は偵察機前の約150メートルを通過したという。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは22日付けで、中国軍機が「私の鼻の前をかすめて通過した」と、米軍偵察機のパイロットの話を伝えた。米軍太平洋軍司令部は、中国の危険な行動がアメリカ偵察機及びパイロットに傷害をもたらしかねないと声明を発表した。

 昨年8月、南シナ海上空で中国軍戦闘機が米軍の対潜哨戒機に約9メートルまで異常接近し、下方30メートルを通過するなどして挑発した。当時、米政府は中国側を強く非難したが、今回は「前回と同じではない」と述べるにとどめた。中国外交部のスポークスマン・洪磊氏は「事情を知らない」と述べ、詳細を明かしていない。

 

首脳会談前の軍暴走、過去にインド進軍

 習主席の訪米中という敏感な時期に、中国軍は不可解な行動を起こした。似たようなケースが昨年9月中旬のインド訪問時にもあった。ナレンドラ・モディ首相と会談する一時間前、中国軍がカシミールの実効支配線を越えてインド側に侵入したのだ。そのため会談の冒頭、ナモディ首相が中国軍を引き上げるよう習に要求した。

 習主席のインド訪問前、両国のマスコミは関係改善の期待感を伝えていた。中国軍の侵攻はそれを裏切った。中国の行動は意図的なものであると、米経済誌フォーブスは評論で解説している。

「目的は何か? 中印間の友好に賛成しない者はいったい誰なのか?」。習主席が政権を握ってから反腐敗キャンペーンを行い、数十人の高官を含め、数千人の共産党幹部を失脚させた。「反対者は中国内部高層にいるようだ」とフォーブスは記した。

 インドに入った中国軍は中国七大軍区の一つ、蘭州軍区所属の兵士だった。蘭州軍区は、江沢民派の軍部大物・郭伯雄氏が長く務め、権力基盤を築いた。

 インドから帰った直後、習主席はすぐさま軍の幹部を集め、演説した。「指揮命令系統の統一や党指導部の決定の完全な履行」を強く訴えた。またその後、当局は数回にわたって軍高級将校の大幅な人事調整を行い、一部分の将校を摘発するなど、軍の粛清にさらに力を入れた。

 共産党中央政治局は今年7月末、収賄や職権を乱用したとして、郭氏の党籍を剥奪し、検察当局に送致を決めた。

 今回の異常接近事件も、習近平政権の行いではなく、重鎮の失脚で勢力を弱めながらも、いまだに最大の反対勢力であり、政変計画を打ち出す江沢民派の計画だと分析できる。

 中国の政治闘争を知る米政府は、主席訪問を目前に控え、今回の異常接近について非難を避けた。そのため、国内の世論や共和党から反発を招いた。両国首脳が、このトラブルを最小限に抑えようとしていることは、今回の米政府の静かな対応からも伺うことができる。

(翻訳編集・張楊/佐渡 道世)